ハンコ文化の壁は破れるか?

弁護士ドットコムが提供する電子契約のサービスが拡大しているそうです。

 

例えば不動産の賃貸借契約でこのサービスを利用すると、次のような変化があると紹介されていました(日経新聞2020.1.29)。

 

何らかの理由で貸主と借主が仲介業者のもとに会する機会がない場合、仲介業者が順番に契約書を送付して署名押印をして紙ベースの契約書を完成させていきます。

 

貸主、借主双方のハンコが整うのに5回の発送作業を経て2週間かかります。

これが電子契約サービスを利用するとインターネット上で契約内容の確認と署名をするため、最短では1日で契約が完結する、という具合です。早いですね。

 

先ほどの賃貸借契約の例ですが少し疑問があります。宅建業法では契約の前に重要事項説明書を作成し、有資格者(取引主任者)が記名押印し契約の当事者に説明をした上で書面で交付することを義務付けています。

 

ところで、法令で書面化が義務付けられている契約の代表例のひとつとして建設業法で定める工事請負契約の締結がありました。(建設業法19条1項:建設工事の請負契約の当事者は、前条の趣旨に従って契約の締結に際して 次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない)

 

しかしIT化による法改正で電子契約を認める同条3項が新設されました。(建設業法19条3項:…当該契約の相手方の承諾を得て、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する…)。先の不動産の重要事項説明書の件もすでにIT化の措置がされているのかもしれません。

 

電子契約を推進すべく法制度が改正されていく一方、役所の「ハンコ文化」が今後どう変わっていくのかも興味深いところです。弊所の業務においては、例えば建設業許可申請で実印の押印と印鑑証明書の添付が求められています(申請者である法人だけでなく法人の役員たる個人にもです!)。

 

法律が変わっても地方自治体が定める条例やそこに付随する審査基準などが変わらないと実際の電子化は進まず、民間が恩恵を受けることができません。