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職業インタビュー#007 「須山建設(株)」代表取締役社長 須山 雄造

世界で戦う企業が群雄する地、浜松のまちづくりの専門家

建設業は、不人気。そんなイメージは本当に正しいのだろうか?
IT
エンジニアとしてキャリアをスタートし、その後、地元・浜松で建設業に転じた一人の経営者が語るのは、「誠実にベストを尽くす」というシンプルで揺るがない仕事観だった。

 

キャリア選択、業界のリアル、業界の今後。そして、浜松支えるまちづくりの専門家。建設業の本質と、キャリア選択のためのヒントを探る。

 

【第1章:キャリア選択と歩み】

 

「建設業のレールに乗ってしまわないための学生時代」

 

――小さい頃から建設業界で働こうと思っていましたか?

小さい頃から、父や祖父が須山建設で働いており、この敷地内に住んでいたこともあり、建設業に関心はありました。一方で、何も考えずにいると建設業のレールに乗ってしまいそうだという抵抗感もかなりありました。そのため学生時代は、意識的に建設業とは距離のある分野に自分のエネルギーを使っていました。なぜなら、自分が本当に向いているものや、やりたいことを見つけたいという思いがあったからです。建設業はあまりにも距離が近すぎて、それが本当に自分のやりたいことなのか分からなかったため、まずは建設業以外の中でそれを探してみようと考えていました。

大学時代は勉強に加えて、弓術部にも所属していました。また、浜松市の学生寮で生活していたことも印象に残っています。当時浜松市が東京に持っていた寮で、浜松の出身者が住むことができ、朝晩の食事付きで38千円ほどと非常に安い環境でした。ただし4人部屋で、9畳に4人という環境はかなり大変でした。それでも東京の一等地に住めるというメリットがあり、3年間その寮で生活しました。寮生活は一人暮らしとは違い、共同生活ならではの役割や経験がありました。結果として、寮生活、部活動、そして勉強に取り組んだ4年間でした。大学では教育心理学を専攻しました。これは純粋にアカデミックな関心からです。今で言う行動経済学的な関心や、人間の意思決定の仕組みに興味を持ちました。もともとは経済学部に所属していましたが、人間の意思決定は経済学が仮定するような合理的なものだけでは説明できないと感じました。もっと別の原理で意思決定しているのではないかと考え、そのメカニズムを研究したいと思いました。当時は行動経済学がまだ心理学の分野として扱われていたため途中で学部を変更して、心理学を学びました。そして、大学院への進学も考えていました。実際に勉強してみて良かったし、楽しい時間ではあったのですが、実際に研究を進める中で、本当に学者として人類の知に貢献するレベルの成果を出すには、極めて高い知的能力が求められると実感しました。研究室の同期と比べても、自分より優秀な人が何人もいると感じ、純粋な頭の良さ競争で、「この道に自分の適性があるのか」と疑問を持つようになりました。そのため大学院には進まず、就職を選択し、最初はITエンジニアとして働き始めました。心理学とITエンジニアは相性が良く、研究室の先輩にもITエンジニアとして働いている人が多かったため、その姿を見て面白そうだと感じ、最初の就職先として選びました。心理学は統計を多く扱う分野であり、パソコンを使ったシミュレーションもたくさん行います。そのため、文系の中では比較的ITに強くなれる分野です。他学部と比べても、学生時代にパソコンに触れる機会が多く、それがITエンジニアという職種につながった大きな理由です。

 

※行動経済学:心理学の知見を用いて「人間は必ずしも合理的ではない」という前提に基づき、不合理な経済行動(なぜ損をする選択をするのか等)を分析する経済学の分野。

 

 

 


 

ITエンジニアで培った自信と後悔しないために」

 

――建設業界で働き始めたきっかけは何ですか?

