【時代に沿わない手仕事】
自然素材と向き合い、人と向き合う。左官という仕事に込めた想い
土や石、水、繊維。自然界にある素材を、毎日変わる気温や湿度と向き合いながら仕上げていく。
左官の仕事は、経験と感覚、そして人の想いが重なって完成する。
今回は、日本の伝統的な手仕事を大切にしながら、次世代の育成にも力を注ぐ左官職人に話を聞きました。
「お施主様の理想を、形にする仕事」
—— 仕事で大切にしていることは何ですか?
お施主様の「こうしたい」という想いをしっかり形にして、喜びや豊かさを感じてもらえる仕事をしたいと考えています。また、従業員や協力会社の方々など、関わるすべての人の喜びや幸せを共有したいと考えています。
—— この仕事をしていて心が震える瞬間はどんな時ですか?
難易度・緊張感が高い現場を無事に引き渡せたあと、お施主様が最高の笑顔で「ありがとう」と言ってくださる時ですね。その一言で、これまでの苦労がすべて報われる気がします。
「なぜ左官の道へ?自然素材と向き合う奥深さ」
—— 建設業、そして左官を選んだ理由を教えてください。
子どものころから工作や運動が好きで、家業でもあった“左官”の世界に自然と興味が湧き、惹かれました。日本を代表する伝統的でアナログな職人の世界がとても好きだったんです。
—— 特に惹かれた部分は?
土や石、水、繊維など、自然の素材を使い、日々変化する気象条件の中で施工していく難しさですね。また、その時々で微妙に変わる仕上がりを、職人の経験と知識でコントロールしていく奥深さに惹かれました。
「若い頃の自分へ伝えたい「人との繋がり」
—— 若い頃の自分にアドバイスするとしたら?
特に20代〜30代はとにかく「人との繋がり」を大切にして、たくさんの友人や仲間を作ってほしいですね。
そして、日本中、できれば世界へ旅に出てほしいと思います。
—— そう思うようになったきっかけは?
数年前、人材育成や確保に悩んでいた時期がありました。そのとき支えてくれたのが、同業者の仲間達でした。仲間が仲間を呼び、さらに人と人とが繋がり、大きな力になりました。その結果、何度もピンチを乗り越えられたと思います。
旅については、行ってみたい場所に出向き、多くの人と出会い、親睦を深めること。それが人生を豊かにしてくれると実感しています。
「かっこいい職人」とは、人として信頼される人」
—— あなたにとって“かっこいい職人”とは?
技術的に難しい仕事でも極限まで挑戦して成し遂げてみせる強い志がある職人。
そして、どんな状況でも誰にでも平等に優しく、相手の気持ちになって接することができる職人です。技術だけでなく、人としての在り方も大切だと思っています。
—— あなたにとって働くとは?建設業とは?
自分が成長できる場所であり、家族や従業員の幸せにつながる大切な仕事です。
また建設業は人々の暮らしを支える仕事。世の中の人々の快適な生活環境をつくるという責任とやりがいがあります。
——この仕事を始めたばかりの頃、正直どんな気持ちだったか?
一見、作業を見ていると簡単そうに見えますが、でも実際にやってみると職人さんのように全くできない…何回やっても…過酷な作業も多々ありましたが、それ以上にうまくできた時の達成感は格別ですね。
「若手育成のカギは「見て憶えろ」ではなく、共有し、自らも成長する」
—— 若い世代と関わるときに意識していることは?
流行りやSNSの話題など、若い人が興味を持っていることに共感するよう心がけています。
また、現場にいきなり放り込むのではなく、モデリング教育を活用して実習、知識、安全を教育し、段階を踏んでスタートするように心掛けています。
—— 具体的にはどんな教育を?
