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職業インタビュー#006「グラウンド・ワークス(株)」代表取締役 山下 英俊

評価されないことが最大の評価である建設業の裏方の仕事

基礎、足場、内装・・・。それぞれの専門業者で成り立つ家づくりの現場。「評価されないことが最大の仕事」。そう語るのは、住宅業界の裏側から家づくりを支える会社の経営者。全員はセールスエンジニア、営業しない営業戦略。豊かな発想力で躍進するグラウンド・ワークス社長、山下英俊の経営哲学に迫る。

【第1章 見えない仕事が家を支える】

 

「家づくりは数十社で作り上げるチーム戦」

 

――建設業で働いて感じたことは何ですか?

単純に一つの建築を見ても、いろんな業者さんが関わってできているんだな、というのは率直に思っていました。基礎屋もいれば、足場屋もいれば、内装屋もいる。住宅をつくるとなると、だいたい20社ぐらいの業者が入るんですよね。自分は監督をやっていたので、そういう構造をよく見ていました。働いてみた感想としては、仕事の成果が目に見えるので、自分には面白い仕事だなと思っていました。特に地盤に関しては、いずれ見えなくなってしまう部分でも、その上に家が建っていると思える。そういうところは、この仕事の醍醐味かなと思っています。

 


 

「“裏方の仕事”という使命」

 

――この仕事を始めたきっかけは何ですか?

そもそも建築の仕事が好きというのもあると思います。家業が大工だったので、そういった影響もあったのかもしれません。兄貴がいて、兄貴はすごく手先が器用で、いわゆる職人気質。今も大工をやっています。でも自分は営業力はあるけど、大工はそんなに得意じゃなくて。挫折した人間だからこそ、裏方の仕事を徹底してやろうという思いは今も変わっていません。それが自分の天命だと思ったからです。そう思ってやってきた結果、同じ志を持つ人間が増えてきて、今は25人の組織になりました。3分の1ぐらいが建築経験者で、いわば「建築崩れ」の人間が、リベンジ戦を果たす場所がグラウンド・ワークスだとも思っています。セカンドキャリアというか、建築に未練がある人が違うアプローチで活躍できる場所だと思っています。

この業界を見ていて思うのは、ゼネコンでも住宅会社でも工務店でもハウスメーカーでも、結局は建築ディーラーのような存在なんですよね。自社で大工を雇用しているところはほとんどなく、自分の会社に職人がいて、自分たちのものづくりができる会社は少ない。だから彼らは、これからますます生き方を考えないといけない。自分はそれに、かなり前から気づいていました。最近ではハウスメーカーから呼ばれて、「自由に指導してほしい」と言われることもあります。こうした方がいいよ、とアドバイスをするのが今の仕事の一つでもあります。

 


 

「“評価されないこと”が最大の仕事」

 

――この仕事のやりがいは何ですか?

本来は評価されないことが最大の仕事なんですよ。例えば地盤の仕事って、家に帰って、何事もなく水平な基礎の上で普通に暮らしている。それが一番の評価なんです。だから、そういう仕事って評価されちゃいけない仕事なんですよね。誰にも気づかれないけど、非常に重要な仕事。我々の仕事は全部そうです。家を建てる人はみんな命を担保にして家を建てていて、その人たちに安心を提供している。そして、その安心が脅かされないからこそ、逆に評価されない。自分はそれが美学だと思っているので、それでいいと思っています。暖かい家とか、涼しい家とか、人が当たり前に求めるものを当たり前に叶える。それが自分たちの仕事です。自分たちが揃えている商材を使ったことで、ある建築会社が競合他社に打ち勝って差別化できた、というようなことはあります。そういう時は、「いい仕事したな」と感じますね。

 


 

【第2章 グラウンド・ワークスの働き方】

 

 

「全員が“セールスエンジニア”」

 