ITエンジニアの会社に3年半在籍していましたが、その後のキャリアを考えるタイミングがありました。ITエンジニアとして3年ほど働くと、研修期間のような初心者の段階を終え、中堅手前に差しかかります。その時に、このまま東京でITエンジニアとして働き続けるかどうかを考えました。実家には須山建設があり、父が社長、祖父が相談役という状況でした。もし戻るなら、40歳などになってからではなく、早いタイミングの方が良いと考えました。もし建設業が自分に合わないと感じた場合でも、ITエンジニアは比較的転職しやすい職種であり、3年半の実績と資格があれば、再びITエンジニアとして働けるという自信がありました。20代であれば、26歳で戻り、2年ほど経験してから再びITエンジニアに戻ることも十分可能だと考えました。また、一度も戻らずにいると「戻っておけばよかった」と後悔するのではないかという思いもありました。東京でITエンジニアとして成長していく中で、その迷いを抱え続けるのは避けたいと考え、一度戻って考えてみることにしました。ITエンジニアとして働いた3年間で、自分の力量で稼ぎ、生活するという自信を得たこともあり、自分の意思で戻るという選択ができたと感じています。

 


 

IT業界と建設業界の成熟度とスケールの違い」

 

――セカンドキャリアとしての建設業はどうでしたか?

まず建設業界で働いてみて、技術や知識の成熟度の高さに驚きました。IT業界は、ここ数十年で発達したこともあり、成熟度は建設業に比べ未熟ですが、建設業は技術体系が非常に成熟していると感じました。例えば建設業の積算では、1億円の仕事であれば、適切に進めればほぼその金額で着地します。一方でIT業界では、1億円の見積もりをそのまま1億円で収めることは非常に難しく、大きくブレることも少なくありません。本当の達人以外はそんな綺麗には収まらない。その点、建設業では複数の大規模プロジェクトでも高い精度で着地しており、その安定性に驚きました。また、プロジェクトの規模や責任の大きさにも違いを感じました。IT業界では1億円規模のプロジェクトを任されるには10年程度の経験が必要なことが多いですが、建設業では3年目程度でもその規模の責任者を任されることがあります。仕事のスケールも大きく、求められるレベルも高いと感じました。そういった部分も含め建設業はすごいなと思っていました。働き方については、建設業も労働時間は長いですが、当時のIT業界も同様に長時間労働であり、夜遅くまで働くことや、ゴールデンウィークやお盆などの休暇期間に仕事が入ることもありました。そのため、労働環境の面で建設業が特別に厳しいという印象はありませんでした。

 


 

【第2章:まちをつくる仕事のリアル】

 

IT業界と建設業界の類似点と建設業の営業」

 

――前職が活かされた経験はありますか?

ITエンジニア時代は、とにかく大量のドキュメントを書いていました。ITの仕事は膨大な書類業務であり、矛盾のない文書を作ることが重要な役割です。お客様のニーズをシステムに落とし込むためには、その要望を矛盾のない形で文章にまとめる必要があります。そのドキュメントが正確であれば、システムへの落とし込み自体はそれほど難しくありませんが、お客様のニーズを矛盾のないドキュメントに落とし込むことが難しい部分でした。建設業でも同様に多くの書類業務があります。そのため、やっていることはとても近いです。論理的で筋の通った日本語のドキュメントを読み書きする力は、直接的に役立ったと思います。また、人よりはパソコンに対する理解があったことも強みでした。大差ではありませんが、コンピュータの知識があることは建設業界で働く上で、アドバンテージになったと感じています。須山建設入社当初は営業職に配属されました。ITエンジニア時代には営業の経験がなかったため、一からのスタートでした。当時のマンション営業は、アポイントなしで一軒一軒訪問するスタイルでした。飛び込み営業でマンション建設の契約を取るというのは簡単ではありませんが、当時はそれが成立していた時代でもありました。もちろん、「建てませんか」と言われてすぐに1億円規模のマンション建設を決めることは現実的ではありません。重要なのは、土地の有効活用について相談できる相手として認識してもらうことです。そのため、長い時間をかけて信頼関係を築いていきます。1年、2年、3年と時間が経つにつれて、お客様の状況が変化し、土地活用の必要性が生まれたタイミングで相談をいただけるようになります。こうした関係を何十人と築いていくことで、その中から実際の案件につながることがあります。飛び込み営業で関係を築いた相手から、1億円、2億円規模の相談をいただけるという経験は、大きな発見であり、非常に嬉しいものでした。

 

※ドキュメント:文字や図で情報を記録した「文書」「書類」「記録」

 


 

「仕事でまちの姿が変わっていく手ごたえ」

 

ーー建設業のやりがいや面白みは何ですか?

