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♯00「行政書士法人みそら」代表塩﨑

「やりたいことが⾒つからない」̶̶

そんな悩みを抱えながら学⽣時代を過ごした⼀⼈ の男性が、紆余曲折を経て⾏政書⼠として独⽴し、今では建設業を⽀える専⾨家として 活躍しています。本記事では、親の期待に応えた学⽣時代、燃え尽きてしまった⼤学⽣ 活、資格に逃げた20代、そして30歳での再挑戦というリアルな経験をもとに、⾏政書 ⼠という仕事の実態ややりがい、向いている⼈の特徴、若い世代へのメッセージを語っ ていただきました。

 

「親の期待に応えたい」

――まずは学⽣時代のお話から聞かせてください。どんな学⽣でしたか?

今振り返ると、「⾃分がどうしたいか」をあまり考えていない学⽣でしたね。 ⻑男だったこともあって、親の期待に応えたいという気持ちが強かったと思います。特に なりたい職業はなかったと思います。勉強でもスポーツでも、その時やっていることはそ れなりに⼀⽣懸命やって成績を残す。ただその反動で、⾼校を卒業したときに⾃分の中で 全て終わってしまった感覚になってしましました。それは、親が「現役で⼤学に⼊った」 とすごく喜んでくれたからで、その姿を⾒たときに、「あ、⾃分の役⽬はここまでだった のかな」って燃え尽きてしまいました。

 

「何も決められなかった⼤学時代」

――⼤学⽣活はどんな感じでしたか? 結局、⾃分でやりたいことがなかったので、⼤学⽣活は本当に暗⿊なものになってしまし ました。正直に⾔うと、何もしたいことがなく、途中までは⾃堕落な⽣活をしていまし た。やりたいことが⾒つからないまま、時間だけが過ぎていく感じでしたね。そんな⽣活 をしていたので周りの友⼈たちがリクルートスーツを着て動き回っている中で、4年⽣に なっても単位を落とさないように必死でした。4年の最後まで⼤学に通って、本当にギリ ギリで卒業したみたいな感じでした。 「資格取得は、正直「逃げ」だった」 今だから⾔えますけど、逃げだったと思います。「資格を取る」と⾔えば、とりあえず将来 の話を先延ばしにできる。親も納得してくれるだろう、という気持ちはありました。 司法書⼠を⽬指して、3年の途中から予備校に通わせてもらいました。1年半ほどそれなり に勉強はしましたが、結果は出ませんでした。その試験が卒業した年の夏だったのでその 流れで地元へ戻りました。そして、就職先を探し始めました。 「⼤学卒業後、偶然⼊った事務所でやりがいを感じる」 司法書⼠の資格に落ち、司法書⼠の資格は諦めていました。本当に偶然、地元の袋井で司 法書⼠事務所の求⼈を⾒つけて、「とにかく就職しないと」という気持ちで⼊所させても らいました。そこは、司法書⼠・⼟地家屋調査⼠・⾏政書⼠が⼀緒になった事務所でし た。 最初は資格勉強もしていたこともあり、司法書⼠志望だったのですが、半年くらいで飽き てしまっていました。その事務所は⼈の出⼊りが多い事務所だったこともあって、気づけ ば⼟地家屋調査⼠の仕事を⼿伝ったり、⾏政書⼠業務も兼ねるようになっていました。そ ういった環境の中で上の⼈も独⽴したりしていって、⾃分が上の⽴場になり、最終的に は、気づけば事務所の業務全体を担当していました。それはそれで結構やりがいを感じて いました。

――具体的にはどんなことでやりがいを感じた?

農地転⽤の業務ですかね。「この畑に家を建てたい」といった要望から、農地の転⽤をし て、家が建ってそこに依頼者が住むまでの全体的な流れを把握できるようになって。それ がなんとなく⾯⽩いなと感じて、⾏政書⼠の仕事もいいなと実感しました。

 

