河川の洪水で住宅1階部分がすべて水につかる可能性がある市街化区域の人口が過去20年間で約60万人増えた、という記事が日経新聞(2023.8.24)に掲載されました。
昨年の総務省の発表では過去1年間に日本の人口は約55万人減少しています。それとほぼ同じ数であることも驚きです。
想定される浸水が3m以上(住宅の2階以上)の区域は2020年の時点で全国に約790万人が居住しており2000年から8%増加しています。人口の増加が最も多かったのは東京都の江戸川区と足立区です。
浸水のリスクは高くても、市街化区域は自治体がそこに住民が集まることを意図して予算を投入し、公共施設や道路などインフラを整備してあります。自ずと民間の商業施設も集まってくるため、便利で住みやすい街が形成されています。
2000年代以降、若い世代の所得が思うように増加しないなか、便利で坪単価が割安、コスパの良いエリアとして、下町の市街地が好まれたのかもしれません。
ところで市街化区域は都市計画法で定められている概念ですが、市街化区域と市街化調整区域を線引きしている自治体と非線引きの自治体があります。静岡県西部では次のように分かれています。
線引きしている自治体・・・浜松市、湖西市、磐田市
非線引きの自治体・・・袋井市、森町、掛川市、菊川市
新聞記事では市街化区域における課題に焦点が当てられています。
市街化調整区域と非線引きの無指定地域はそれなりに住宅の建築が抑制されていますが、まったく不可能な訳ではありませんので、結構な割合の人口が居住しています。インフラの整備は劣っていますが、市街地の近郊なら利便性はさほど変わらないし「ゆとり」も比較的あります。
都市計画法、農地法(郊外の土地は農地が多いため)の諸条件をクリアーすれば、住宅建築における土地の取得費を抑えられること、その地域出身の方であれば馴染みが深い、両親が近くに居住している、というのも大きなメリットになります。
弊所の地元、浜松市では私が10年ほど前に調べたところ、人口約80万人のうち約20万人が市街化調整区域(都市計画区域外も含む)に居住していました。もし市街化調整茎の人口推移を調べたら浜松市が貢献しているのかもしれません。
浜松市は市街化調整区域における住宅建築を可能にする施策をいくつか持っています。他の市町と同様に分家住宅や線引き前宅地の利用のほか、独自に大規模既存集落内の自己用住宅と市街地縁辺集落という制度があります。
詳しくは 浜松市ホームページ をご参照ください。
また市街化調整区域の人口が多いことについて、以前に書いた記事もご覧になってもらえたらと思います。
さて浸水想定区域のお話に戻りますが、浜松市でも2023年10月から市街化調整区域内の住宅建築についてより厳しい規制が始まります。
浜松市ホームページより抜粋
近年、頻発・激甚化する自然災害に対応するため、災害ハザードエリアにおける新規立地の抑制、移転の促進、防災まちづくりの推進の観点より総合的な対策を講じる必要があることから、都市再生特別措置法等の一部を改正する法律(令和3年法律第43号。公布日:令和2年6月10日)により都市計画法の一部が改正され、令和4年4月1日から施行されました。浜松市はこの法改正を受けて、関連する条例や開発許可制度の運用基準などを見直し、令和5年10月から下記のとおりの基準の変更を予定しております。
浸水ハザードマップで浸水想定が3m以上であることがチェックポイントです。今後は青地の農地で除外を検討する際にも必ず検討することが重要です。
まずは、ハザードマップを見てみましょう。