ご祝儀がわりに、という仕事がそう続くわけではありません。
依頼された仕事が完了したら暇になってしまいます。
市内を飛び込みで名刺を配りまくる、という勇気もなく、また
専門特化したホームページを作り、広告費を掛ける、という
工夫もしなかったため、電話が鳴らない日が続きました。
その頃は朝9時に事務所を開けてから、インターネットで何か
調べたり、依頼が来た時に備えて、ヒアリングシートのような
ものを作ったりしていました。
やることが思いつかない時は、マンガ喫茶に行きました。
そこで「カバチタレ」(行政書士補助者が主人公のマンガ)を
読んで妄想にふける時もありました。
夕方になったら親戚の会計事務所へ出勤し、3~4時間ほど、
伝票入力のアルバイトをさせていもらいました。
それで、事務所の家賃経費は何とかなっていました。
夕飯をご馳走していただいたことも数知れずです。
以前にも書いた通り、手書きで複式簿記の伝票を書くことで、
簿記の基本的な感覚が得られたことが大きかったです。
アルバイトを終えたら、また事務所に戻りました。
仕事はありませんでしたが、せっかく事務所を借りたのだし、
とにかく灯りをつけて、通りすがりの人にアピールしよう、
早く帰ったら両親も気にするだろうし、自分もなんだか情けない、
と感じて、毎晩22時ぐらいまでは事務所にいたと思います。
その頃になると、事務所の大家さんが前を通りかかります。
大家さんは直ぐ近くでコインランドリーを経営していましたが、
22時ぐらいに営業が終わると、毎晩チェックに向かうのです。
「塩崎さん、頑張ってるね~」
私の本当の事情をご存じだったかどうかは分かりません。
でもこの言葉を掛けてもらえるのがなんだか嬉しくて、私は
大家さんから声を掛けられる時間まで事務所に噛り付こう、
と自分に言い聞かせていました。
ちなみに実家へ顔を出すと、「あんた、仕事は忙しいの?」
といまも母は聞いてきます。
50を過ぎた息子に80近い母親がです。
お互い自営業ということもありますが、やはり親は親ですね。