うちはそもそも“作業員”という認識がありません。誰もが現場に立ち、誰もが営業する。全員が“セールスエンジニア”という位置に立て、と言っています。全員が“営業”で、全員が“作業員”です。現場こそ最大の営業の場だと思っています。ネクタイを締めて営業するのと同じで、現場が最大限のパフォーマンスを発揮する見せ場であり、そこに一番の説得力がある。自分のホームで、得意なことを話せるって最高の営業ですよね。そういう人間をずっと育てていますし、そうであってほしいと思っています。だから、“営業”とか“作業員”という感覚はないんですよね。

この仕事は毎日同じ作業を繰り返す仕事ではありません。毎日お客さんも変わるし、現場も変わる。仕事の仕方も変わる。そこが面白いところです。さらに言えば、この仕事はAIに駆逐されない産業の代表格でもあります。3Dプリンターで住宅ができるようになるとしても、実用化にはあと50年以上かかると思います。結局、現場でやらなければいけない仕事が必ずある。そこがAIやロボットにはできない部分で、最大の魅力だと思います。

 

――この仕事や建設業界の面白さはありますか?

私たちで言うなら、いつでも住宅会社になれるなと思っています。年間で700800件ぐらい工事をしているので、どこの会社が成長しているか、どこが衰退しているか、売り方がどう変わっているかも全部見えるんです。それもこの仕事の面白さの一つですね。

 

――社員さんにとってのやりがいは何だと思いますか?

やっぱり専門職ということですね。手に職がついて、感謝される。うちには多種多様な事業があります。シロアリ対策、地盤、補修など、どれも専門職です。それを全部自社でやっている会社は、国内でもほとんどないと思います。

 

――取引先はどんなところが多いですか?

売上の89割は住宅会社です。個人で依頼する人は、ほとんどいません。液状化対策をしてほしいという依頼は年々増えていますが、それでもまだ少数ですね。

 


 

「現場こそが最高の営業の場」

 

――どういった営業をされていますか?

現場見学会が営業の一つですね。「ここが現場なので見てください」と実際に見てもらいながら、技術を実演します。そしてエビデンスとなる資料を出します。あとは住宅会社向けに、各事業部ごと専門的なセミナーに行っています。例えば地盤なら液状化対策、断熱、カビ対策など。我々が住宅でクリアしなければいけない専門的な課題を見つけ、ハウスメーカーさんなどに教えています。正直に言うと、住宅会社と我々の知識は同等または専門的な部分においてはそれ以上と自負しています。一言で暖かい家、涼しい家と言っても、それを具体的にどう作るのかについてはを我々の方がはるかに知っている。毎日何十軒、何百軒と現場を見ているので、どうすれば失敗するのか、どうすれば防げるのか、どうすれば腐るのかまで全部分かります。つまり、情報ステーションのような役割ですね。情報は現場から生まれます。毎日現場を見て、「ここは失敗するな」「ここはうまくいってないな」「この現場は最高だな」とか、全部分かる。住宅性能の測定も、毎日のようにやっています。だから住宅会社に対して「このぐらいの数値が出ていれば大丈夫ですよ」といったアドバイスもできますし、逆にお客さんにもそうした情報も提供できます。そういう意味で、情報ステーションとなる、色々な情報を持っている会社だと思います。

 

「セカンドキャリアが活躍する組織」

 

――グラウンド・ワークスにはどんな方が多いですか?

新卒は一人もいません。全員中途採用です。さっき言ったように、3分の1は現場監督や基礎工事の経験者などの建築経験者です。そういう人間が少しずつ集まっています。それ以外の人は、工場で働いていたとか、まったく違う仕事をしていた人ですね。外の仕事をやってみたかった、という理由で来る人もいます。仕事自体は、12年やれば身につくものですが、他社では習得できない特殊な技術です。そもそも地盤の仕事をしている知り合いって、ほとんどいないと思うんですよ。業界自体が小さい。だから経験者もいない。みんなゼロスタートです。新卒採用の空中戦に参加するほどの資金もないし、わざわざうちを見つけてもらうのも大変です。むしろ一度どこかに新卒で入って、ビジネス研修を受けて、少し揉まれてボロボロになってから来てくれたらいいなと思っています(笑)。ちょうど会社もこの夏に移転する予定で、事務所も3倍ぐらいになります。だから人も増やして、50人体制にしていきたいですね。

 

――セカンドキャリアの社員さんが働き続けてくれる理由は何だと思いますか?

