年頭所感 ~いまに集中~

 

謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

今年も本ブログを時々ご覧になっていただければ幸いです。

 

年末年始に読んだ本(オリバー・バークマン著「限りある時間の使い方」)の中で

ハーバード大学の一風変わった講義が紹介されていました。

 

それは大学内の美術館で展示されている作品を一つ選び、3時間、その作品の前で

独りでじっと観察をし続ける、という課題です。

3時間のあいだに許されるのはトイレのみ、会話、スマホの使用等は禁止です。

 

作品を前にして課題がスタートすると、最初のころは時計の進みを見てばかり、

後悔、イライラ、焦りなど様々な感情や思いに振り回されるようです。

それが後半になってくると、ある時からふと作品の細部に自然と目がいくように

なり、時間を忘れていろいろと想像を膨らませることが出来たようです。

 

私たち現代人がとらわれがちな、現実から目を背けてしまうという罠と、

上手く集中できた時の濃密な体験を表す事例です。

 

禅の修行、瞑想などあるくらいですから、目の前のことに集中する、ということは

昔から至難の業であったと思います。

それでも古今東西、多くの人が試行錯誤してきたということは、それだけ人生に

とって大事な、真実が隠されているのだと言えます。

禅寺で修行している方が日常の生活(掃除、洗濯、食事の支度など)を大切に

しているのは、生活のためだけではなく、ハーバード大学の美術鑑賞と同じで

目の前のことに集中することの訓練なのかもしれません。

 

普段、電車の中などで周りを見渡すと、寝ている人、何かに集中している人、

ただ時間が過ぎるのを待っているだけの人、など色々な姿を感じます。

特にスマホが普及したことで、ニュースや動画など情報の海に浸かり、本当は

自分とは無関係の情報にとらわれ、現実から離脱することがクセになっている

人が、私を含めて多いように感じます。

電車の中の例えでいえば、参考書を開いて勉強している学生さんを見ると

「大事なことに集中しようとしているなぁ」と感じます。

 

題名からは意外に感じるかもしれませんが、本の中で著者が言いたかったことは

「時間は予定を詰める容器ではない」

「効率よく予定を詰め込む技術があるというのは錯覚」

「人生は自分だけの一度きりの時間」

「その時その時、大切に思うこと、出来ること、やるべきことに集中しよう」

だったと思います。

 

さてそうなると先ず、自分を見つめなおす時間が必要です。

そもそも自分にとって、今、大切なことは?

今といっても、今年、今月、今日、午前、午後、帰宅後、など区切った

ほうが「今に集中できる」のかもしれませんね。

 

2025年は「AI代理人」が普及する元年になる、と言われているそうです。

古今東西の過去の情報を編集して提供する「生成AI」から更に変化をして

AIが人間に未来の選択肢を提供してくれるようです。

まあ仮にAIが相談相手になってくれたとしても、自分の人生は、自分自身で、

自分の心で判断したいですね。