建設業界の担い手の不足を改善していくため、国土交通省は社会保険の加入や建設キャリアップシステムの普及、建設業退職金共済加入履行証明の厳格化を始めとする様々な手を打っています。
その中で、令和6年4月1日から適用される、時間外労働規制の建設業への導入の対応に向けて、「一人親方」に関する下請指導ガイドラインについて、ご紹介をしてみたいと思います。
建設業は独立精神が旺盛な方が業界に飛び込んでくることが多く、数年経てば独立して一人親方となることが当たり前の業界です。そんな業界にあって常識とされていることについて、国土交通省は「待った」をかけようと今、検討を重ねています。
簡単に言いますと、税務署に個人事業主として届け出ている職人さんのなかに、法的には一人親方と言えない職人さんが混ざっていることを問題視しています。法的には一人親方とは言えない、弱い立場の職人さんを、社会保険で守っていくよう元請さん等の関係者に注意を促そうとしています。
一人親方とは、請け負った工事について自らの技能と責任で完成させることができる、現場作業に従事する個人事業主である、と国は定義しています。
「請け負った」とは仕事の完成を目的とする契約であるため、単に契約を結んでいても、実態として元請企業さんの指揮監督下において労務を提供し、その対価として費用が支払われている、いわゆる人工出しのようなケースは当てはまらないことになります。
「自らの技能」とは相当程度の経験年数があり、専門技能のほか安全衛生等の知識も習得し、職長クラスの能力があることが望まれています。建設キャリアアップシステムにおいては、レベル3(シルバーカード)相当です。特に年齢が10代で、経験3年未満の一人親方は要注意とされています。
「自らの責任」」とは建設業法令、社会保険等の加入、税金の納付の法令を守ること、また適正な請負契約を結び工事を完成させる信頼を得ていること、など挙げられます。
そのうえで国は、一人親方と契約を結ぶ建設業者さんの双方が、働き方をチェックする自己診断チェックリストを活用するよう、指導を強化しようとしています。
1.仕事先から仕事を頼まれたら、断る自由はあるか?
→断る自由がある OR なし
2.日々の仕事の内容や方法は、どのように決めているか?
→会社からの指示 OR 自分の裁量
3.仕事先から、始業と終業の時間が決められているか?
→会社からの指示 OR 自分の裁量
4.頼まれた仕事を他の業者に依頼することはできるか?
→依頼する自由がある OR なし
5.工事代金の決め方
→出来高払い OR 日当計算
6.材料や車両機械の用意はどちらでするか?
→自分でする OR 仕事先で用意される
7.同じ職種に就く、正社員の職人と比べて工事代金の額は?
→高い OR 経費を差し引くと同等か安い
8.他社からの依頼の仕事を請けることはできるか?
→自由にできる OR 専属の扱いにされている
以上ですが、ご自身や取引先の状況はどのように当てはまるでしょうか?今後のガイドライン等の整備の状況もまたチェックしていきたいと思います。