いくつかありますが、私は営業や企画の立場で仕事をしているため、施工に直接関わることはありません。施工や設計に携わる人は、自分が手がけたものが形として残るため、より手応えややりがいを実感しやすいと思いますし、それなりの喜びもあると思います。一方で、営業でもプロジェクトのキーマンとして関わり、手応えや、やりがいを感じられる経験も多くあります。例えば、十数年前に浜松市のゴミ最終処分場をメガソーラーに転用するプロジェクトがありました。西インターと観山寺インターの間にある呉松町の案件です。このプロジェクトでは、自分が中心となって提案をまとめ、浜松市から土地を借りて須山建設がメガソーラーを設置することになりました。当時はメガソーラー事業が立ち上がり始めた時期で、多くの企業が参入しており、競争も激しい状況でした。その中で、きちんとした提案書を作ることができ、その競争にも勝つことができました。実際にメガソーラーの運営が始まってからも、計画通り、あるいはそれ以上の収益を上げることができ、事業としても成功しました。浜松は太陽光発電の導入が進んでいる地域の一つですが、このプロジェクトはその先駆けの一つでした。これをきっかけに、多くのメガソーラーの案件が広がり、浜松全体に波及していきました。自分が関わった企画が、まちの方向性に影響を与え、良い変化を生み出していく。このような波及効果を実感できることは、大きなやりがいです。まさにこれが仕事で、まちの姿が変わっていく手応えです。こうした経験は頻繁にあるわけではなく、数年に一度ですが、そのたびに大きな喜びを感じています。


 

「建設業の本質――提案。」

 

――建設業の企画や営業での面白み・やりがい

建設業は必ず発注者が存在するビジネスです。その方が実現したいものを、建物や社会インフラとして形にしてお届けします。そのため、まずは発注者に良い提案をし、納得してお金を出していただかなければ、設計や施工は成り立ちません。例えばPFIのような官民連携公共事業では、市の要望に対して最適な提案を行い、その中で選ばれる必要があります。提案の質が仕事の獲得に直結します。この「提案する」というフェーズは、建設業の中でも、お客様の要望を目に見えるようにするといった意味で非常に本質的な部分だと感じています。施工や設計と提案、いわゆる営業は、いわば両輪の関係で、どちらか一方だけでは成り立たず、両方が機能することで初めて仕事になります。それは業界の中にいると当たり前に感じることですが、提案活動は非常に重要だと考えています。

 

PFIPrivate Finance Initiative):公共施設の設計、建設、運営、維持管理に民間の資金とノウハウ(経営・技術能力)を活用し、効率的かつ高品質な公共サービスを提供・コスト削減を目指す事業手法

 


 

【第3章:浜松で活躍するプロ集団”須山建設”】

 

「 浜松という地。」

 

――浜松にこだわる理由は何ですか?

浜松で仕事を続けているのは、これまでずっとこの地域で事業を行ってきたからという理由もあります。それに加えて、浜松というまち自体の特徴も大きいと思います。浜松には、ヤマハや本田技研工業、スズキなど、世界で戦うメーカーが何社も存在しています。こうした世界水準で活動している企業と日常的に仕事ができる環境は、非常に貴重で特殊だと思います。他地域に比べ、これだけ多様で高いレベルのお客様が揃っている地域は、非常に珍しいと感じています。他地域と比べ、こうした世界で活動している多様で高水準の企業と日常的に仕事ができる環境は、非常に貴重で珍しいと思います。一つの大企業が地域の経済を支える“企業城下町“型の地方都市も多いですが、浜松はグローバルな水準で仕事をしている企業が数十社あり、これはすごいことだと思います。そのため、常に高い水準で仕事に向き合うことが求められ、このグローバルな水準で仕事をしている企業の方々と課題解決に取り組めることは、大きなやりがいにつながっています。他地域への進出については、現時点では優先度は高くありません。浜松だけでも、まだまだ取り組める仕事やまだまだ提案できていない地域のお客様が多く存在しています。まずはこの地域でやれることをしっかりやり切ることが重要だと考えています。将来的にすべてやり切ったと感じるタイミングが来れば検討するかもしれませんが、現状ではその段階には到底至っていません。

 


 

「誠実。」

 

――創業120年で引き継がれているものは何ですか?

