トラックやダンプなどの自動車を使って荷物を運び、運賃を受け取って行う運送事業は、法律上「貨物自動車運送事業」と呼ばれています。この事業は、運送の方法や使用する車両の種類などによって、いくつかの種類に分けられています。大きく分けると、次の3つがあります。
・一般貨物自動車運送事業
・特定貨物自動車運送事業
・貨物軽自動車運送事業
それぞれ、運送する荷主の範囲や使用する車両の種類などによって区分されています。
一般貨物自動車運送事業とは、トラックやダンプなどの貨物自動車を使用して、不特定多数の荷主から運送の依頼を受け、荷物を運び、その対価として運賃を受け取る事業のことをいいます。たとえば、さまざまな荷主から依頼を受けて荷物を配送する運送会社や物流会社などが、この一般貨物自動車運送事業に該当します。多くのトラック運送会社がこの形態で事業を行っており、物流を支える最も一般的な運送事業といえます。
これに対して、特定貨物自動車運送事業とは、特定の一つの荷主からのみ運送の依頼を受けて荷物を運ぶ事業のことをいいます。一般貨物自動車運送事業が、不特定多数の荷主から依頼を受けて運送を行うのに対し、特定貨物自動車運送事業は、あらかじめ決まった特定の荷主の貨物だけを運送する点が特徴です。
軽自動車を使用して荷物を運ぶ場合は、「貨物軽自動車運送事業」に該当します。軽トラックや軽バンなどの軽自動車を使用して、不特定多数の荷主から依頼を受けて荷物を運ぶ事業です。近年では、宅配や小口配送などの分野で広く利用されており、個人事業主による配送業務などでも多く見られる運送形態となっています。
このように、貨物自動車運送事業にはいくつかの種類があり、運送の方法や対象となる荷主、使用する車両などによって該当する事業区分が異なります。これから運送事業を始めようとする場合や、新たに許可を検討している場合には、まず自社の事業形態がどの区分に該当するのかを確認しておくことが大切です。そのうえで、必要となる許可や届出の内容を整理していくことになります。
これまで一般貨物自動車運送事業の許可は、一度取得すれば基本的に更新の手続きを行う必要がない「無期限許可制」が採用されてきました。運送事業の許可を取得した後、重大な法令違反や事故などがない限り、許可の効力はそのまま継続されます。そのため、多くの事業者は一度許可を取得すれば、特別な手続きを行うことなく長期間にわたって事業を続けることができました。
この無期限許可制は、長年にわたり運送業界で運用されてきました。しかし近年、物流業界を取り巻く環境は大きく変化しています。ドライバー不足や労働環境の問題、業界全体の健全化を求める声の高まりなどを背景に、現在の制度について見直しが進められることになりました。こうした流れの中で、一般貨物自動車運送事業の許可制度についても、新たな仕組みの導入が検討されています。
現在、国土交通省では、一般貨物自動車運送事業の許可について、5年ごとの更新制度を導入する方針が示されています。この制度が導入されると、運送事業者は5年ごとに許可の更新申請を行う必要があり、事業の運営状況について審査を受けることになります。その結果によっては、更新が認められず、許可の効力を失う可能性もあるとされています。
これまでの制度では、一般貨物自動車運送事業の許可は、一度取得すれば重大な違反や事故などがない限り、更新手続きを行うことなく事業を続けることができました。しかし今後は、許可の更新制度が導入されることで、適正な事業運営が行われているかどうかを定期的に確認する仕組みへと変わっていくと考えられています。
更新制度が導入されると、運送事業者の事業の運営状況について、さまざまな点が確認されると考えられています。たとえば、実際に運送事業として営業が行われているかどうかといった営業の実態のほか、財務状況に問題がないか、運行管理体制がきちんと整えられているかなどが確認される可能性があります。また、ドライバーの労働環境や労務管理の状況などについても、事業者として適切な運営が行われているかどうかが見られると考えられています。
許可の更新制度が検討されている背景には、運送業界が抱えるいくつかの課題があります。これまでの無期限許可制では、運送事業の許可を取得したあと、長い間事業の状況が確認されないケースもありました。そのため、実際には営業を行っていない事業者や、許可を他人に使わせる いわゆる「名義貸し」といった問題が指摘されることもあります。こうした状況は、運送業界全体の信頼性や公正な競争にも影響する可能性があるため、制度の見直しが検討されるようになりました。