「30歳、「このままじゃまずい」⾏政書⼠への道」

――⾏政書⼠を本気で⽬指したのはいつ頃? 結局、何の資格も取ることができず、その事務所で働き7年が過ぎてしまっていました。 ちょうどその時が30歳で「このまま⾏くのは流⽯にまずいな」と思い、巻き返しの意味 も含め⼀番挑戦しやすい⾏政書⼠の試験勉強を2002年の春から勉強を始めて、同年10⽉ の⾏政書⼠試験に挑戦しました。「もう後はない」。まさに背⽔の陣でした。そして、合格 が分かってからは、開業本などを読み漁り、⾏政書⼠ってこんなこともできるのかと⾯⽩ さを感じていました。それまでは農地転⽤しかやってこなかったものだから本を読み漁る 中で、相続関係や開業関係などその他にもできる業務ができることを知りました。その時 は、特に何の分野を専⾨にしていこうかとは考えていませんでした。最初は⾊々やってみ たいというのがモチベーションでした。⾊々試してみた結果、最初に軌道に乗ったのがこ れまで経験したことがあった農地転⽤でした。おそらく、前の事務所での予備知識や経験 から、依頼者がどうして欲しいかが理解できたから、うまく⾏ったのだと思います。そう した状況などから建設業に特化しようと意識し始めたのは10年ほど前で、実際に特化し たのは、5年ほど前のことです。

 

「独⽴は不安だらけ。でも50点からのスタート」

――独⽴するとき、不安はありましたか? 不安しかなかったですね。独⽴したから仕事を貰えるわけでもなく、完全にゼロからでし た。この先どうなってどうなってしまうかとかどうやって仕事を獲得していくとか不安だ らけでした。でも、やってみて気づいたことがあります。それは、前に勤めていた所⻑の ⼝癖だった「俺たちの仕事は50点からスタートしてる」の意味が、独⽴してからよくわか りました。「⾏政書⼠」という肩書きがあるだけで、話を聞いてもらえるし、信⽤してもら える。⾃分の⼒だけじゃなくて、先⼈たちが積み上げてきた⼟台の上に⽴っているんです よね。例えば、ラーメン屋の場合、のれんわけでもしない限り、知名度はゼロなわけで、 本当に興味を持った⼈しか来ない。完全にゼロからのスタート。でも⾏政書⼠などの⼠業 は、⾏政書⼠っていうだけで全国統⼀ののれん分けをしてもらっているようなもので、も ともと⼟俵があってそこで仕事をしているようなもの。だから、ラーメン屋とか他の独⽴ に⽐べたら⽐較的ハードルは低いかもしれないですね。だから、当時所⻑が⾔っていたこ とが、今はすごくわかります。

 

「⾏政書⼠という働き⽅」

⾏政書⼠ってどんなイメージ?――何か⾯倒な⼿続きをしてくれる⼈

近所の⼈など⼀般の⼈は⾏政書⼠として認識して接している⼈は、少ないと思います。そ う⾔った⼈からすると私は、何か難しかったり、⾯倒な⼿続きをしてくれる⼈という認識 だと思います。

――この業界にはどんな⼈が多い?

3パターンぐらいいると思います。1つ⽬は、私⾃⾝もそうですけど、普通に就職できな かった⼈。2つ⽬は、セカンドキャリアの⼈。特に、⼥性が⼦育てを終えてもう⼀度⾃分 のキャリアを築きたいって⼊ってくるパターン。男性でもある程度会社勤めをしてから脱 サラしてとか定年後に始めるパターンもいると思います。3つ⽬は、少数派であるけど、 新卒で⾏政書⼠を⽬指して⼊ってくるパターンですかね。

――この業界の雰囲気は?

経歴は関係ない セカンドキャリアの⼈たちと話しているとよく感じるのだけど、この業界の雰囲気は、そ の⼈の背景みたいなのは結構何でも良くて、すっと受け⼊れられる雰囲気はあると感じま す。例えば、親しくしている⼥性の⼈なんかは、10代で出産して全く社会⼈経験はない⼈ だけれど、今はバリバリ仕事をしている。だから、キャリアを積み上げていった先でなけ ればできない仕事ではなくて、どんな⼈でも、その⼈の⼈間性さえあればできるのが⾏政 書⼠だと思います。

――どんな⼈が向いていると思いますか?

⾏政書⼠に限らずどんな仕事でもどんな商売でもだと思うけど、相⼿から何を求められて いるかを察知して⾏動できる⼈だと思う。相⼿っていうのは⽴場によって変わる。例え ば、経営者が相⼿の時と上司の時とでは求められてくることは違うと思う。だから、どんな業界でも相⼿の求めることを考えられたり、察して⾏動することができる⼈は、仕事が軌道に乗っていくと思います。

――この仕事でお⾦以外に得られるものは?