須山建設の社是の中に「誠実を旨とし、仕事に尽力すべし」という言葉があります。この「誠実」という考え方は、とても大事だと思っています。誠実とは、お客様の期待に対してベストを尽くすことだと私は捉えています。お客様は基本的に建築の専門家ではなく、私たちは専門家です。関係性としては、医者と患者に近い部分があります。そのため、もしこちらが不誠実ならば、何でもできてしまいます。例えば、特定の選択肢を勧めれば、お客様は判断が難しいため、そのまま受け入れてしまう可能性があります。そうなると、お客様は疑心暗鬼となり、価格で比較するしかできなくなり、複数社から見積もりを取るという不信の構造が生まれてしまいます。それでは、お互いにとって良い関係とは言えません。だからこそ、選択肢が複数ある場合には、必ずお客様にとってメリットのあるものを提案することが重要です。その姿勢が伝われば、「須山建設は最適な提案をしてくれる」という信頼につながり、複数社を比較検討しなくても任せてもらえる関係が築けます。こうした関係性をつくることが、理想の仕事のあり方だと考えています。今お話しした内容は、あくまで私なりの解釈ですが、私自身そう感じていますし、代々この社是が受け継がれてきたことには何かしらの意味があると思います。

 

※社是:企業が経営の指針や最も大切にする価値観を、短い言葉で表した「会社としての正しいあり方」のこと

 


 

「“まちづくりの専門家”」

 

――須山建設にはどんな方が多いですか?

静岡県西部の出身者が多いのは事実ですが、最近は少しずつエリアが広がってきています。愛知県や静岡市、伊豆、山梨など、静岡県西部と直接縁がない人も増えてきました。そうした人たちが、会社の面白さや魅力を感じ、門を叩いてくれる若者が増えたことは、とても嬉しいです。うちの会社は「まちづくりの専門家集団」という言い方しており、グループ会社も含めて様々な分野の専門性を持っています。構造設計、意匠設計、土木、建築、専門工事など、それぞれの領域で自己研磨し、専門家として成長していくことを目指しています。そのため、「まちづくりに関わる専門家になりたい」「幅広い選択肢の中で自分の専門性を見つけたい」と考えている人にはうってつけです。大手ゼネコンであれば同様の環境があるかもしれませんが、地場のゼネコンでここまで幅広いキャリアパスを描ける会社はそう多くありません。その点が魅力になっているのではないかと思います。また、自己申告制度もあり、例えば「構造設計をやりたい」といった希望を継続して伝え、必要な資格を取得し、現在のポジションで真剣に取り組んでいるといった条件を満たせば、希望の分野に進める可能性は高いです。本人が本当にやりたい分野で働いてもらうのが会社にとっても良いと思います。

 

※意匠設計:建築物の「顔」となる外観、内観、空間デザインを計画し、機能性と美しさを両立させる「設計の司令塔」

 


 

「 建設業・須山建設という働き方」

 

建設業がつまらなくて辞めるという人は、あまりいないと思います。なぜなら、本質的に面白い仕事だからです。辞める理由として多いのは、「仕事の難易度が高くてついていけない」、あるいは「休みが少ない」といったことです。「つまらないから辞める」というケースはほとんどないと思います。休みについては、この45年でかなり改善されてきました。まだまだ製造業や公務員と比べると差はあるかもしれませんが、「休みが少ないから辞める」という退社理由はほぼなくなっています。

一方で、「レベルが高すぎてついていけない」という課題は完全にはなくなりません。そのため、最初の教育が非常に重要だと考えています。数年前までは研修期間は入社後2ヶ月間でしたが、現在は2倍の4ヶ月間を研修期間としており、この期間は現場に配属せず、基礎知識の習得に集中します。特に7月に実施される1級施工管理技士補試験に合格してもらうことを大事にしています。資格を取得することで自信がつきますし、その勉強内容自体が現場で必要な知識につながります。試験合格のような一定レベルの知識を持った状態で現場に入ることで、先輩も負担が軽減されます。お互いWin-Winの関係になることができるので、最初の研修はとても丁寧に行なっています。このように初期教育に力を入れた結果、入社3年以内に離職するケースはほとんどなくなりました。

 


 

須山建設の社内風土」 

 

――社内風土はどのような感じですか?