外の仕事が面白いと思えるかどうかだと思います。毎日現場が変わる。それを不安定だと思う人もいれば、面白いと思う人もいる。その違いですね。工場で同じ作業をずっとやるよりも、変化のある仕事が面白いと思う人じゃないと続かないと思います。

 

――建設業を辞めてしまう理由は何だと思いますか?

仕事がきっちり5時に終わる仕事ではないからではないでしょうか。夜が遅い日もあれば、朝が早い日もある。そういう働き方が嫌だという人は、辞めてしまいますね。

 

【第3章 “営業しない営業” 建設業の差別化戦略】

 

「営業とは“営業をしなくてもいい状態”を作ること」

 

――営業のコツは何ですか?

今も変わらないんだけど、営業のコツは“どうやったら営業しなくていいか”を考えることなんです。営業しに行って、面談して喋るとか、そういうのはもう三流だと思っています。究極を言えば、「ちょっと営業してほしいんだけど」という状態をどう作るかじゃないかと。例えば、家電屋で後ろから付きまとわれたら鬱陶しいですよね。でも「これどういう機能かな」と思って振り向いたときに、「ご説明しましょうか」と言われたら、この人から買おうかなと思う。その瞬間をどう作るのかを考えるのが営業であって、どちらかと言えばマーケティングに近いと思います。欲しいと言っている人に売るのは簡単です。でも、「それ欲しい」と思わせる営業は別の話です。それから、時間泥棒をする営業はダメだと思っています。例えば電話。電話は立派な営業ですが、確実に相手の時間を奪ってしまう。だから、もっと違うアプローチで、もっと記憶に残る方法はないかと考えるんです。グラウンド・ワークスでは今でもお礼のハガキなどは徹底しています。時間を奪わないからです。現場見学会やセミナーもそうですが、ハガキを書いたり、ニュースレターを出したり、とにかくお客さんを忘れないために、そして覚えていてもらうために、いろんな発信をしています。

こちらが忘れたら、お客さんも忘れる。だから困ったときに、「そういえば」と思い出してもらえるようにする。「仕事くださいよ」というスタンスは、なるべく取りたくないんです。そうならないためにはどうするかを常に考えています。

 

――どういうところから専門的な知識を吸収されていますか?

住宅関係の専門誌は当然読みます。それからお客さんの声もよく聞きます。

「最近こんなことに困っている」という声が届くこともあるし、「今何に困っていますか?」と直接聞くこともあります。そこから「じゃあ、次のセミナーにはこういう講師を呼ぼう」とか「こういうサービスを始めよう」という発想になっていきます。

 

――最近よく耳にする悩みにはどんなものがありますか?

新しい断熱基準にどう対応するか、という相談は多いですね。住宅性能の競争が激しくなっているので、どういう性能を出していけばいいのか、という相談です。あとは単純に集客。「お客さんをどうやって集めたらいいか」という相談もよくあります。

 


 

他社がやらないことをやる」「平凡なことを非凡にやる」

 

例えば地盤の仕事だと、地盤改良という専門的な工事があります。世の中の地盤業者の95%以上は、セメント改良という方法を使っています。これは地中にセメントを入れる方法で、それが業界の主流なんですが、実は将来的に産業廃棄物になる可能性があります。一方、うちはセメント改良のコンクリート杭や鉄杭でもなく、砂利の杭を使っています。人工物を地中に入れると産業廃棄物になりますが、砂利は天然素材なので産廃になりません。さらに、水の通り道ができるので液状化対策にもなります。それでも世の中の95%以上はやらない。

 

――なぜ砂利の杭を使わないのでしょうか?