また近年では、ドライバー不足や労働環境の問題など、物流業界を取り巻く状況も大きく変化しています。安定した物流を維持していくためには、運送事業者が適切な体制のもとで事業を行っていることが重要です。そのため、運送事業者が法令を守りながら適切に事業を行っているかどうかを、一定期間ごとに確認する仕組みとして更新制度が検討されています。
今回の制度見直しは、貨物自動車運送事業法の改正と、新たに整備される関連法によって進められています。これらは一般的に「トラック適正化二法」と呼ばれており、運送業界全体のルールを見直す制度改革として進められています。
今回の制度改革では、許可の更新制度の導入だけでなく、業界の健全な運営を確保するためのさまざまな見直しが検討されています。たとえば、事業に必要な費用を反映した「適正原価」を下回る運賃の抑制や、運送業務の過度な再委託を防ぐ仕組みの整備、さらに無許可営業とされる「白トラ」への取締りの強化などが挙げられています。
このような制度改革により、運送業界ではこれまで以上に法令を守った適切な事業運営が求められるようになります。そのため今後は、許可を取得することだけでなく、許可取得後の体制づくりや日々の運営も重要になっていくと考えられています。
5年ごとの更新制度が導入されると、許可を取得した後の事業運営も、これまで以上に重要になります。更新の際には、運行管理体制の整備状況や労務管理、社会保険の加入状況など、事業者として適切な運営が行われているかが確認される可能性があります。そのため、許可を取得した後も、日頃から法令を守り、適切な事業運営体制を整えておくことが大切です。制度の具体的な内容は、今後の政省令や通達によって明らかになっていくと考えられますが、今後は「許可を取得して終わり」ではなく、継続的な管理が求められる制度へと変わっていくと見込まれています。
当事務所では、一般貨物自動車運送事業の許可申請に関する手続きはもちろん、今後想定される許可更新への対応についても、運送事業者様をサポートしております。制度改正に伴う対応のご相談や、更新審査を見据えた事業体制の整備についてのご相談などにも対応しております。一般貨物自動車運送事業の許可についてご不明な点やお悩みがございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
まずは現在の状況をお伺いします。「この状態で申請できるのか」といった段階でも問題ありません。ご不明な点も丁寧にご説明いたします。
営業所や車庫の場所、車両、人員、資金など、許可に必要な要件を確認していきます。特に、都市計画法や農地法については重要なポイントとなるため、事前にしっかり調査を行います。
申請に必要な書類を作成・収集し、運輸支局へ提出します。提出後は、審査が進められます。
申請が受理されると、法令試験の案内が届きます。個人の場合は申請者本人、法人の場合は運送事業に専従する役員が受験し、合格する必要があります。(通常は指定された日時に受験します)
申請後、通常3〜4か月ほどで審査が行われ、許可の通知が届きます。
許可後は、営業を開始するためにいくつかの手続きが必要になります。
・運賃・料金の届出
・運行管理者・整備管理者の選任届
・車両の登録(営業ナンバーへの変更)
・社会保険関係の手続き
・各種帳票の整備 など
これらの手続きを行ったうえで、運輸開始届を提出し、営業開始となります。
続きの流れをご覧いただくと分かるとおり、許可申請は事前の確認から準備、申請後の対応まで、いくつかの段階を踏んで進めていく必要があります。「この内容で進めて大丈夫だろうか」と少しでも迷われる場合は、早めに確認しておくことで、スムーズに進めることができます。当事務所では、現在の状況をお伺いしたうえで、許可取得の可能性や進め方を分かりやすくご案内しております。まずは状況の確認だけでも大丈夫です。どうぞお気軽にご相談ください。
一般貨物自動車運送事業の許可を取得するためには、法律で定められた要件を満たす必要があります。主な要件は次の3つです。「人的要件」「物的要件」「財産的要件」。これらすべての要件を満たしていることが、許可取得の前提となります。
まず、申請者本人や会社の役員が、法律で定められた欠格要件に該当していないことが必要です。主な内容は次のとおりです。
刑事処分を受けてから5年を経過していない場合
1年以上の拘禁刑(懲役など)に処せられた場合、その刑の執行が終わった日、または執行を受けることがなくなった日から5年を経過していない場合は、許可を受けることができません。
過去に運送事業の許可取消処分を受けている場合