名工と呼ばれる職人の壁塗り動画を繰り返し見て、イメージし、真似をするところから始めます。名工さんと自分の作業動画と見比べながら、効率的な体の使い方を分析し、最終的には畳1枚分の壁を60分で20回塗れることを目標に訓練し、「鏝(コテ)塗り」の作業を体で憶えてもらいます。
「見て憶えろ」ではなく、教える側も一緒に成長できる教育だと思っています。鏝(コテ)に慣れることで、若手も現場で活躍できる場面が増え、やりがいを感じてもらえるはずです。
「忘れられない現場——プレッシャーの先にあった格別の達成感」
—— 特に印象に残っている現場は?
仕事を始めて6年目、大型博覧会のとあるブースの外構工事です。高い要求、厳しいルール、絶対に遅らせられない工期。毎日眠れないほどのプレッシャーでしたが、無事に完成し、何百万人もの来場者に喜んでもらえたことが今でも嬉しく、この時の経験が今も生かされています。現場最終日にお世話になった現場監督さんからいただいたお礼の手紙は、今でも職人を続ける活力となっています。
「今後について」
—— 今後挑戦したいことは?
高度な技術にも対応できる若手職人の育成、ハイクラス住宅の受注拡大、そしてビルやマンションなどの大規模工事への挑戦です。
—— 建設業の今後について
外国人に頼りすぎない人材の育成や確保、日本の技術力の低下を抑え、高度な技術を継承していくことが大きな課題だと感じています。
「未来の仲間へ伝えたいこと」
—— どんな人材に来てほしいですか?
左官業に限る事ではありませんが、誰とでもコミュニケーションが取れる方や何事もポジティブな思考で行動できる方、責任感が強く志を常に持っている方はどこでも求められていると思います。
—— 左官の魅力とは?
“左官“は建設業の中でも最も手仕事が中心の仕事、手仕事が中心だからこそ、技術力に個人差が生じます。だからこそ、「自分だけの技術」が身に付く仕事です。
一流の職人を目指したい人、アナログの世界が好きな人、日本の伝統に興味がある人には、ぜひ挑戦してほしいですね。
「建設業のイメージ(3K「きつい・汚い・危険」)は、もう変わっている」
—— 建設業のイメージ(3K「きつい・汚い・危険」)と実際の建設業の違いは?
高性能な道具や機械の多様化や現場環境の改善により、建設業界は20年前と比べて、とても働きやすいと思います。比較的、安全で健康的な現場が多いと思います。天候による工程変更や繁忙期・閑散期の波など“現場あるある”はありますが、それも含めて人々の暮らしを支える誇りある仕事です。
【インタビュアーからのひとこと】
今回の取材で印象的だったのは、左官という仕事を「技術職」であると同時に「人の手で行う仕事」として捉えている点でした。自然素材を相手に、天候や環境と向き合いながら仕上げていく左官の仕事。そこには、経験と勘だけでなく、現場に関わる人への配慮や、一つひとつの工程を丁寧に積み重ねる誠実さが欠かせません。そして、難易度の高い現場をやり遂げた後、真っ先に思い浮かぶのは自分の達成感ではなく、お施主様の笑顔や、現場を支えた仲間達の顔。その姿勢こそが、長く信頼される職人の原点なのだと感じました。
また、若手育成において「見て憶えろ」ではなく、理論と実践を結びつけた教育に力を入れている姿勢からは、技術を未来へ繋ごうとする強い責任感が感じられました。それに加え、そこには、職人でありながら教育者としての視点がありました。何においても効率やスピードが求められる時代だからこそ、コスパ・タイパが悪い手仕事の価値、人を育てることの大切さを改めて考えさせられる取材となりました。
「手を動かして何かを生み出したい」 「人に誇れる仕事がしたい」
そんな気持ちが少しでも芽生えたなら、左官という仕事の門を叩いてみてはいかかがだろうか。
【会社情報】
「株式会社左官花嶋」
〒432ー8007
住所:静岡県浜松市中央区神原町821−10
TEL:053-485-7723
HP:https://sakan-hanajima.co.jp/
Instagram:https://www.instagram.com/sakan.hanajima1976igsh=MTAxbzV2bnhyejZqcw==
営業内容:左官工事(珪藻土・漆喰、洗い出し等)
外構工事(ブロック・レンガ・石張り等)





