・建設業会計の特長について
・完成工事高とは?
・完成工事高に含まれない売上とは?
・完成工事原価とは?
・完成工事総利益とは?
・完成工事未収入金とは?
・未成工事支出金とは?
・工事未払金とは?
・貸借対照表とは?
・貸借対照表で使用される勘定科目
・損益計算書とは?
・損益計算書で使用される勘定科目
・株主資本等変動計算書とは?
・なぜ必要なの?
・どの会社に必要?
・見るべきポイントは?
・個別注記表とは?
・なぜ必要なの?
・誰が作成するの?
・主な記載内容は?
・公開会社、非公開会社の違い
◆建設業会計の特長について
建設業は、工事が始まってから完了するまでに長い期間を要する特徴があります。そのため、売上を計上するまでの期間が長く、完成時にまとまった金額が計上されることもあります。一般的な会計は1年を区切りにしますが、建設業では工事期間が1年以上になることも多いため、こうした特殊な事情に対応した「建設業会計」が用いられています。
特有の勘定科目について
建設業には、一般の会計にはあまり見られない特有の勘定科目があります。
◆完成工事高とは?
たとえば完成工事高は、完成した工事に対する売上や収益を表す科目です。この完成工事高を計上する際には、主に次の2つの基準があります。
(1)工事完成基準
工事が完了し、引渡しが済んだ時点で売上を計上する方法です。すべての工事が終わってから収益を認識します。
(2)工事進行基準
工事の進捗に応じて、売上を段階的に計上する方法です。工事が進むごとに、その割合に応じて収益を認識します。
◆完成工事高に含まれない売上(兼業売上高)とは?
兼業売上高とは、建設業で定められた29業種に該当しない業務によって得た売上のことです。つまり、建設工事以外の業務による収入は「兼業による売上」として、完成工事高には含まれません。
兼業売上高に該当する主な業務
【造園関係】
除草、草刈り、伐採、剪定、管理、造林 など
【測量関係】
測量、設計、地質調査、ボーリング など
【保守関係】
設備の保守、点検 など
【清掃関係】
清掃、浄化槽清掃、ボイラー洗浄、側溝清掃 など
【維持管理関係】
道路の維持管理、造園の管理 など
【宅建業務関係】
建売住宅の建築・販売 など
【運搬・販売関係】
資材の運搬・販売、金属類の売却収入 など
【機械関係】
機械器具の製造・修理 など
【除雪関係】
除雪、融雪剤の散布 など
【そのほか】
人工出し(作業員の派遣)、自社物件の工事 など
◆完成工事原価とは?
完成工事原価とは、工事にかかった直接的な費用のことを指し、工事が完了した時点で費用として計上します。この原価は、次の4つの要素で構成されています。
(1)材料費とは
工事のために直接購入した素材・半製品・製品、または材料貯蔵品から振り替えられた費用を指します(仮設材料の損耗額も含まれます)。
完成した工事に使用した材料は材料費として処理されますが、購入しただけで工事に使っていない場合は経費とはならず、貸借対照表の「材料貯蔵品」として計上されますので、ご注意ください。
(2)労務費とは
工事現場で作業に従事する、直接雇用の作業員に支払う賃金・給料・手当などを指します。ただし、現場で働いていても作業員以外の人件費は労務費ではなく、「経費」として処理します。たとえば、現場監督や現場事務所の事務員などがこれにあたります。
(3)外注費とは
他社と下請契約を結び、工事を依頼した際に支払う費用を外注費といいます。外注費は、外注先が就業時間や作業内容を管理し、それに対して報酬が支払われるものです。
たとえば、材料や道具を自社で用意して他社に工事を依頼する場合や、人員不足のために他社から応援を受ける場合などが該当します。なお、請求書の大部分が人件費である場合は、「労務外注費」として分類されます。
(4)経費とは
完成工事にかかる費用のうち、材料費・労務費・外注費以外のものが「経費」として分類されます。主に次のような費用が含まれます。
・動力用水光熱費
・機械等経費
・設計費
・労務管理費
・租税公課
・地代家賃
・保険料
・退職金
・法定福利費
・福利厚生費
・事務消耗品費
・通信交通費
・交際費
・補償費
・雑費 など
また、現場代理人や施工管理など、労務費に該当しない従業員の人件費も経費に含まれます。これらは「うち人件費」として、給料・手当・退職金・法定福利費・福利厚生費に分けて記載します。さらに、これらの費用は工事への関わり方によって、次の2つに分類されます。
(1)直接工事費
工事の施工に直接かかる費用のことです。たとえば、工事に使う材料費や、現場で作業する作業員の労務費などが含まれます。
(2)間接工事費
工事の施工に間接的にかかる費用のことです。たとえば、工事全体を管理するための経費や、現場のサポート業務に関連する費用が該当します。
◆完成工事総利益とは?