一般貨物自動車運送事業または特定貨物自動車運送事業の許可取消処分を受けてから5年を経過していない場合は、許可を受けることができません。
また、許可取消処分を受けた法人の役員であった場合も、一定期間は同様に許可を受けることができません。
親会社など密接な関係にある会社が取消処分を受けている場合
申請者と密接な関係にある会社(親会社や実質的に経営を支配している会社など)が運送事業の許可取消処分を受け、その取消しの日から5年を経過していない場合も、許可を受けることができません。
許可取消しを避けるために事業廃止をした場合
許可取消処分に関する聴聞の通知を受けた後、処分決定前に事業廃止の届出を行った場合には、その届出から5年間は新たに許可を受けることができません。
立入検査後に事業廃止をした場合
国土交通省による立入検査が行われた後、処分の判断が行われるまでの間に事業廃止の届出を行った場合も、届出から5年間は許可を受けることができません。
廃止届を出した法人の役員であった場合
取消処分に関連して事業廃止の届出を行った法人について、その届出前60日以内に役員であった者も、届出から5年間は許可を受けることができません。
未成年者の場合
申請者が未成年者である場合、法定代理人(親など)が欠格要件に該当しているときは、許可を受けることができません。
法人の役員が欠格要件に該当する場合
申請者が法人の場合、会社の役員の中に欠格要件に該当する者がいるときは、許可を受けることができません。
許可を取得するためには、これらの欠格要件に該当していないことに加えて、運送事業を適切に運営するための人員体制を整えておくことも必要になります。そこで次に、欠格要件以外の人的要件についてご説明します。
一般貨物自動車運送事業では、運送事業に専従する常勤役員のうち1名が、運輸局で実施される法令試験に合格する必要があります。個人事業の場合は、申請者本人が対象となります。
不合格の場合は再試験を受けることができます
1回目の試験で不合格となった場合でも、再試験を受けることが可能です。ただし、2回連続で不合格となった場合には、許可申請が却下となる可能性があります。
運送事業では、安全な運行管理を行うために「運行管理者」を配置する必要があります。運行管理者は営業所ごとに配置する必要があり、保有する車両の台数によって必要人数が定められています。
運行管理者の必要人数
営業所ごとに、「車両29両までは1名以上」「以降は30両ごとに1名追加」という基準で配置する必要があります。
運行管理者になるための要件
最も一般的なのは、運行管理者試験に合格する方法です。この試験は、運行管理者センターが実施しており、通常は年2回行われています。ただし、試験を受験するためには、一定の受験資格を満たしている必要があります。
運行管理者試験の受験資格
運行管理者試験を受験するためには、次のいずれかの条件を満たしている必要があります。
・運行管理に関して1年以上の実務経験があること
・自動車事故対策機構が実施する基礎講習を修了していること
そのため、まったくの未経験者がすぐに受験できる試験ではありません。
実務経験によって資格を得る方法
運行管理者試験を受験しない場合には、実務経験によって資格を取得する方法もあります。この場合は、次の条件を満たす必要があります。
・運行管理に関する5年以上の実務経験があること
・定められた講習を5回以上受講していること
整備管理者とは、事業用自動車の点検や整備を行い、安全に運行できる状態を保つための管理者です。一般貨物自動車運送事業を行う場合は、営業所ごとに整備管理者を選任する必要があります。整備管理者には必要な権限を与え、車両の点検や整備、車庫の管理などを行わせることになります。
整備管理者の必要人数
整備管理者は、営業所ごとに1名以上選任する必要があります。運行管理者のように、車両台数によって人数が決まっているわけではありません。ただし、車両台数が多い場合には、1人では業務に十分対応できないこともあります。そのため、事業規模に応じて複数の整備管理者を配置したり、整備管理補助者を置くなどの体制を整えることが望ましいとされています。なお、整備業務を適切に行う体制が整っていれば、運行管理者と整備管理者を兼任することも可能です。
整備管理者になるための要件
整備管理者として選任するためには、次のいずれかの要件を満たしている必要があります。
・1級自動車整備士
・2級自動車整備士
・3級自動車整備士
実務経験によって選任する場合
自動車整備士の資格がない場合でも、実務経験によって整備管理者になることができます。この場合は、次の条件を満たす必要があります。
・自動車の点検・整備または整備管理について2年以上の実務経験があること
