今回は不動産にまつわるお話です。
土地・建物の名義が相続などにより共有になった場合に、何か事を起こす際のルールとして、旧民法では次のように規定されていました。
①変更に関する事項
(例:農地から宅地への転用)には共有者全員の同意が必要。
②管理に関する事項
(例:使用者を決める)には共有者の過半数の同意が必要。
③保存に関する事項
(例:草刈り)は各共有者が単独で行うことができる。
ところが民法制定から120年が経ち、その間に複数の相続による世代交代、その地域からの離散など、共有者同士の意思疎通が難しい状況が多くなりました。
私も農地転用申請など土地に関する業務に携わっていると、このような問題に直面することは珍しくありません。
共有名義の不動産の利用に支障が出てくると、親族や隣接地だけの問題にとどまらず、特に災害への備えを考えると、自治会や行政など地域の問題に発展する可能性もあります。
そこで一昨年に民法が改正され、今年の4月1日から施行されることになりました。
新民法では次のように、これまで共有者全員の同意が必要であった変更のうち、軽微なものを「管理」として定義をし直すことにより、過半数の同意によって変更が出来るようになります。
①共有物に変更を加える場合でも、形状又は効用の著しい変更を伴わないものは軽微な変更として過半数の同意により可能となる。
(例:採石敷きをアスファルト舗装にする、建物の大規模修繕工事など)
②次の期間を超えない短期の賃貸借は、過半数の同意により可能となる。
・建物の賃貸借【3年】※但し、借地借家法に反しない対応が必要
・山林(樹木の植栽又は伐採を目的)の賃貸借【10年】
・上記以外の土地の賃貸借【5年】
・動産の賃貸借【6か月】
この改正により、放置された不動産による危険を回避するだけでなく、使えるように直したり、貸し出したりするなどの有効活用がすこしでも進むとよいですね。