地上に太陽を作る

まるでアーティスト中島みゆきさんの曲名のようなタイトルですが、最近、マスコミに報道された「核融合発電」という技術をご存じでしょうか?

 

原子力発電所は原子核が「分裂」する時に出るエネルギーを利用していますが、この新しい技術は原子核が「融合」する時に出るエネルギーを発電に利用します。

 

世界のエネルギー問題を解決する切り札と言われ、いくつか特徴があります。

 

まず化石燃料は燃やさないので、二酸化炭素(Co2)は発生しません。

燃料となるのは、リチウムと重水素という物質で、重水素は海水に含まれています。海水を電気分解して取り出すことができるため、燃料はとても豊富です。

 

安全面での特徴は、核融合反応が止まらず、温度が上がり続けて爆発するリスクが低いことです。核融合ではプラズマを燃やしますが、家庭の台所のガスコンロと同じで、プラズマは燃料が多すぎても少なすぎてもうまく燃えないためです。

 

核融合が起こるとプラズマから中性子という放射線がでてきます。この中性子のエネルギーで発電をするため発電炉の中でほとんどが熱に変わり消えてしまいます。また燃料に使われる重水素はβ線をだす放射能を持っていますが、β線の力は弱くて、空気の中を5ミリ飛ぶと止まってしまうようです。

 

それと驚くのはその効率の良さです。わずか重水素0.1グラム(水3L分)とリチウム0.3グラム(スマホの電池1個分)の燃料で、日本人1人が年間に使用する電気量(7,500kwhを発電できてしまうというのです。

 

このような特徴から、核融合は「地上に太陽を作る」技術とも言われています。

太陽が誕生したのは46億年前のことですが、今も約1.5億キロメートル先の地球を照らし続けています。 気の遠くなるような長い時間ずっと膨大なエネルギーを生み出し続ける太陽で起きている現象を、地球で人工的に開発するのです。

 

もちろんリスクはあるとは思いますが「原子力or火力」という対立を打開してくれそうな期待をしてしまう技術です。2030年代の商用化を目指しているようなので、私もその登場を楽しみにしたいと思います。