今まで使ってきた設備があるからです。新しい機械を導入するのも大変ですし、「今までこれでやってきたから」という世界なんです。シロアリ対策も同じです。日本の95%以上は農薬を撒いてシロアリを駆除しています。でも新築で家に虫がいないのに、虫を殺す殺虫剤を撒くというのは、正直おかしいと思っています。うちはそういうやり方をやめて、ホウ酸を使っています。、ホウ酸は鉱物なので、効果が半永久的に続きます。一方、一般的な殺虫剤は3年ほどで効果が切れます。世界的にはホウ酸が主流なんですが、日本ではまだ農薬が多い。それは、シロアリ業社には3年ごとに再施工するビジネスモデルがあるからです。うちはそういうことは関係ないので、最初から長く保つ方法を選んでいます。

これが「他社がやらないことをやる」という意味です。

もう一つは「平凡なことを非凡にやる」。例えば、さっき言ったハガキ。ハガキを書くこと自体は平凡です。でも20年間ずっと続けている会社はほとんどありません。請求書や領収書を送るときも、自筆で「ありがとうございます」という一文を必ず添えます。報告書には花の種を入れたりもします。現場では、大雨の日などに「現場に異常はありませんでした」という連絡を、監督の時間を奪わないように配慮して、メールやショートメッセージで送ります。バレンタインやクリスマスなどのイベントも、毎回工夫しています。「いつも面白いことをやる会社だよね」と言われることも多いです。名刺も同じです。普通の名刺にはないような情報を赤裸々にたくさん載せています。例えば、クラックスケールというツールを付けています。これは基礎や外壁のヒビの幅を測るためのものです。「これで測って連絡してください」とQRコードを載せています。こういう工夫は平凡だけど非凡で誰もやらない。とにかく全ては、覚えてもいてもらうためです。

 


 

「ジョブローテーション」

 

――ジョブローテーションの効果は?

例えば地盤の担当が、断熱の仕事を少し手伝ったり、応援に入ったりすることがあります。そうすると社内のコミュニケーションが良くなりますし、お互いの仕事の理解も深まります。それから、多能工に近い形になるため、もし事業部の状況が変わったときでも、技術を持っていれば仕事を続けられる。リストラが一番辛いですから、それを防ぐ意味もあります。社内ネットワークで日報を共有しているので、地盤の担当でも断熱の現場を理解しています。それは社内の風土にも役立っていると思います。あと適材適所もあります。
例えば高所恐怖症の人は高所作業の断熱をやるより、地に足がつく地盤の仕事の方が向いているかもしれない。ジョブローテーションで適材適所に配置できるようにしています。

 

※ジョブローテーション:社員の能力開発やキャリア形成を目的として、計画的に職務や部署を一定期間ごとに異動させる人材育成制度。

 

「自社メディア“ビルダーズラジオ”」

 

――ビルダーズラジオに込めた想いは何ですか?

自社メディアを持つことの一番の目的は、さっき言った“営業しなくてもいい状態”を作ることです。例えば、住宅会社に「最近活躍されていますね。ラジオ出ませんか?」と言うと、「出たいです」となる。そこでヒアリングして、収録して、その後ご飯に行く。それで収録データも渡す。これで4回会うことになります。4回会ったら絶対に落としてみせるという営業手法でもあります。自分では“ラジオマーケティング”と呼んでいます。ただ目的は、それだけではなくて、4割ぐらいは地元の会社が地元の住宅を作る意義みたいなものを示していきたいといった想いもあります。ラジオを聞いた人が、「建築業界も面白そうだな」と思ってくれたらいい。時間帯も、職人さんが帰りに聞く時間です。「今の仕事じゃなくて、この仕事も面白そうだな」と思ってくれたら嬉しいですね。もちろん自社のトピックや求人の話をすることもあります。取引先だけでなく、問い合わせのあった会社や、少し疎遠になった会社との関係を作り直すツールとしても使っています。

 

――多くの方とラジオ内で対談していく中で感じることはありますか?