・地方運輸支局が実施する整備管理者選任前研修を修了していること
一般貨物自動車運送事業では、営業所ごとに事業用車両を5台以上用意することが必要とされており、それに対応する運転者も5名以上確保しておくことが求められます。
使用する車両は、自動車検査証の用途が「貨物」となっている必要があります。
運送事業を行うためには、事業の拠点となる営業所を設ける必要があります。営業所は、都市計画法や建築基準法、農地法などの関係法令に適合している建物であることが求められます。また、事業を運営するために適切な規模の広さがあることも必要です。
営業所を借りる場合
建物を賃借して営業所として使用する場合には、通常2年以上の使用権限が確保されていることが必要になります。
運転者が休憩や睡眠をとるための施設を設ける必要があります。長距離運行などで睡眠を伴う場合には、運転者1人あたり2.5平方メートル以上の広さを確保することが求められます。
施設を借りる場合
こちらも賃借物件の場合には、2年以上の使用権限が必要になります。
事業用車両を保管するための車庫を確保する必要があります。車庫は営業所に併設することが原則ですが、併設できない場合には一定の距離以内に設置することが認められています。地方運輸局が管轄する地域によって距離の基準は異なりますが、例えば都市部では2km以内、その他の地域では10km以内などの基準が設けられている場合があります。
車庫の広さ
車庫には、保有するすべての事業用車両が収容できる広さを確保する必要があります。
また、車両同士の間隔を適切に確保し、道路交通の安全に支障がない場所であることも求められます。
車庫や営業所の場所に関する注意点
営業所や車庫の場所については、都市計画法や農地法などの法令に適合していることも重要なポイントになります。これらの法令に適合していない場合には、運送事業の許可が認められないこともあるため、事前に確認しておくことが大切です。
一般貨物自動車運送事業では、営業所ごとに事業用車両を5台以上用意する必要があります。これらの車両は、実際に運送事業で使用するものを確保しておくことが前提となります。
一般貨物自動車運送事業では、営業所や車庫の場所も重要なポイントになります。特に、都市計画法や農地法に適合しているかどうかは、事前にしっかり確認しておきたいところです。建設業許可や産業廃棄物収集運搬業では認められるケースもありますが、貨物自動車運送事業では、これらの法令に適合していない物件は原則として使用することができません。そのため、営業所や車庫として使用する土地が、
・都市計画法
・農地法
などの規制に合っているかどうかを、あらかじめ確認しておくことが大切です。なお、これらの判断は少し分かりにくい部分もあります。当事務所では、静岡県西部地域における都市計画法の建築許可、農地法の転用許可等の手続きでの経験を活かし、事前の調査や行政への確認も含めてサポートしております。場所に不安がある場合でも、確認しながら進めていくことができますので、ご安心ください。
運送事業を安定して続けていくためには、あらかじめ必要な資金を準備しておく必要があります。この資金(所要資金)には、たとえば人件費や燃料費、修繕費、タイヤ代などの運転資金のほか、自動車税や保険料、施設にかかる費用などが含まれます。なお、運転資金については、原則として6か月分を見込んで考えることになります。
算出した所要資金は、申請のときだけ用意すればよいわけではありません。許可が下りるまでの間、継続して確保していることが求められます。この確認のために、預貯金の残高証明書を提出します。残高証明書は、通常次の2回提出します。
・申請時
・許可処分前
万が一の事故に備えて、十分な補償ができる保険加入の体制を整えておくことも大切です。
なお、危険物の輸送などを行う場合はより高い補償内容が求められることもあります。
5年ごとの更新制度が導入されると、許可を取得したあとも、日々の管理がこれまで以上に大切になってきます。更新の際には、運行管理体制や労務環境、社会保険の状況などが確認されると考えられており、普段から無理のない形で体制を整えておくことが安心につながります。制度の詳しい内容は今後明らかになっていきますが、「取得して終わりではない制度」になるという点は押さえておきたいところです。なお、同じ旅客運送事業である貸切バス事業では既に更新制度が導入されています。貨物運送事業についても、その仕組みが参考になると考えられています。
現在の状況をお伺いしながら、許可取得が可能かどうかも含めて分かりやすくご案内いたします。まずはお気軽にご相談ください。