「経営事項審査」とは、公共工事(国又は地方公共団体等が発注する建設工事であって政令で定めるもの)を、発注者から直接請負おうとする建設業許可業者が必ず受けなくてはならない審査です。
国と地方自治体以外にどの発注機関から発注された工事が「公共工事」なるか?については、公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律施行令に定められています。具体的には次のとおりです。
また、公共機関から発注される仕事の内容が工事なのか?という問題もあります。
たとえ発注者が国や地方自治体であっても内容によっては公共工事に該当しないということもあります。
経審のルールでは以下のような業務は工事に該当しないことと定めています。
保守点検、維持管理、除草、草刈、伐採、除雪、融雪剤散布、測量、地質調査、樹木の剪定、庭木の管理、造林、採石、調査目的のボーリング、施肥等の造園管理業務、造船、機械器具製造・修理、建設機械の賃貸、宅地建物取引、建売住宅の販売、浄化槽清掃、ボイラー洗浄、側溝清掃、コンサルタント、設計、リース、資材の販売、機械・資材の運搬、保守・点検・管理業務等の委託業務、物品販売、清掃など
工事に該当しない業務については、それぞれの発注機関で「業務委託」「維持管理」などという項目で工事とは別に管理され発注されています。よってこれらの業務だけを受注したい場合には経審を受ける必要がない場合もあります。
ただし最終的には発注者の判断で運用していますので、個別の確認作業が大事になってきます。
公共工事というと一般的には「入札」によって受注者が決まる、というイメージが強いのではないかと思いますが、必ずしもそうではありません。「直接請け負おうとする」という言葉のとおり、入札以外にも相見積もりの場合も含まれます。
以下はある地方自治体が定めている区分です。
建設工事入札参加区分等 (単位:万円)
この場合、発注額が250万円以下の場合には、競争入札ではなく相見積もりになりますが、それでも経営事項審査を受けていなければならないことになります。
また経審は建設業許可業者が必ず受けなければならない、とされていますので、経審を受ける前提として、まず建設業許可を取得していなければなりません。
ここで、建設業許可が必要となるケースを改めて確認します。
公共工事の発注機関は、競争入札に参加しようとする建設業者について資格審査を行いますが、このうち建設業者の施工能力や経営状況などを客観的な指標で評価する審査が「経営事項審査」です。「経営事項審査」は、「経営状況」と「経営規模、技術的能力、その他の客観的事項」について数値により評価を行います。このうち、「経営状況」についての評価(「経営状況分析」)は、国土交通大臣の登録を受けた機関(「登録経営状況分析機関」)が行い、「経営規模、技術的能力、その他の客観的事項」(「経営規模等評価」)については、許可行政庁(国土交通大臣または都道府県知事)が行います。
経審を受ける順番には一定の流れがあります。
「総合評定値」とは、「経営状況」と「経営規模、技術的能力、その他の客観的事項」における評価項目ごとの評点を一定の計算式にあてはめて算出する総合的な評点のことです。「総合評定値」は、審査対象業種ごとに算出しますので、入札参加資格申請等で必要となる全ての業種を受審するようにご注意ください。
ここで注意が必要なのが、経審を受ける許可業種の選択です。ある工事をどの業種で発注されるかは、発注者の判断に委ねられています。例えば、耐震化が目的の外壁改修工事で内容からすると建設業法上はタイル・レンガ・ブロック工事に該当する工事であっても、実際には建築一式工事で発注されるケースが良く見られます。
ただし建築一式工事の許可を取得できるかどうかは、国家資格や実務経験など許可の要件を満たしたうえでのこととなります。自社で受注している工事に合わせて建設業許可を取得したのに、望んでいる公共工事が受注できる機会が無い(=経審が受けられない)という事態も想定できますので慎重な検討が必要です。なお、「総合評定値」を請求する者は、「経営状況分析結果通知書」を添付して請求することが必要です。
経営事項審査では、原則として申請をする日の直前の事業年度終了日を基準として、その時点における各項目について評価を行います。この日を審査基準日と呼びます。
なお、法令に定めのある場合等特段の場合を除き、同一の審査基準日に対して審査の受け直しはできませんので、ご注意ください。
経審はあくまで過去の実績による評価であるため、有効期間が1年7か月あります。
過去とは直前決算期の期間内を指していて、決算日(=審査基準日)における財務内容、受注の実績、在籍している社員と保有する資格、社会貢献度(公的保険制度や災害協定など)の数値や有無を総合的に評価するものです。
ちなみに既存取引先の与信管理や新規引き合い案件の検討にあたって、公表されている経審結果を参照される方も多くいらっしゃいます。全国共通の公的な評価であるという面で有効な検討材料の一つであると思いますが、企業のリアルタイムの状況が見えるわけではありません。公表されている結果の審査基準日から現在までに経過した期間を考慮したうえで参照して頂ければと思います。経審結果はあくまで補足資料とし、五感と足を使って生の情報を入手し検討をして頂ければと思います。