完成工事高から完成工事原価を差し引いた額のことをいいます。工事によって得た売上(完成工事高)から、その工事にかかった費用(完成工事原価)を引いて利益となれば「完成工事総利益」、費用の方が大きければ「完成工事総損失」として計上されます。
◆完成工事未収入金とは?
完成工事高として売上に計上した請負代金のうち、まだ入金されていない金額のことをいいます。つまり、「工事は終わって売上にはなったけれど、まだお金が振り込まれていない」という状態です。その後、請負代金を受け取ると、現金や預金として処理され、この勘定科目の残高は0になります。
◆未成工事受入金とは?
すでに受け取っている請負代金のうち、まだ工事が完成していない部分の金額をいいます。つまり、「工事はまだ終わっていないけれど、先にお金を受け取った」状態です。工事が完成すると、その金額は完成工事高として処理され、未成工事受入金の残高は0になります。
◆未成工事支出金とは?
まだ完成していない工事にかかった費用のうち、完成工事原価としてはまだ計上していないものをいいます。たとえば、材料の購入費用、外注のための前渡金や手付金、その他の工事にかかわる支出などがこれに該当します。
◆工事未払金とは?
工事原価(労務費・材料費・外注費・経費など)のうち、まだ支払いが済んでいない金額をいいます。建設業における取引で発生した未払金であり、一般的な未払金(通信費や事務用品など)とは区別して扱われます。
◆貸借対照表とは?
会社が「どこからお金を調達し(負債・純資産)」、「そのお金をどう使っているか(資産)」を示す報告書です。ある特定の時点における会社の財務状況がひと目でわかり、会社の安定性や支払い能力を判断する手がかりになります。
◆貸借対照表で使用される勘定科目
(1)資産の部 流動資産
現金とは?
会社がすぐに使えるお金のことをいい、紙幣や硬貨のほかに、小切手、送金小切手、送金為替手形、郵便為替証書、振替貯金払出証書なども含まれます。
預金とは?
金融機関や郵便局などに預けているお金のことで、たとえば銀行預金、郵便貯金、郵便振替貯金、金融信託などが該当します。決算日から1年以内に現金化できると認められるものは、預金として扱います。なお、当初から1年を超えて現金化することが予定されているものは、「投資その他の資産」に区分されることがあります。
受取手形とは?
商品やサービスの提供など営業取引によって受け取った手形のことをいいます。手形を現金化する前に割引いたものや、他人に譲渡したものは、その金額を差し引いて別途注記することになっています。また、破産・再生・更生などによって、決算期後1年以内に弁済されないと明らかな手形は、「投資その他の資産」に区分されます。
有価証券とは?
株式や債券など、時価の変動によって利益を得ることを目的に保有しているもののことです。また、決算期から1年以内に満期がくる有価証券もここに含まれます。
材料貯蔵品とは?
手元にある工事用の材料や消耗品、事務用の消耗品などのうち、未成工事支出金や完成工事原価、販売費および一般管理費として使われていない分が該当します。
短期貸付金とは?
決算期から1年以内に返済される予定の貸付金のことをいいます。ただし、はじめから返済期限が1年を超える場合や、1年を超えると見込まれる場合は、「投資その他の資産(長期貸付金)」として計上することができます。
前払費用とは?
まだ発生していない費用をあらかじめ支払っているお金のことをいいます。たとえば、未経過の保険料・支払利息・賃借料などで、決算日から1年以内に費用として発生する予定のものが該当します。なお、1年を超えてから費用となるものは、「投資その他の資産(長期前払費用)」として扱うことができます。
繰延税金資産とは?
税金の負担が一時的に軽くなる効果を、将来にわたって受けられる見込みがあるときに、資産として計上される金額のことです。次のようなケースが対象になります。
(1)流動資産や流動負債に関連しているもの
(2)特定の資産や負債に関係はないが、決算後1年以内に使われる見込みがあるもの
その他とは?
完成工事未収入金以外の未収入金や、営業取引以外の取引によって生じた未収入金、営業外の受取手形など、決算期後1年以内に現金化できると見込まれるもので、他の流動資産の科目に当てはまらないものをいいます。分類が難しい資産のうち、近いうちに現金化される可能性のあるものがこの科目に含まれます。ただし、営業取引以外の取引によって生じたもののうち、当初の履行期が1年を超える、または超えると認められるものについては、「投資その他の資産」に記載することができます。
(2)資産の部 有形固定資産
建物とは?
