行政書士と私の人生22(正社員の雇用)

 

新しい事務所に引っ越して1年目の頃まで、雇用していたのは2~3名のパートの従業員のみでした。私自身は「無茶ぶり」「すぐ怒る」「話を聞かない」「労わらない」の我儘オンパレードですが、幸い優秀な従業員に恵まれ続け、事務所の運営できていました。

 

今となっては正社員もパートも働く時間が違うだけで、中身には関係がないのですが、パートさんは自分についてきてもらいにくいな、という実感があり正社員を雇用してみようと思い立ちました。社員を1名雇用する。これは零細企業の経営者にとって非常にプレッシャーなことです。今でもそうなのですから、初めての時は尚更です。

 

それまでは採用も、求人誌をみて応募してきて来た中から選んだ人と面接をして適当に決めていたのですが、採用のプロセスを見直して、面接時のヒアリングシートを独自に作ってみました。コンセプトは「自分も一緒に長く働きたいと思える人を選ぶための手がかり」です。

 

実際の質問項目です。

○ あなたが大切にしている価値観はどのようなものがありますか?

○ いままでの経験で身に付けたもの「特にこれは大事だ」というものを教えて下さい。

○ いままで仕事・勉強・スポーツ・趣味・習い事・クラブ活動で打ち込んだものはありますか。

○ 仕事における成功体験を教えてください。

○ 何をしている時が充実していて(自分らしい・楽しい・やりがいを感じる)と感じますか。

○ いままでの人生で嬉しかったこと、辛かったことで特に印象に残っていることはどんなことですか。

○ 10年後のあなたをイメージできますか??それはどんなあなたですか?

○ いま何か目標がありそれに向けて取り組んでいることはありますか。

○ これまでの人生の恩人、尊敬する方はいますか。またその方はどんな方ですか?

○ 自分の長所・短所はどんなところだと思いますか?

○ 困難な状況に立ち向かったときや、ストレスがたまったときに意識すること、発散方法などはありますか??

○ 最近テレビ・新聞等で目にすることで、気になっていることはありますか?

○ いままでお客さんとして受けたサービスで印象に残っている、良かったこと、悪かったことはどんなことですか。

○ 当社のHP、ブログを見てどんな印象を受けましたか?

○ 行政書士業務の中で特に扱ってみたい分野、興味があればそれはどのような分野ですか?

 

 

そういう思いで採用活動をすることで、自分にも気づきがありました。面接をしている時は、相手と互いに人生の一瞬を交わしている感覚があります。面接の時間だけでその方の人物像などわかる訳はないです。それでもヒアリングシートを利用することで、以前より少しは深い面接ができるようになりました。

 

その時に採用した方は、その後、結婚と2回の産休を挟みながら通算10年以上も勤めてくれました。いつもお客様の相談に耳を傾け、納期を厳守し、正確な書類を作り、知識の吸収にも貪欲でした。

 

その頃に使っていた手引き等の資料は、書き込んだ文字と手垢でいっぱいです。それを見ただけで、仕事への気持ちの入り方が分かります。

 

自分の成長とお客様への貢献を「私の指導なくして」自ら実現していました。事務所に今もある、そういう仕事に対する気概、文化のようなものを残してくれました。

 

私は「無茶ぶり」「すぐ怒る」「話を聞かない」「労わらない」の我儘オンパレードなのに。

本当にありがたいことです。