みんな言っていることが同じだな、という印象があります。いわゆるコモディティ化しているというか、「うちは品質が高いんですよ」みたいな話ばかりなんですよね。でも、それってある意味当たり前の世界じゃないですか。その話を聞いても、「うちはこうです」とか、会社ごとの哲学があまり見えてこない。結局、みんな同じことを言っているように聞こえてしまうんです。しかもラジオなので、ビジュアルもない。その中で、ただ「品質がいい」と言われても、聞いている側はなかなか想像力を働かせにくい。みんな「自分たちが一番だ」と言うけれど、正直、あまり違いが感じられない。そんな印象を受けました。

 

――その中で逆に「おっ」と思った話はありましたか?

やっぱり、設計の哲学が語られている話ですね。例えば車でもそうですよね。トヨタに乗って間違いないなと思う人もいれば、BMWを選ぶ人、アウディを選ぶ人もいる。それは性能だけじゃなくて、その会社の設計思想や哲学で選んでいる部分もあると思うんです。車だって性能だけで買う人ばかりではないでしょう。だったら住宅も同じだと思うんです。性能一辺倒ではなく、デザイン性があるとか、そういう価値があってもいいと思います。例えば「うちは大手ハウスメーカーじゃないから、木を手で刻んで建てているんです」とか。そういう話はすごくいいと思うんです。。手刻みだからお願いしたいと思える理由が伝われば、価値になります。それと、もし本当に手刻みでやっているなら、その工程を見せた方がいいと思うんですよ。例えば工場を公開して、毎日動画を撮って、お客さんに送る。今日ここまで刻みました、今こういう工程です、というようにプロセスを見せる。そうしないと、人は「いいものだ」とは感じないんです。「木にこだわっています」と言われても、それがなぜ良いのかが見えないと伝わらない。「木が好きだから使っているんでしょ」と思われてしまう。いいものを作っていても、見せ方が足りない会社が多いなと感じます。例えば、「木はいいんですよ」と言われても、それが自分や自分の子どもにとってどういいのか、ピンとこないですよね。でも「木にはこういう効果があって、冬でも暖かいんです」と説明があれば、「なるほど、木はいいな」と思える。そういうシンプルな説明が足りないんです。結局、それは誰のためのものなのかという話で、建築や住宅業界って、そこが抜け落ちている会社が多いと思います。それと、暮らしに関係するエモーショナルな部分。感情に訴えるような要素も、もう少し工夫していいと思うんですよ。例えば、エシカル消費のような考え方もありますよね。「この木はこの山から持ってきています」「それによって地域のお金が回るんです」みたいなストーリーが見えれば、「それならお願いしようかな」と思う人も増えると思うんです。

 

※エシカル消費:消費者一人ひとりが「人・社会・地域・環境」に配慮した製品やサービスを選び、購入する消費行動。

※ビルダーズラジオ:グラウンド・ワークスが提要するKMIXの毎週金曜1900から放送される建設業界とリスナーをつなぐラジオ番組。家づくりの基本から知られざるコツ、そして家づくりに情熱を注ぐ人々の想いをお届けしている。

 

【第4章 経営者の哲学 仕事と人生の考え方】

 

 

「住宅会社に必要なのは“哲学“と“美学“」

 

――今後の建設業界はどうなると思いますか?

住宅会社自体が減るかもしれないと思っています。大事なのは設計やその会社の持つ哲学や美学です。「何を作りたいのか」や「何を作るのか」、逆に「何をやらないのか」という考え方。昔の住宅は、この家族のために、妻のために、子どものためにと、スペシャリティー中のスペシャリティーでした。でも今は「和風でも洋風でも何でもできますよ」と言われても、逆に困りませんか。「結局何が得意なの?」と思いますよね。

 

「“下請け”と呼ばせない会社へ」

 

――会社として、どんな組織にしていきたいですか?

