役立つ知識:遺産分割

遺産分割の流れ


原則として、相続財産は相続人全員の共同所有(共有)になります。

分かりやすく言えば、いろいろな財産の入った袋を相続人全員で持っている状態です。

そこで、この袋の中身について誰がどのくらい取得するのかは、次のような流れで決定していくことになります。


例えば、「長女には現金」「次女には株式」というように、遺言で具体的に誰が何を承継するのかを決めることができます。このような遺言のある遺産については、原則として次の分割協議は不要です。

 

遺言がないときは…

相続財産目録に従って''相続人全員による協議(話し合い)により遺産分けをします。相続人となる者を確認し、それぞれの職業や生活状況などを考慮し慎重に進めていきます。

 

協議が成立しない(できない)ときは…

家庭裁判所に調停の請求をします。調停委員などは、それぞれの主張を聞き、指導や調整をしながら相続人が合意できるように進めていきます。

 

調停がととのわなかったときは…

家庭裁判所の審判に手続きは移行します。審判では、相続人の諸事情を考慮した上で遺産分割について公平な判断がされます。

 

遺産分割における相続人間のトラブル対策には、「生前に公正証書遺言を残す」、「遺産分割後に適正な協議書を作る」ことが最も効果的です。


分割の当事者


遺産分割は、相続人全員が当事者となって行わなければ無効となります。

そこで、次のような特殊な事情を持った相続人がいる場合は、分割当事者が実際には誰になるのか気を付けて遺産分割に臨まなければなりません。

【ケース1】行方不明者がいる場合

相続人の中に行方不明の者がいる場合、家庭裁判所に不在者のための財産管理人を選任してもらい、その管理人が家庭裁判所の許可を得た上で遺産分割協議に参加します。

なお、行方不明になってから一定期間経過すれば、家庭裁判所に失踪宣告の請求もできます。この失踪宣告により死亡した者とみなされるため、その行方不明者の子などが代わって相続(代襲相続)し、遺産分割についてもその子を当事者として参加します。

【ケース2】未成年者がいる場合

未成年者の行為に対し通常は、法定代理人である親権者の同意や代理が必要となります。遺産分割においても親が子を代理できるとなると、親の有利になるように協議を進めることにもなりかねません。

そこで、相続人に未成年者がいる場合で子と親の利益が相反するときは、子ごとに特別代理人の選任を家庭裁判所に請求し、特別代理人が遺産分割において子を代理することになります。


【ケース3】胎児がいる場合

「胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす」と民法で規定されています。簡単に言えば胎児も相続人になるということですが、当然ながら胎児は遺産分割協議に参加できません。

また、母親が胎児を代理して遺産分割することもできないため、相続人に胎児がいる場合は、胎児が出生するのを待って分割をすることになります。

【ケース4】認知された子がいる場合

認知とは、婚姻していない男女間に生まれた子とその父親との法律上の親子関係を発生させる制度で、子が出生した日から親子関係が生じます。。そこで、当然に認知された子は相続人となりますので、分割に参加させなければ無効となってしまいます。

ただし、遺産分割の後に認知された子(死後認知)については、相続分に相当する金銭を支払うように請求することができるのみとなります。つまり、遺産分割のやり直しは不要となります。


分割の方法


相続人全員の共有になっている相続財産を、

個人の単独所有とするには遺産分けが必要です。

具体的には、次の3種類を組み合わせながら遺産分けをします。

ちなみに、遺産の一部について分割せず、

相続人の共同所有のままにしておくことも可能です。


①現物分割(げんぶつぶんかつ)

分割の一般的な方法で『預金は妻』『建物は長男』というように遺産をそのままの形で分ける方法です。

シンプルな方法ですが、その物の価値の違いにより相続人間で不公平が生じやすいのも事実です。


②換価分割(かんかぶんかつ)

遺産をそのままの形で取得した相続人が、代わりに他の相続人に金銭を支払って調整する方法です。

相続分を超える財産を手にした場合などが典型例で、個人事業の後継者の1人が事業資産を引き継いだ場合によく行われます。


遺産分割協議書


遺産分割の話し合いがまとまったら、その内容を遺産分割協議書として必ず書面に残しておきましょう。この協議書の存在が、「言った!⇔言わない!」といったトラブルを防止するための有力な証拠となり、また、遺産の名義変更や相続税の申告などの相続手続きにおける正式な添付書類となりうるのです。

内容

具体的に①誰が ②どこにある ③何を ④どれくらい 取得したのかを特定できるように正確に記載します。

通数

あとで協議書を偽造・変造されないように、相続人の人数分だけ作成し、1通ずつ各自が保管します。

署名

氏名を「髙」→「高」、「ゑ」→「え」などの簡略化した文字を使用せず、ボールペンなどで正確に自署します。住所も、「浜松市東区○○町○○町1 - 23 - 4」 という番地の省略をしないように、氏名同様に印鑑証明書(住民票)記載のとおりに書きます。

押印

署名の横には、いわゆる実印を押します。相続人全員から印鑑証明書を提出してもらうことで、相続人が協議に納得し自分の意思で押印したという証拠になります。

日付

分割協議書の日付は、実際に遺産分割の協議をした日、または、最後に署名(押印)した相続人が、署名(押印)した日付を記入します。