社屋や倉庫、車庫、工場、住宅などの建物本体と、それに付随する施設のことをいいます。
構築物とは?
土地に固定された土木設備や工作物を指します。具体例としては門扉や看板、洗車ピットなどが含まれます。
機械装置とは?
建設機械をはじめとするさまざまな機械や装置のことをいいます。
車両運搬具とは?
重機やダンプ、営業車、発電機などの車両や運搬用の設備を指します。
工具器具とは?
各種の工具や器具で、耐用年数が1年以上かつ取得価格が一定以上のものを指します。移動可能な仮設建物も含まれます。
備品とは?
各種の備品で、耐用年数が1年以上かつ取得価格が一定以上のものをいいます。
土地とは?
事業で使用する土地のことを指します。具体例としては、事業用の敷地や駐車場、資材置き場などがあります。
リース資産とは?
ファイナンス・リース取引で貸主が所有する資産のうち、有形固定資産に該当するものを指します。具体例には建設機械やダンプ、営業車などがあります。
建設仮勘定とは?
事業用固定資産の新設や増設にかかった支出を指します。具体的には、自社社屋の建設費や駐車場の造成費などが該当します。
(3)資産の部 無形固定資産
借地権とは?
有償で取得した土地の使用権(地上権を含む)をいいます。たとえば、土地を借りてその上に事業用の建物を所有しているようなケースが該当します。
のれんとは?
合併や事業譲渡などによって事業を取得した際、その取得原価が取得した資産や引き受けた負債の合計額を上回る場合の、その超過分をいいます。いわば「目に見えない価値」であり、昔から使われる「のれん分け」という言葉にもあるように、信用やブランドといった形のない資産を表しています。
リース資産とは?
ファイナンス・リース取引において借主側が使用する資産のうち、無形固定資産として扱われるものをいいます。具体的には、ソフトウェアの使用権を一定期間借り受けるような取引が該当し、リース契約に基づいて継続的に利用するケースなどが挙げられます。
(4)資産の部 投資その他の資産
投資有価証券とは?
流動資産として扱われる有価証券以外のもので、長期的な保有を目的としているものをいいます。ただし、子会社や関連会社などの関係会社株式は含まれません。具体的には、国債や満期までの期間が1年以上ある債券、出資金などがこれに該当します。
関係会社株式・関係会社出資金とは?
自社と資本関係や取引関係などで深い関係にある会社(子会社や関連会社など)に対して保有する株式や出資金のことをいいます。これらの会社が「子会社」や「関連会社」に該当するかどうかは、法律等で定められています。
長期貸付金とは?
決算日の翌日から1年を超えて返済される予定の貸付金をいいます。1年以内に返済されるものは「短期貸付金」として流動資産に計上されますが、それ以外の期間の長いものについては「長期貸付金」として固定資産に計上されます。
破産更生債権等とは?
経営が破綻した、または実質的に破綻状態にある債務者に対する債権のうち、決算期後1年以内に弁済を受けられないことが明らかなものをいいます。具体的には、完成工事未収入金や受取手形といった営業債権、貸付金や立替金などのその他の債権の中で、破産債権、再生債権、更生債権などがこれに該当します。
長期前払費用とは?
未経過保険料、未経過支払利息、前払賃借料などのうち、流動資産に計上される前払費用に該当しない、1年を超えて効果が及ぶ前払い費用をいいます。たとえば、自動車保険や火災保険の長期契約、複数年分をまとめて支払った事務所の賃貸料、長期のメンテナンス契約などの費用が該当します。これらのうち、決算日の翌日から1年を超えて費用となる部分が長期前払費用として扱われます。
繰延税金資産とは?
税効果会計の適用により資産として計上される金額のうち、流動資産の繰延税金資産として記載されたもの以外のものをいいます。 損失や一時的な差異が発生した場合に、未来の税金の支払いを減らすためのものです。
(5)資産の部 繰延資産
創立費とは?
会社の設立に際して発生した費用をいいます。具体的には、定款や登記に関する書類の作成費用、認証手数料、設立登記のための登録免許税、株式募集のための広告費や印刷費などが含まれます。会社の設立という一時的な目的のために支出される費用であるため、繰延資産として処理されます。
開業費とは?