住宅版の平成建設のような会社にしたいと思っています。自社で大工も含めて全部の機能を持ち、住宅会社をサポートできる会社です。ただし、全部できるけれども、それぞれの専門性は高い。そういう組織にして、住宅産業を支えていきたい。「下請け」と呼ばせない会社にしたいんです。要するに元請けだろうが下請けだろうが、五分五分だっていうことです。具体的には、住宅の総工費の3分の1ぐらいを担える会社にしたいです。そこまでいけば、「この会社がいないと建たない」と言われる存在になれる。そうなれば、より強いパートナーシップが築けると思います。将来的には、各事業をホールディングス化して分社化し、社員を社長にしたいと思っています。それが唯一の目標です。社長にしか分からない楽しさと、苦悩があります。それを経験できる人を増やしたい。社長の面白さは、前人未到のことに挑戦できることや、社会の役に立っているとダイレクトに感じられること。お金のことも、ヒリヒリするぐらい考えるようになります。自分の場合は、何を見ても仕事と結びつけて考えています。例えば街の看板を見ても、「このキャッチコピーはどういう意味なんだろう」「なぜこの色を使ったんだろう」と考える。そういう思考が習慣になっています。だから他の人にとっては苦悩かもしれませんが、自分にとっては苦悩というより、もう癖みたいなものですね。

 

「若い頃への自分へのアドバイスと若者へのメッセージ」

 

――若い頃の自分にアドバイスするなら、どんなアドバイスをしますか?

勉強して大学に行きたかったですね。今でも、何かを勉強するたびにそう思います。仕事に関する本は山のように読んでいますが、もっと勉強をしていたら、もっと違う視野が持てたのかなと思うことはあります。でも自分自身、中卒で、後悔したことはないんです。「学歴じゃないよね」と言う人もいますよね。でもそれって、学歴を持っている人が言うから成立する言葉だと思っています。学歴を持っている人は、それなりの時間やエネルギーを勉強に費やしている。それを知らない人が「学歴じゃない」と言うのは違うんじゃないかと思うんです。お金でも同じですよね。「お金じゃない」と言えるのは、お金を持っている人だと思う。

 

――やっておいて良かったことはありますか?

建築で挫折したときに、何が何でもという思いで勉強して取った建築士の資格ですね。それは今でも自分の気持ちを支えてくれています。あの時、本当の意味でプロの仲間入りをしたのかもしれないと思いました。

 

――勉強以外で、若いうちにやっておいた方がいいことはありますか?

中高生や大学生には、とにかくたくさん恋愛をして、たくさん友達を作ってほしいですね。仕事と恋愛って、イコールだと思う。例えば営業でも、「次会うときはこういうアプローチをしようかな」と考えますよね。恋愛でも、「どうやって誘おうかな」と考える。そのプロセスやエネルギーは、実は同じなんです。相手の予測を上回るからこそ信頼が生まれる。そういう成功体験がある人がビジネスで成功していくと思います。友達関係でもそうですよね。サプライズにしても相手の予想を上回るものが記憶に残ると思います。

 


 

「モットーと私という人間」

 

――仕事や人生で大切にしていることやモットーはありますか?

そんな大層なことを考えて生きてきたわけではないんですが、基本的には思いやりを持って生きてきたつもりです。自分は、一度「これをやる」と決めたら、とことんやるタイプの人間ですね。人に強要したことはないですが、自分の性格はそういうタイプだと分かっています。例えば最近だと、100キロウォーキングという大会に3回出ました。寝ないで100キロ歩くんです。全部完歩しています。50キロを超えたときに、「まだ50キロもあるのか」と思うか、「あと50キロか」と思うか。その時に、自分は「あと50キロか」と思うタイプなんだと気づきました。あと、自分で言うのも変ですが、お人好しなところがあります。騙すくらいなら、騙されようと思って生きています。これは母親の遺言でもあるんですが、もし人を騙して一瞬うまくいったとしても、自分は、その重圧に耐えられないと思うんです。だから、それが自分の生き方の指標になっているのかもしれません。

 


 

「多くの人と関わる中で」

 

――建設業者さんやさまざまな人と関わる中で、接する際に意識していることはありますか?

特別に意識していることはあまりないですが、常に「お客さんのために役立つサービスを提供できているか」は考えています。社内の日報システムでは、毎日みんなが投稿しています。そこに自分もコメントをして、みんなの仕事をよく見ています。誕生日にはみんなでお祝いしますし、表彰されたら「みんなのおかげだよね」と共有する。自分の考えていることやアイデアも、社内でよく発信しています。「今こういうことを考えている」とか、「インスタの素材をみんなで出していこう」とか。自分の頭の中を常に共有していると、自分自身でも自分の価値基準が分かってくる。そうすると、それが結果として会社のイズムになっていくんだと思います。

 

――人を見るときはどこを見ますか?