社内はあまり競争的ではない環境だと思います。社員同士を競わせるような仕組みはほとんどありません。もちろん昇進などの選抜はありますが、それは30代後半以降の話であって、入社後15年ほどはあまりそういったことを意識する必要はありません。その間は、与えられた仕事にしっかり取り組めば評価される環境です。そのため、社内の雰囲気は比較的穏やかで、ギスギスした空気は少ないと感じています。給与についても大きな差をつけていなく、「みんなで稼いで、みんなで平等に分ける」という考え方がベースにあります。もちろんそれに良し悪しはありますが、結果として良い雰囲気につながっていると感じています。一方で、任される責任は決して軽くありません。各自が自分の役割を果たすために努力する必要がありますが、上から強くプレッシャーをかけられるような環境ではありません。安心して働きながらも、しっかりと責任を果たしていく。そうしたバランスの取れた職場だと思います。

 


 

11社が魅力的な会社に」

 

――人口が減少していく中でどうのように建設業を盛り上げていけば良いと思いますか?

基本的には、1社1社が「働く側から見て魅力的な会社」を目指していくしかないと思います。仕事のやりがい、職場の雰囲気、休日、給与など、魅力的な仕事を構成する要素はいくつかあります。それらを総合的に整え、「ここで働きたい」と思ってもらえる会社を増やしていくことが重要です。須山建設は須山建設として、他の建設会社はそれぞれの形で努力していく。専門工事業も含めて、各社が魅力的な職場づくりに取り組めば、結果として人材不足は解消に向かうのではないかと考えています。また、建設業はAIに代替されにくいという点で大きなアドバンテージがあると思います。将来的に仕事がなくなるのではないかという不安とは比較的無縁の分野です。そのため、自分たちの職場をより魅力的にしていくことに集中すれば、将来性は十分にあると感じています。実際に、採用がうまくいっている会社も存在します。業界全体が厳しいというよりも、「人が集まる会社」と「そうでない会社」に分かれている印象です。元請企業だけでなく、サブコンや専門工事業でも同様の傾向が見られます。なので、「建設業全体に人が来ていない」というよりも、企業ごとの差が大きいと感じます。また、以前は建築や土木を学んでも他業界へ進む人が多くいましたが、現在は学んだ分野にそのまま進む人が増えてきています。例えば、私たちの時代は建設学科を出ていても、建築には進まずIT業界などに行ってしまう人も多くいました。給与水準の改善や業界の評価の変化もあり、20年前と比べると状況は大きく良くなっています。当時は建設業に対して厳しい社会的な風潮もありましたが、現在は国土強靭化などの流れもあり、評価は改善されています。こうした変化をしっかり発信していくことも重要だと感じています。うちの会社も採用がすごくうまくいっているわけではありませんが、会社のコンセプトを丁寧に伝えれば、想いは届くと感じています。人材不足を業界の問題として捉えるのではなく、自社の課題として向き合うことが大切だと思います。

 

※サブコン:ゼネコン(元請)から工事の一部(主に電気・空調・衛生・消防などの設備工事)を請け負う「専門工事業者」。

 


 

「黄金比は8:2!?」

 

――女性社員も増加していますか?