⼀つ前の質問と関わってくることだと思うけど、臨機応変に対応する⼒が⾝に付くことだ と思います。具体的なスキルや知識は相⼿の求めに応じて習得していく感じではあるけれ ど、それがお⾦以外で得られるものかと思います。

――⾏政書⼠の魅⼒は?

普通かもしれないけど、お客さんが知らないこととか不安なことを教えてあげることで、 感謝されることかな。⾯⽩みとしては、⾏政書⼠の業務って本当に幅広いから奥が結構深 くて、⾊々な分野で調べようと思ったらいくらでも調べられることはある。建設業に絞ろ うと思ってからは、⾃分は建設業のことに詳しい⼈ですっていうのを⾃分で教育するとい うかセルフプロデュースして、⾃分を磨き上げていく⾯⽩みはあると思います。

――この仕事の⼤変さ・難しさは?

他の仕事と⽐べて、特にはないと思う。建設業の⽅と関わることが多いけれど、よっぽど そう⾔った⼈たちの⽅が⼤変だと思う。それ踏まえると⾃分たちの仕事は楽だなと感じま す。

――特に印象に残っている仕事は?

やっぱり、初めてした仕事が印象に残っています。それは、⾞の廃⾞登録の⼿続きでし た。それは、今でも買っているモータースさんの依頼で、そのモータースさんに開業の挨 拶に⾏った時に、廃⾞の登録もしてもらえますかみたいな感じでした仕事でした。⼿続き 的はすごく簡単なものだけれど、受託した案件を記録する事件簿に、受託第⼀号の記録を したときは印象に残っています。他にも、書類には当然⾃分の名前が⼊っているし、⾃分 のハンコが押される。それにはすごいドキドキした記憶があります。

――仕事をする上で意識していることは?

もちろん、締め切りがある仕事なので締め切りを守ることは⼤前提として、お客さんを間 違った⽅向に導かないこと。それと、お客さんの求めるものを先回りして伝えることで す。例えば、書類作成もスムーズに進んでいて、問題なく許可が降りる⼿続きがあった場 合、こちらとしては特に焦りやプレッシャーはないけれど、お客さんとしては、⼿続きは 無事に終わるのかといった不安がある。だから、聞かれる前に伝える。個⼈的は、⼿続き がどうなっているのかを聞かれたら減点だと思っています。その報告を受けて腹が⽴つ⼈ はいないし、先⼿打って安⼼してもらうところまでが仕事だと思っています。

――個⼈で活動している⽅が多い業界ですが、なぜ法⼈化されたのですか?

業界として、多くの⼈が個⼈事業だけでいいのかな、という疑問があります。特段、各々 がそれぞれの価値観でやっているとしても全く問題はなくて、お客さんとしても問題を感 じていないのなら別にそれでいいと思う。でも、組織として仕事ができる業界でないと、 若い⼈が⼊ってこないし、⼊りづらい。普通の就職先として選ばれる業界にしたい。例え ば、お客さんの引き継ぎがうまくいかないとか弊害もある。普通に就職先として⾒てもら うことは普通の業界だったら当たり前のことだとは思うけど、この業界では普通ではない から、就職の選択肢の⼀つにしたいという想いはあります。

 

「今後について」

――今後、⾏政書⼠に求められてくること

難しいね。どこの会社さんからも求められていることってまちまちだと思う。単純に事務 作業ができないとか、やりたくないからやってくださいみたいな従来求められているこ と。それはそれで⼀つの役割で、それにプラスアルファで、アドバイスというかお客さん をいい⽅向に導いていくことも⼤事だと思っています。例えば、その会社さんにプラスの 影響を与える⼿続きがあれば、頼まれてなくても、薦める。お客さんの業界が⾏政書⼠界 にそう⾔ったアドバイスすることを求めているかと⾔われると微妙だけれど、ただそれを やってあげるべきだと思っている。法律に関して⾔えば、上位資格として弁護⼠がいるけ れど、⾏政書⼠の⽅が⼈数もはるかに多いし、⾝近な存在ではあるから、⼿続きをしなが らもプラスアルファでいい経営ができるようにリードというかサポートしていけたらと思 います。そうすれば、若い⼈が⼊ってきて、その⼈たちが育って、会社の業績が上がって いくようなサイクルができる。そう⾔った会社が⼀社でも増えればいいなと思います。

――今後、「⾏政書⼠法⼈みそら」をどうしていきたいか?