やっぱり人柄ですね。この人は合わないなと思う人もいますが、基本的には「いい人に違いない」と思って接するようにしています。もちろん、それで後悔することもありますけどね。

 

――成功している人に共通点はありますか?

行動が早いことですね。迷っていないわけではないと思います。でも、とりあえずやる。やりながら考える。それが中小企業の最大の強みだと思います。損をする権利なんて、社長にしかないので、だったら決めて、すぐやればいいんです。

 


 

「アイデアの正体は臆病さから」

 

――アイデアマンだと思いますが、どうやってアイデアを出すのでしょうか?

アイデアを出すことは習慣にしています。これは才能じゃなくて、訓練だと思っています。それと、アイデアをたくさん出す正体を言うと、単純に自分は誰よりも臆病ですごく心配性なんです。「まだこのアイデアを試していない」「まだ未来が見えない」そういう不安があるから、いろんなアイデアを考えてしまう。何も考えずにドンと構えているのが落ち着いていると思いますが、自分は無理ですね。友達の仕事でも、「こうした方がいいんじゃない?」つい勝手にコンサルみたいなことをしてしまいます。お店を出したいという相談を受ければ、「こういうコンセプトはどうですか」とか考えます。それを考えるのが、ある意味趣味ですね。あと、アイデアはお酒を飲みながら出ることも多いです。ただ、次の日でも覚えているものだけをやるようにしています。忘れてしまうアイデアは、大したことがないものだと思っています。

 

「売上の95%を捨てた決断」

 

――人生の岐路での判断基準はありますか?

実は、「気づいたらそこにたどり着いていた」ということが多いんです。大きな決断としては、15年前に地盤改良の主流だったセメント改良をやめたことですね。当時は売上の95%がその工法でした。それを全部やめて、砂利の杭の工法に切り替えました。全財産を使って設備を導入し、借金もしました。結果的には、それが今の差別化につながりました。結局、同業者が「それをやられたら嫌だな」と思うことをやるのが一番の差別化なんです。サービスの良さにも限界があり、物理的に見積書を早く出すとか、そういうことだけでは戦えない。だから、今までのやり方を否定する決断でも、新しいことに踏み出しました。他の判断基準は、自分の家に使うかどうかです。自分の家には使わないけど、他人の家には使う。それは絶対にダメだと思っています。「自分の家に使いたい」と思えるものだけを選ぶ。それが判断基準です。

 

「未来なんて誰にもわからない」

 

――進路や人生に迷っている人へのアドバイスはありますか?

未来なんて誰にも分かりません。過去は解釈を変えればいい。未来は分からないから、自分で進むしかない。迷っているというのは、たぶん「自分の期待値」に届くかどうかを考えているからだと思います。でもそれって、自分を過信している部分もある。まずはやってみればいいと思います。よく言うんですが、何かを始めた瞬間に「やらなかったらどうなっていたか」という思考は消えます。自分も独立しましたが、「独立しなければ良かった」と思ったことはありません。やると決めたら、前に進むしかないからです。むしろ悩みが一つ減ります。だから、やってしまえばいいと思います。

 

 

【会社情報】

「グラウンド・ワークス(株)」

・本社
〒437-0064 静岡県袋井市川井873-4
TEL:0538-45-3313 FAX:0538-45-3315
・三島営業所
〒411-0035 静岡県三島市大宮町1丁目2-26
TEL:055-973-6320 FAX:055-973-6322

HP:https://www.ground-works.biz/company

 

【各種SNS】

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【事業内容】

地質調査業 / 地盤改良設計・施工及び管理 / 断熱材事業 / シロアリ対策 / 住宅性能測定/ハウスクリーニング/住宅リペア/大型パネル事業/不動産事業