そうこうするうちに、開業した平成15年が暮れていきました。行政書士は、受任した案件を「事件簿」という台帳に記録しています。
農地転用 11件
建設業 3件
自動車 2件
相続 3件
(合計) 19件
平成15年度の事件簿に記載されている案件はこれだけです。始めたのが7月からと言え「12月まで何をしていただぇな?(遠州弁)」と自分自身が素朴に思ってしまうぐらいです。
ひとつの案件を何件の事件として記録するかは、人によってばらつきがあると思います。
例えば、Aさんが市街化調整区域内の白地農地に分家住宅を建てる場合、次のような手続きが考えられます。
・都市計画法43条許可申請
・同施行規則60条適合証明申請
・農地法5条許可申請
・土地改良区届出
これをAさんの案件として1件で記録するか、4件で記録するかにより事件数が変動します。
私自身も統一はしておりませんが、眺めているとある傾向はつかめます。
平成16年も1月から丸々1年間やった分だけ件数が増えた程度です。
年間で47件でした。大きな伸びはありませんでしたが、建設業のお客様は先輩の行政書士や 士業の方からご紹介を頂き、少しずつ増えていっていました。
この頃、行政書士会で募集していた「事前審査員」に採用されました。これは建設業の経営事項審査、いわゆる「経審」の審査会場において、県の職員が本審査をする前に、行政書士会が派遣した事前審査員が、申請者の皆さんの書類を事前にチェックする、という制度です。
平成17年は年間で293件に増えました。これだけ件数があると、毎日、目先のやることがある状況です。仕事が無くて、気が滅入ってしまう状況から抜けた感じです。
自分の預金通帳の残高が少しずつですが増えていきます。やっと世間で言う「軌道に乗った」というところでしょうか。
もう少し後の話ですが、同時期に開業して、あっという間に数名のスタッフを抱えていた司法書士の方から、開業のエピソードを聞いて驚いた記憶があります。
その方は、自身が仕事を取ってこれる確信があったので、事務所を始めると”同時に”スタッフを1名雇っていたとのことです。すさまじい、スピード感です。
私は自分自身に置き換えて、とても信じられない気持ちでした。でも同時に「経営するってそういうことだよな」とも感じました。
営業の戦略を立て、人や設備や広告に投資をする。どうすればお客様が増えるのか、必死に考える。その実現に必要なことにお金と時間をかける。
本来、それが「経営している」ということなのでしょうが、当時の私はチャンスがくるのをじっと待っているしか出来ませんでした。いや、今もそうかも知れません。
とはいえ、周囲の方からチャンスを頂けることは有難いことです。平成17年には、事務所の大家さんから、土地家屋調査士さんから、ふたつの大きなチャンスを頂きました。
それが開業3年目に、事件数が大きく伸びた要因でした。