会社設立後から営業開始までの間にかかった開業準備に関する費用を指します。具体的には、準備期間中の事務所賃借料や広告費、通信費、交通費、さらに開業前に購入した備品などが含まれます。
株式交付費とは?
新株の発行や自己株式の処分に伴い直接かかった費用を指します。具体的には、株式募集の広告費や金融機関への手数料、登記に関わる費用などが含まれます。
社債発行費とは?
社債を発行する際に直接かかった費用をいいます。新株予約権の発行に関連する費用も含まれます。具体的には、社債募集の広告費や金融機関への取扱手数料、登記費用などが該当します。
開発費とは?
新技術や新経営組織の採用、資源の開発、市場の開拓などを行うために支出された費用をいいます。将来の利益に貢献することが期待される支出であり、一定の要件を満たす場合には資産として計上されます。ただし、経常費(毎年決まって支出される経費)は含まれません。
(6)負債の部 流動負債
支払手形とは?
営業取引に基づいて発生した手形による債務をいいます。取引先に対して、一定の期日に手形に記載された金額を支払うことを約束したもので、支払いが行われることで手形債務は消滅します。
工事未払金とは?
工事費の未払額をいいます。(工事原価に算入されるべき材料貯蔵品購入代金等を含みます。)ただし、税抜き方式を採用する場合でもこれらの取引にかかる消費税および地方消費税の額を含めて計上されます。
短期借入金とは?
決算期後1年以内に返済されると見込まれる借入金をいいます。金融手形も含まれます。銀行などの金融機関や関連会社からの借入残高などが該当します。
リース債務とは?
ファイナンス・リース取引に基づく債務のうち、決算期後1年以内に支払期限が到来するものをいいます。支払期限が1年以内のものは流動負債に、1年を超えるものは固定負債に分類されます。
未払金とは?
営業取引以外の取引により生じた債務のうち、決算期後1年以内に支払期限が到来するものをいいます。広告宣伝費や事務用品の購入代金、固定資産の取得に関する未払いなどが該当します。
未払費用とは?
継続的な役務の提供を内容とする契約に基づき、決算日までに提供された役務に対する未払いの金額をいいます。たとえば、未払給与手当や未払利息などが該当します。未払金は、商品やサービスなどの提供が終わっているのに対し、未払費用は継続的な契約の途中で計上する点が異なります。
未払法人税等とは?
法人税、住民税、事業税などの未払い額をいいます。決算時に納税額を合理的に見積もることで、その見積額を「未払法人税等」として負債に計上します。
預り金とは?
営業取引や営業外取引で発生し、決算後1年以内に返済されるか、返済される見込みのある預り金をいいます。会社が役員や従業員、取引先などから一時的に預かったお金を管理するための科目です。
前受収益とは?
前受利息や前受賃貸料などを指し、負債の一つです。これは、代金を先に受け取ることで、将来商品やサービスを提供する義務が生じるため、返済すべき責任として負債に計上されます。
引当金とは?
・修繕引当金とは、完成した工事で使用する機械などの修理に備えて積み立てるお金のことをいいます。
・完成工事補償引当金とは、引き渡した工事に問題があった場合の補修や損害賠償、代金の減額、契約解除に備えて準備しておくお金のことをいいます。
・工事損失引当金とは、工事にかかる費用の合計が、その工事で得られる収益よりも多くなってしまうと見込まれるときに、その損失に備えて積み立てておくお金のことをいいます。
・役員賞与引当金とは、決算後の株主総会で支給が決まる役員への賞与に備えて、あらかじめ準備しておくお金のことをいいます。※すでに支払いが確定している場合は除かれます。
(7)負債の部 固定負債
社債とは?
会社が資金を集めるために発行する債券のことで、「事業債」とも呼ばれます。投資家などから直接お金を借りる方法であり、貸借対照表では負債として計上されます。なお、会社法(平成18年法律第86号)第2条第23号に定められたもので、償還期限(返済期限)が1年以内に到来する場合は「流動負債」に分類されます。
長期借入金とは?
返済の期限が決算日から1年を超える借入金のことをいいます。「銀行からの借入金」「役員や親会社からの借入金」「個人からの借入金」などが該当します。なお、1年以内に返済予定のものは「短期借入金」として流動負債に分類されます。
リース債務とは?
ファイナンス・リース取引によって発生する債務のうち、返済期限が決算終了後、1年を超えるものをいいます。これらは「固定負債」に分類されます。一方で、1年以内に支払い期限がくるものは「流動負債」として扱われます。
退職給与引当金とは?