土木はまだ少ないですが、建築では毎年女性が入社しています。現在、一番上の世代で78年目くらいで、その下の世代にはほぼ毎年いる状況なので、かなり増えてきたと感じています。女性ならではの視点はやはり重要で、そうした意見をもらうことで会社としての引き出しが増え、できることの幅が広がっているのは間違いありません。一方で、現場によっては男性の方が向いている場面も多くあります。特に土木では夜間作業などもあり、現実的に男性の方が適しているケースもあります。例えば監督が10人いる中で、2人ほど女性がいる状態であれば、まったく問題なく回ると考えています。むしろ、すべてが男性の組織よりも、一定数女性がいる方が組織としての強さは増すと思います。これは他の業種でも同じで、例えば客室乗務員や看護師などは女性が多い職場ですが、一定数の男性がいることで力仕事などの面でバランスが取れていると思います。一方、建設業は、全体としては男性が多い業界ではありますが、2割程度女性がいることで、より良い組織になるのではないかと考えています。現状ではまだそこまでの比率には達していないため、今後はさらに女性の採用を進めていきたいと思っています。2割程度の女性比率であれば、育児休暇や産休・育休なども無理なく回せる体制がつくれるはずです。半数近くが女性になると運営上の難しさも出てきてしまうかもしれませんが、82くらいのバランスであれば、女性ならではの視点等を発揮してもらいながら、働きやすい環境も提供できると考えています。それが一つの理想形ではないか?と個人的には考えています。

 


 

「浜松という地で専門家を育て続ける」

 

――須山建設の未来のミッションは何ですか?

建設業において、設計や施工、管理、営業、専門工事などの専門家の存在は必要不可欠です。これは社内の人間だけでなく、お客様も理解しています。したがって、こうした専門家を継続的に育てていくことが、会社としての重要なミッションです。浜松という地域において、まちづくりの専門家を育て続ける組織であり続けること。それができれば、仕事は自然と集まってくると考えています。入社した人が5年、10年と経験を積み、プロとして成長し、さらに次の世代を育てていく。この循環が続くことで、会社は地域にとって欠かせない存在であり続けることができます。

当社から社員が独立するケースは、あまり多くありません。近年は特に、独立するための初期投資が大きくなっています。例えば設計分野では、高性能なパソコンやBIMソフトなどが必要で、初期投資だけで数百万円規模になることもあります。また、現場監督として独立しても、個人で営業から施工を完結させるのは難しく、結局はどこかの建設会社の工事にフリーランスの現場監督として案件に関わる形になることが多いです。そのため、個人で活動するよりも、組織の中で力を発揮した方が価値を出しやすいケースが多いと考えています。会社としては、「独立した方が良い」と思わないような魅力的な職場環境をつくることが重要だと思います。給与や働く環境、雰囲気などを含めて、魅力的な職場を提供し続けることが求められます。

 


 

【第4章:数百人を束ねる価値観と人生観】

 

「綺麗な履歴書じゃなくても良い」

 

 ――若い頃の自分へのアドバイスは何ですか?

若い頃の自分にアドバイスをするなら、「もう少し寄り道をしても良かったのでは?」と言いたいです。大学卒業後はそのままITエンジニアとして3年半働いた後、すぐに須山建設に入りました。それが普通のなのかもしれませんが、20代の1年や2年で寄り道をしたとしても、46歳にもなってみれば大きな差にはなりません。むしろ興味のあることに挑戦したり、やってみたいことに時間を使ったりすることは、後から振り返ると大きな意味を持つと思います。たとえ失敗しても、やってみて違うと感じても、それは経験として財産になります。なので履歴書の見栄えにこだわりすぎる必要はなく、最短距離を進まなくても寄り道をしても良いかと思います。もし戻れるなら、大学院に進学して修士を取りたいですね。当時は修士を取ってもITエンジニアになるのに大きな影響はなく、「どうせ学者にならないのだったらその2年間がもったいない」、と就職を選択しましたが、純粋に学びたい気持ちを優先しても良かったと感じています。元々、教育心理学を勉強したくて入学したので、もう2年ぐらい勉強してから社会人になっても全然遅くはなかったと今は思います。長期的な目で見れば、自分の関心に従って学ぶ時間を持つことは、価値があるかもしれませんしね。やりたいことがあるのであれば、多少遠回りしてでも取り組むべきだというのが、今の考えです。

 

BIMBuilding Information Modeling):3次元の建物モデルに属性情報(コスト、材料、管理情報など)を付与し、設計・施工・維持管理の全工程で活用するデジタル手法。

 


 

「誠実。そして、ベストを尽くす。」

 

――人生や仕事をしていく上で大切にしていることは何ですか?

