行政書士と私の人生 5(やりがいと資格)

 

私が建物登記の担当になってしばらくすると、測量・行政書士部門の先輩たちが徐々に退職していきました。

元々、独立開業を目指す業界でもありますので、仕方がありません。

 

気が付いたら、私に年下の部下がいる状況になっていました。司法書士部門の先輩が1名、私と部下2名で建物登記、測量、それに農転申請など行政書士部門をやりくりする体制になりました。

 

でもノウハウの引継ぎができないままでの退職が多くて、やむを得ず、業務範囲を縮小しながら、手探りで仕事に取り組んでいました。当時、一番悩んでいたのは「境界確定」の業務だったと思います。

 

境界確定は土地家屋調査士業務で、土地と土地との境をどこにするか?例えば、具体的に「このブロック塀のこの角」といいう具合に当事者で話し合って決めることを、専門家としてサポートする仕事です。

 

法務局や市役所で登記簿、公図、測量図、その土地に関する情報を集め、現地で関係者の方の話を聞きながら、境界の参考となる構造物、樹木、埋没している杭などを見つけ出し、機材を使って測量をします。

 

そうやって集めた情報を整理し、公平な視点から仮の境界点を提示する、それを元に当事者同士で話し合ってもらう、ということをします。

 

土地という大事な財産に関する話し合いですので、当然、当事者の方の普段見せていない、不平不満が表面化します。この仕事は早い話、隣接地の方から印鑑をもらわないと完結しません。

 

お隣同士の積もり積もった不平不満を聞かされる理不尽さを感じながらも、自分が頭を下げることも多々ありました。

 

反面、仕事のやりがいは高くなっていきました。農振除外、境界確定、分筆登記、農転申請、建物登記まで私の担当です。

 

最初に相談を受けた際には何もない農地だった所に、一年後、二年後に新しい住宅が建ち、そこに人が住んでいる。

 

その過程を住宅会社や工務店の方と一緒に作り上げていく感覚を持てたことが大きかったのではないかと思います。

 

ふと気が付くと、30歳という節目が目前に迫っていました。

 

やりがいがあっても、資格がなければ自分で成し遂げたとは言えない。自分の中で矛盾していることを消化できず、現実感が無く、夜や週末に変なことを考えることが多くなりました。