役員および従業員の退職給与に対する引当金をいいます。将来支払われる退職金のうち、現在までに発生していると見込まれる額をあらかじめ見積もって計上するものです。
負ののれんとは?
合併や事業の譲渡などで取得した事業の取得原価が、取得した資産から引き受けた負債を差し引いた金額(純額)を下回る場合に生じる差額をいいます。主な原因としては、簿外債務や訴訟リスクなどが挙げられます。
(8-1)純資産の部 株主資本
資本金とは?
会社の運営に必要な元手となる資金のうち、株主や投資家からの出資金、または経営者の自己資金などをいいます。
新株式申込証拠金とは?
申込期日経過後における新株式の申込証拠金をいいます。決算期末の時点で、まだ資本金に振り替えられていない場合には、資本金とは別の区分で計上されます。
資本準備金とは?
会社設立時に払い込まれた資金のうち、資本金としては計上しなかった部分の累積額をいいます。これは、事業で赤字が出たときに備えて置いておく資産の一つです。
その他資本剰余金とは?
資本剰余金のうち、資本金及び資本準備金の取り崩しによって生ずる剰余金や自己株式の処分差益など資本準備金以外のものをいいます。差益が出た場合は、その他資本剰余金は増加し、差損が出た場合は、その他資本剰余金は減少します。
利益準備金とは?
会社法で定められた法定準備金の一つで、企業が利益剰余金の一部を積み立てるお金のことをいいます。
繰越利益剰余金とは?
繰越利益剰余金は、これまでの利益の累積額を示します。複数年にわたる企業の経営成績を把握でき、企業の純資産の増加を反映します。長期的な成長や発展を支える大切な基盤となる資金です。
自己株式とは?
会社が保有する自社の発行済み株式をいいます。自己株式の買い戻しにより、資本構成の最適化を図ることができます。
(8-2)純資産の部 評価・換算差額
繰延ヘッジ損益とは?
繰延ヘッジ損益は、繰延ヘッジ処理が適用されるデリバティブ取引の評価替えで生じた差額から、税効果相当額を差し引いた金額をいいます。デリバティブとは、金利や為替、株価などの価格変動を基にした取引や金融商品を指します。
(8-3)純資産の部
新株予約権とは?
株式会社の株式を一定の条件のもとで取得できる権利です。新株予約権は、将来的な株主からの出資金となる可能性があるため、純資産に区分されます。
◆損益計算書とは?
会社が1年間でどれだけの収益を上げ、そのためにどれだけの費用を使ったのかをまとめた報告書です。「何にお金を使ったか」「どれだけ売上があったか」、そして「最終的にどれくらいの利益が出たか」が一目でわかります。「完成工事高」「完成工事原価」「完成工事総利益」などの勘定科目が、損益計算書で使われます。
(1)売上高
完成工事高とは?
工事が完成し、売上として計上された金額をいいます。工事の完成については、一般的に完成基準または長期工事の場合には進行基準のいずれかが適用されます。
兼業事業売上高とは?
建設業以外の事業(兼業事業)を行っている場合における、その事業によって得られた売上高をいいます。具体的には、建設業で定められた29業種以外の業務によって得られる収入が該当し、建設工事以外での売上が兼業事業売上高となります。
(2)売上原価
完成工事原価とは?
完成工事高として計上された売上に対応する工事の原価をいいます。工事原価は、「材料費」「労務費」「外注費」「経費」の4つの要素で構成されています。
兼業事業売上原価とは?
兼業事業売上高として計上した売上に対応する兼業事業の原価をいいます。兼業事業による売上がある場合には、損益計算書にその売上原価を記載する必要があります。
(3)総利益
売上総利益(売上総損失)とは?
売上高から売上原価を差し引いた金額をいいます。売上高は、商品やサービスの販売によって得た収入を指し、売上原価はその商品やサービスの提供にかかった費用のうち、実際に売れた分に対応するものです。
完成工事総利益(完成工事総損失)とは?
完成工事高から完成工事原価を差し引いた金額のことをいいます。完成工事高は、工事によって得た売上を、完成工事原価はその工事にかかった費用を指します。つまり、完成工事総利益とは、工事で得た売上からコストを引いた粗利益をあらわします。
兼業事業総利益(兼業事業総損失)とは?
兼業事業売上高から兼業事業売上原価を差し引いた金額のことをいいます。建設業を営む会社が、建設業以外の事業(兼業事業)も行っている場合に、その兼業事業によって得た売上から、かかった費用を差し引いた粗利益を指します。
(4)販売費および一般管理費
役員報酬とは?