仕事において大切にしているのは、「誠実であること」、そして「その場でベストを尽くすこと」です。ここでいうベストとは、ハードワークをし続けることではありません。「ここまでやらないと納得できない」という基準をきちんと満たすことです。施工や設計だけでなく、経営においても同じです。中途半端な状態で終わらせるのではなく、プロの基準に到達するまでやり切ることが重要だと考えています。また、お客様の立場に立ち、必要な情報をきちんと伝えることも大切です。それは特別なことではなく、当たり前の行動だと思います。この基準を満たしていれば、必ずしも長時間働く必要はありません。大切なのは、プロとしての基準を守り、お客様に対して変に誤魔化さず、誠実に仕事に向き合うことです。

 


 

「父親としての姿」

 

――理想の人間像はありますか?

特別、明確な理想の人間像があるわけではありませんが、やっぱり自分にも子供がいるので、子どもからどう見られるかは意識しています。将来、子どもが30歳や40歳になったときに、「父親は意味のあることをしていた」と思ってもらえるような仕事をしたいと考えています。尊敬されるというよりも、子どもが理解でき、共感できる仕事をしていたと思ってもらいたいです。特定の人物を目標にするというよりも、父親は父親で苦労して、父親なりのベストを尽くしていたと伝わるような生き方をしたいと思っています。

 

――お子さんにも建設業界で働いてほしいと思いますか?

それは本人次第だと思います。私自身も、建設業界で戦おうと本気で思えたのは20代後半になってからでした。だからこそ、さまざまな経験をした上で選択してほしいと考えています。その結果として建設業に興味を持ってくれれば嬉しいですが、それ以上に本人のやりたいことや適性を優先してほしいと思っています。

 


 

「相手の立場に立って考えるということ。」

 

――岐路に立った時の判断基準は何ですか?

会社としての判断であれば、基準はシンプルです。迷ったときは、お客様の立場に立って判断することです。多くの場合、迷いは自社の利益とお客様の利益の間で生まれます。その場合は、お客様にとって最善の選択を優先します。仮に会社にとって損になるとしても、その判断を取るべきだと考えています。長期的に見れば、信用や信頼の方がはるかに重要だからです。一方で、自分自身の人生において同じ判断をすることは、仕事以上に難しいことです。きちんと相手の立場に立って考えて、相手のために自分が不利益を受ける選択をすることは、やはり簡単ではありません。まだまだ人間として未熟なので、プライベートにおいても仕事と同じように「信用のために損をとる」意思決定を常にできるかどうか、それが自分にとってのチャレンジだと捉えています。

 


 

「条件で選ぶ。それも一つの選択肢。」

 

――最後に人生や進路に迷っている人へのアドバイスをお願いします。

やりたいことがある人は、それに挑戦するのが一番だと思います。まずはやってみることが大切です。一方で、やりたいことが見つからずに迷っている場合は、条件で選ぶという考え方も十分合理的です。例えば、休みが多い、給与が高い、転勤がないといった条件で選ぶことも1つの方法です。それは決して悪い選択ではありません。むしろ、やりたいことが明確でないというのは、1つのアドバンテージであって、フラットに物事を判断できるということだと思います。熱意や強いこだわりがある場合は、不利な条件でもそこに進まざるを得ない場合がありますが、そうでなければ合理的に選択することができます。条件で決めた後は、その環境の中で求められることにしっかり応えていけば良いと思います。お客様や上司からの期待に応えることで、自分の役割が見えてきます。やりたいことがある人にはやりたいことを貫いてほしいですし、もし特にやりたいことがなければ条件で選ぶ。どちらも正しい選択であり、自分に合った方法で進めば良いと考えています。

 


 

 

【会社情報】

「須山建設株式会社」

〒432-8562 静岡県浜松市中央区布橋2丁目6番1号

TEL:053-471-0321

HP:須山建設株式会社(静岡県浜松市)|総合建設会社

 

【各種SNS】

・Instagram:須山建設(@suyama_hamamatsu) 

・YouTube:須山建設株式会社 - YouTube

 

【事業内容】

・総合建設業