行政書士と私の人生 15(仕事が無いとき)

 

ご祝儀がわりに、という仕事がそう続くわけではありません。依頼された仕事が完了したら暇になってしまいます。

 

市内を飛び込みで名刺を配りまくる、という勇気もなく、また専門特化したホームページを作り、広告費を掛ける、という工夫もしなかったため、電話が鳴らない日が続きました。

 

その頃は朝9時に事務所を開けてから、インターネットで何か調べたり、依頼が来た時に備えて、ヒアリングシートのようなものを作ったりしていました。

 

やることが思いつかない時は、マンガ喫茶に行きました。そこで「カバチタレ」(行政書士補助者が主人公のマンガ)を読んで妄想にふける時もありました。

 

夕方になったら親戚の会計事務所へ出勤し、3~4時間ほど、伝票入力のアルバイトをさせていもらいました。それで、事務所の家賃など維持費は何とかなっていました。夕飯をご馳走していただいたことも数知れずです。以前にも書いた通り、手書きで複式簿記の伝票を書くことで、簿記の基本的な感覚が得られたことが大きかったです。

 

アルバイトを終えたら、また事務所に戻りました。仕事はありませんでしたが、せっかく事務所を借りたのだし、とにかく灯りをつけて、通りすがりの人にアピールしよう、早く帰ったら両親も気にするだろうし、自分もなんだか情けない、と感じて、毎晩22時ぐらいまでは事務所にいたと思います。

  

その頃になると、事務所の大家さんが前を通りかかります。大家さんは直ぐ近くでコインランドリーを経営していましたが、

22時ぐらいに営業が終わると、毎晩チェックに向かうのです。

 

「塩崎さん、頑張ってるね~」

 

私の本当の事情をご存じだったかどうかは分かりません。でもこの言葉を掛けてもらえるのがなんだか嬉しくて、私は大家さんから声を掛けられる時間まで事務所に噛り付こう、と自分に言い聞かせていました。

 

ちなみに実家へ顔を出すと、「あんた、仕事は忙しいの?」といまも母は聞いてきます。

50を過ぎた息子に80近い母親がです。お互い自営業ということもありますが、やはり親は親ですね。