取締役、執行役、会計参与、監査役などに支払われる報酬のことをいいます。役員賞与引当金繰入額も含まれます。ここでいう役員とは、従業員ではなく、会社の経営を担う立場にある人を指します。社内外を問わず、経営陣に支給される報酬は「役員報酬」として扱われ、支給の頻度に関わらず該当します。
従業員給料手当とは?
営業や事務など、工事現場以外の業務に従事する従業員に支払う給料や手当をいいます。一方で、工事現場に直接携わる作業員などに支払う給料や手当は「完成工事原価」に含まれます。
退職金とは?
役員や従業員に対して、退職時に支払われる金銭をいいます。退職年金掛金なども含まれます。なお、「退職給付に係る会計基準」を適用している場合は、退職金以外の退職給付費用などを適切な勘定科目に区分して記載します。
法定福利費とは?
企業が法律に基づき、従業員のために負担する保険料などの費用をいいます。具体的には、健康保険・厚生年金保険・労働保険の事業主負担分や、児童手当拠出金などが含まれます。
修繕維持費とは?
建物や機械などの固定資産を通常どおり使い続けるための維持管理や、壊れた部分を元に戻すためにかかる費用をいいます。具体的には、建物・機械・装置の修繕費や、倉庫内の物品を管理するための費用などが該当します。
事務用品費とは?
事務作業に必要な消耗品や備品の購入にかかる費用をいいます。固定資産に含まれない事務用備品や、新聞・参考図書の購入費なども含まれます。たとえば、ノート、ボールペン、はさみ、ファイル、付箋、コピー用紙、封筒、名刺、出勤簿、納品書などが該当します。
通信交通費とは?
通信費、交通費、旅費など、業務に伴って発生する移動や通信に関する費用をいいます。通信費には電話代やデータ通信料、郵便料金などが含まれます。交通費には通勤定期代や業務での移動にかかる運賃、タクシー代などが該当します。旅費は出張時の交通費や高速料金、宿泊費、日当などを指します。
動力用水光熱費とは?
電気、水道、ガスなど、事業活動に必要な動力や光熱にかかる費用をいいます。電気料金、ガス料金、水道料金、冷暖房に使う燃料費などが含まれます。
調査研究費とは?
新製品や新技術の開発、既存製品の改良などにかかる費用をいいます。技術研究や開発に必要な人件費、材料費、設備費などが含まれます。
広告宣伝費とは?
新聞、雑誌、テレビ、インターネットなどを通じて、商品やサービスを広く知らせるための費用をいいます。ホームページの作成費用や屋外・交通広告なども含まれます。
貸倒引当金繰入額とは?
営業取引に基づいて発生した受取手形、完成工事未収入金等の債権に対する貸倒引当金繰入額をいいます。貸倒損失が実際の損失額であるのに対して、貸倒引当金繰入はあくまでも見積りであるのが特徴です。
貸倒損失とは?
営業取引に基づいて発生した受取手形、完成工事未収入金等の債権に対する貸倒損失をいいます。代表的な例として、取引先が倒産したり、債務超過に陥った場合に回収不能になるケースが挙げられます。
交際費とは?
得意先、来客等の接待費、慶弔見舞及び中元歳暮品代等をいいます。支出した交際費のうち、損金として認められる範囲は限定されています。
寄付金とは?
社会福祉団体等に対する寄付をいいます。寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもってするかを問わず、法人が行った金銭その他の資産または経済的利益の贈与または無償の供与をいいます。
地代家賃とは?
事務所、寮、社宅などの土地や建物を借りて使用するための費用をいいます。事業に必要な事務所や倉庫、店舗、駐車場などの賃料は、「地代家賃」として経費に計上されます。
減価償却費とは?
建物や機械、車両などの固定資産について、時間の経過や使用により価値が減っていく分を費用として計上するものをいいます。資産の取得にかかった費用を一度に処理するのではなく、耐用年数に応じて毎年少しずつ経費として計上していきます。
開発費償却とは?
繰延資産として計上された開発費を、一定の期間にわたって費用として配分することをいいます。開発費の償却期間は原則として5年以内とされており、その期間内で計画的に償却していきます。
租税公課とは?
事業所税、不動産取得税、固定資産税などの各種税金や、道路占用料、身体障害者雇用納付金といった公的な負担金をいいます。建設工事請負契約書に貼付する収入印紙も含まれます。なお、購入した印紙を保管している場合は、購入時に「租税公課」として処理し、決算時に未使用分があるときは「貯蔵品」として計上します。
保険料とは?