⼀⼈ひとりが建設業者さんを助ける⼒が強くなればいいと思っています。書類を作るだけ ではなくて、質問されたことに⼀⽣懸命レスポンスよく答えるとかでも全然いいと思う。 実際問題、そう⾔ったところが重要だと思う。教えてほしいことをすぐ教えてれあげられ る。そういう能⼒をみんなで向上させていけたらと思っています。あとは、努⼒する社⾵ というか、⾃分を成⻑させて、お客さんへの貢献度を⾼めることが当たり前の会社にして いけたらと思います。当然、待遇とか和気あいあいとした雰囲気とかは⼟台として、同じ ⽅向性として個⼈個⼈が成⻑を志す会社にしていきたいです。

――理想の⼈間像は?

器の⼤きい⼈になりたいね。特にこの⼈っていうのはいないのだけど、器の⼤きい⼈間に なりたい。ただ寛容ってことではなくて、すごく厳しいけれどめちゃめちゃ優しいみたい な。⼀番いい先⽣だったなと思う先⽣って意外と怖いのは怖いけれど後々優しい時もあっ たみたいな。おそらく⼈間的にそういう振り幅が⼤きい⼈間が器が⼤きい⼈なのかと思 う。寛容であるかというよりは、振り幅が⼤きいところ。この⼈魅⼒的だなって思う⼈は 多かれ少なかれそう⾔った持っていると思います。⾃分⾃⾝、器が⼩さいと思うから、憧 れの気持ちと会社は責任者の器の⼤きさにしか育たないと思うので、⾃分の器が⼤きくな らないと会社の⼤きくならない。だから、器の⼤きな⼈間になりたいです。

 

「若い⼈へ伝えたいこと」

――若いうちにしておくべきことは? 世界中を旅してこいってことかな。どこかを旅するというよりも、旅をするという⾏為に 価値があると思う。放浪の旅でもいいと思うし、そういう⾯で⾔えば⾊々なアルバイトを するとかでもいいと思う。今そうしたことができないというよりは、今してもしょうがな いと⾔った意味で、若いうちの旅をすることには後々の⼈⽣に⼤きな価値を与えてくれる と思います。

――若者と接する上で意識していることは? ⾃分の価値観で接しないことかな。育っている時代も変われば環境が違うのも当たり前。 だから、そのギャップを受け⼊れて⽣かしていくことが需要だと感じています。やはり、 ⾃分が上の世代になってきてある程度楽をしていたり、現状維持をすることは退化だと感 じます。だから、その退化を遅らす意味でも若い世代と接することは⼤事だと思う。どの 業界とかどんな会社でも⾔えることだと思うけど、やっぱり若い⼈がいるとことって活⼒ があっていいと思う。もちろん経験やスキルは少ないかもしれないけれど、若者の持つ活 ⼒は、いい影響を与えることを若者は理解しておくといいかもしれないですね。

――進路に迷っている若い⼈へ⼀⾔お願いします。 ⼤いに迷っていいと思います。迷うことが⼈⽣。迷っていないと逆に変じゃないかと。た だ、迷っているだけだと前に進めない。だからアルバイトでも、旅でも、何でもいいから 何かしら決めて⾏動に移す。それが⼤事だと思います。

 

「インタビュアーからの⼀⾔」

今回のお話を聞いて強く感じたのは、「最初から進む道が決まっていなくても、⼈はちゃん と仕事に出会える」ということでした。学⽣時代はやりたいことが⾒つからず、⼤学⽣活 も決して順⾵満帆とは⾔えなかった。資格取得も、本⼈の⾔葉を借りれば「逃げ」だった という。それでも、偶然⼊った事務所で少しずつ仕事の全体像を知り、「誰かの⽣活が動く 瞬間」に関われることにやりがいを⾒出していく姿が印象的でした。 特に⼼に残ったのは、「⾏政書⼠は50点からスタートしている」という⾔葉です。 完璧でなくても、肩書きや役割を通じて社会とつながれる。その事実は、将来に不安を感じている若い世代にとって、⼤きな救いになるのではないだろうかと思いました。迷うのは当然。迷い、遠回りしながらも、⾃分なりの場所を⾒つけていく。 このインタビューは、「今、答えが出ていなくても⼤丈夫だ」と、そっと背中を押してくれる内容でした。