災害補償などに備えるための損害保険料をいいます。具体的には、損害保険や法定外労災保険などが該当します。法人が役員や従業員を被保険者とする掛け捨て型の保険に加入し、その保険料を会社が負担した場合に用いられる科目です。
雑費とは?
社内での打合せにかかる費用や、諸団体への会費など、他の販売費および一般管理費の科目に該当しない費用をいいます。分類が難しい少額の支出など、重要性が低いと判断される経費を処理する際に用いられる科目です。
営業利益(営業損失)とは?
売上総利益(または売上総損失)から、販売費および一般管理費を差し引いた金額をいいます。建設業においては、完成工事高や兼業事業売上高から得られる利益を表し、いわゆる「本業による儲け」を示す指標です。
(5)営業外収益
受取利息とは?
預金利息や、未収入金・貸付金などに対する利息をいいます。ただし、有価証券に関連する利息は含まれません。受取利息は収益ではありますが、本業とは直接関係しないため、営業外収益として計上されます。
有価証券利息とは?
国債、地方債、社債などの公社債に対する利息をいいます。これらの利息収入は、有価証券に関連する収益として「営業外収益」に分類されます。
受取配当金とは?
株式の保有によって得られる利益配当金をいいます。投資信託の収益分配金やみなし配当も含まれます。通常、配当金は源泉徴収されたうえで支払われるため、会計処理の際には控除された税金もあわせて計上します。
有価証券売却益とは?
売買目的の株式、公社債等の売却による利益を含みます。売却し、売却価額が帳簿価額を上回った場合に、その差額を計上します。
雑収入とは?
営業外収益のうち、他の科目に該当しない収入をいいます。具体的には、スクラップや廃材の売却による収入などが挙げられます。ただし、これらが事業目的の範囲内である場合には、「兼業売上高」として計上することもあります。
(6)営業外費用
支払利息とは?
金融機関や他社からの借入金にかかる利息をいいます。たとえば、借入金の利息や社債の利息などが該当します。あくまで利息部分のみを指し、元本の返済額は含まれませんので、ご注意ください。
社債利息とは?
企業が資金調達のために発行した社債や新株予約権付社債に対して支払う利息をいいます。社債を購入した社債権者へ利息を支払う際に使われる科目です。
貸倒引当金繰入額とは?
営業以外の取引から生じた貸付金などの債権について、回収が困難になるおそれがある場合に、期末時点で債権の評価を行い、その見積もり額を貸倒引当金繰入額として計上するものです。
貸倒損失とは?
営業以外の取引で生じた貸付金などの債権について、回収不能となった損失を指します。主な原因には、取引先の倒産や債務超過などが挙げられます。
創立費償却とは?
繰延資産に計上された創立費のうち、一定期間にわたって分割して費用化する償却額をいいます。創立費は原則として5年間の均等償却が認められていますが、任意償却のため、一括償却することも可能です。
開業費償却とは?
繰延資産に計上された開業費を一定期間に分けて費用計上する償却額を指します。開業費は原則として5年の均等償却が認められていますが、任意償却のため、各年度の償却額を自由に決めたり、一括償却することも可能です。
株式交付費償却とは?
繰延資産に計上された株式交付費を、定められた期間内に分割して費用として計上する償却額をいいます。株式交付費は、新株発行や自己株式の処分にかかった費用であり、通常3年以内の期間で償却処理を行います。
社債発行費償却とは?
繰延資産に計上された社債発行費を、一定期間にわたり分割して費用として計上する償却額を指します。社債は発行期間が年単位の場合が多いですが、長期債も存在します。実務では通常、3年を目安に償却処理を行います。
有価証券売却損とは?
売買目的で保有している株式や公社債などを売却した際に生じた損失をいいます。売却価額が帳簿価額を下回った場合に「有価証券売却損」として計上され、逆に上回った場合は「有価証券売却益」として扱われます。
有価証券評価損とは?
売買目的で保有している有価証券について、期末時点の時価が帳簿価額を下回る場合に計上する損失をいいます。
経常利益(経常損失)とは?
営業利益(営業損失)に営業外収益の合計額を加え、営業外費用の合計額を差し引いた金額をいいます。経常利益は、企業が継続的にどれくらいの利益を上げているかを示す重要な指標のひとつです。
(7)特別利益
前期損益修正益とは?
前期以前に計上された損益について、修正が必要となった場合に生じる利益をいいます。ただし、金額が重要でないものや、毎期繰り返し発生するようなものについては、経常利益に含めて処理することができます。
その他とは?
固定資産売却益や投資有価証券売却益、財産受贈益など、通常の営業活動とは異なる臨時的な利益をいいます。ただし、金額が重要でないものや、毎期継続して発生するようなものについては、経常利益に含めて処理することができます。
(8)特別損失
前期損益修正損とは?
前期以前に計上された損益について、誤りなどを修正することで生じた損失をいいます。ただし、金額が重要でないものや、毎期継続的に発生するようなものについては、経常損失として処理することができます。
その他とは?
固定資産の売却損、減損損失、災害による損失、投資有価証券売却損、固定資産圧縮記帳損、損害賠償金など、通常の営業活動とは異なる異常な損失をいいます。ただし、金額が重要でないものや、毎期継続的に発生するものについては、経常損失として処理することができます。
(9)法人税等・当期純利益
税引前当期純利益(税引前当期純損失)とは?
経常利益(または経常損失)に、特別利益と特別損失を加減して算出される金額をいいます。企業が1年間に得た利益から、法人税や住民税などの税金を除く、すべての収益と費用を反映した段階の利益です。
法人税、住民税及び事業税とは?
その事業年度における税引前当期純利益に対して課される法人税等の金額をいいます。また、過年度分についての更正や決定により発生する納付税額や還付税額も含まれます。
ここでいう「法人税等」には、法人税・住民税・利益に応じて課税される事業税が含まれます。
法人税等調整額とは?
税効果会計の適用によって計上される法人税・住民税・事業税の調整額をいいます。
会社の「会計上の利益」と「税務上の課税所得」には一時的な差異が生じることがあるため、その差異を将来の税金に反映させる目的で調整を行います。
当期純利益(当期純損失)とは?
税引前当期純利益(税引前当期純損失)から法人税・住民税・事業税を差し引き、法人税等調整額を加減して算出される金額をいいます。
これは一定期間における会社の最終的な利益(または損失)を示し、企業の経営成績を評価するうえで最も基本的かつ重要な指標とされています。
◆株主資本等変動計算書とは?
株主資本等変動計算書は、会社の「資本金」や「剰余金」など純資産の増減とその理由を示す財務書類です。以前は貸借対照表でまとめられていた内容の一部が、よりわかりやすく整理されたものです。
◆なぜ必要なの?
会社法の改正により、株主総会などの決定によって、資本金や剰余金の額が柔軟に変えられるようになりました。
その変動を分かりやすく伝えるために、この書類が導入されました。
◆どの会社に必要?
すべての会社に作成義務があります。
合資会社や合同会社などでは「社員資本等変動計算書」という名称になります。
◆見るべきポイントは?
表の中で特に重要なのは次の3つです。
当期首残高:期首時点の純資産の残高
当期変動額合計:期中に増減した金額の合計
当期末残高:期末時点での残高(貸借対照表の純資産と一致)
これらを確認することで、純資産が「どう動いたか」「なぜ動いたか」が把握できます。
◆個別注記表とは?
個別注記表とは、貸借対照表や損益計算書などの決算書だけでは伝えきれない、補足情報を一覧にまとめた書類です。企業の財務内容や経営の方針などを、より正確に理解してもらうために作成します。
◆なぜ必要なの?
決算書だけでは、会社の会計方針の考え方や、特別な取引の影響などが見えにくいことがあります。そのため、注記という形で背景や理由を説明することで、より信頼性の高い情報提供が可能になります。
◆誰が作成するの?
すべての株式会社が作成する必要があります。ただし、会社の規模や株式の公開・非公開により、記載が必要な項目は異なります。
◆主な記載内容は?
個別注記表には、最大で19項目の注記を行います。以下のような内容が含まれます。
・会計方針の考え方(資産の評価方法、減価償却の方法など)
・表示方法や会計方針を変更した場合の理由
・決算書の誤りの訂正内容
・配当の内容や株式の変動状況
・関連会社や親子会社との取引
・収益の認識方法に関する情報 など
※すべての会社で必ず記載が求められる項目も一部あります。
◆公開会社・非公開会社の違い
公開会社(株式を自由に譲渡できる会社)は、多くの項目について注記が必要です。非公開会社(株式の譲渡に制限がある会社)は、一部の注記が省略できます。
個別注記表は、決算書だけでは読み取れない企業の実態を明らかにする重要な資料です。特に、投資家や金融機関などの関係者にとって、企業の信頼性を判断するうえで欠かせない情報源となります。