◆第一条(目的) 

この法律は、建設業で働く人たちの能力を高め、工事の契約を公平で適切なものにすることで、建設工事がきちんと行われるようにすることを目指しています。これにより、工事を頼む人(発注者)を守り、建設業界が健全に発展することを促し、最終的には社会全体の利益に貢献することを目的としています。

 

 

◆第二条 (定義) 

「建設工事」 とは、土木や建物を建てる工事のことで、この法律で具体的に定められた種類の工事(29業種)を指します。

「建設業」 とは、元請けや下請けといった立場に関わらず、どのような呼び名であっても、建設工事を完成させることを引き受ける事業のことです。

「建設業者」 とは、建設業許可を得て建設業を営んでいる人のことを言います。

「下請契約」 とは、ある建設工事を請け負った建設業者が、さらにその工事の全部または一部を別の建設業者に依頼する契約のことです。

「発注者」 とは、誰かに頼まれて行う工事ではなく、直接、建設工事を依頼する人を指します。また、「元請負人」 とは下請契約を結ぶ際に依頼する側の建設業者を言い、「下請負人」 とは下請契約で工事を引き受ける側の建設業者を指します。

 

 

◆第三条 (建設業の許可) 許可について

建設業を始めるには「許可」が必要です。建設業を営もうとする人や会社は、事前に「許可」を受けなければなりません。どこで許可を受けるかは、営業所をどこに置くかによって変わります。

 

<複数の都道府県に営業所がある場合>

 → 国土交通大臣の許可

 

<1つの都道府県内にだけ営業所がある場合>

 → 営業所がある地域を管轄する都道府県知事の許可

 

※「営業所」とは、本店や支店など、実際に営業活動を行う場所のこと。小規模な工事(軽微な建設工事)だけを請け負う場合は、許可を受けなくても建設業を営むことができます。

 

◆軽微な工事とは?

<建築一式工事の場合>

次のいずれかに当てはまれば、軽微な工事とされます。

 ・工事1件の契約金額(消費税込)が 1,500万円未満

 ・木造住宅で、建物の延べ面積が 150㎡未満

 

<建築一式工事以外の場合>

工事1件の契約金額(消費税込)が 500万円未満 の場合、軽微な工事とされます。「契約金額」は、消費税を含めた総額で判断します。また、注文者から支給された材料がある場合は、その材料の価格も含めて判断されます。

 

<具体例>

 ・工事代金(消費税込)…440万円

 ・注文者からの材料支給…100万円

この場合、合計で 540万円のため、建設業許可が必要となります。

 

◆更新について

建設業許可は5年ごとに更新が必要です。更新をしないまま5年が過ぎてしまうと、許可の効力はなくなってしまいます。

 

◆更新申請中はどうなる?

更新の申請をしたけれど、まだ審査が終わっていない場合、審査の結果が出るまでは、今までの建設業許可がそのまま有効になります。

 

◆新しい許可の有効期間はいつから数える?

更新許可が出たら、その有効期間は「前の許可の期限が切れた日の翌日」から5年間になります。

 

◆一般建設業から特定建設業へ切り替えた場合は?

同じ業種で特定建設業許可を新たに取った場合は、それまで持っていた一般建設業の許可は、自動的に効力を失います。

 

 

◆第三条の二(許可の条件)

国土交通大臣や都道府県知事は、建設業の許可を与える際に、特定の条件をつけることができ、またその条件を変更することもできます。

条件は、建設工事が適切に行われることや、工事を依頼するお客さん(発注者)を保護するために、必要最低限のものに限られます。また、許可を受ける人に対して、不当な負担を強いる内容であってはなりません。

 

 

◆第四条(付帯工事)

建設業者は、自分が許可を受けている種類の建設工事を請け負う場合、その工事に関連して必要となる他の種類の建設工事も合わせて請け負うことができます。

 

 

◆第五条(許可の申請)

建設業許可を受けたい人は、国土交通省令で定められた方法に従って、以下の情報を記載した申請書を提出する必要があります。どこに提出するかは、営業所の場所によって異なります。

複数の都道府県に営業所を置く場合は、国土交通大臣に提出します。

一つの都道府県にのみ営業所を置く場合は、その営業所がある都道府県の知事に提出します。

 

◆申請書に記載する内容

 ・会社や個人の名前

 ・営業所の名前と住所

 ・法人の場合:会社の資本金(出資金の合計も含む)と、役員などの氏名(業務を実質的に支配する立場の人全般を指します)

 ・個人事業主の場合:本人の氏名と、支配人がいればその氏名

 ・各営業所に配置する技術者の氏名(この法律で定められた資格を持つ人)

 ・許可を受けたい建設業の種類

 ・他に事業を行っている場合は、その事業の種類

 

 

◆第六条(許可申請書の添付書類)

許可申請書には、国土交通省令で定められた以下の書類を添付する必要があります。

 ・これまでの工事の履歴をまとめた書類

 ・過去3年間の各年度における工事の請負金額を記載した書類

 ・現在の従業員数を示す書類

 ・申請者本人(法人の場合は会社とその役員など、個人事業主の場合は本人)や、法定代理人が、許可が認められない基準に該当しないことを誓約する書類

 ・許可に必要な基準を満たしていることを証明する書類

 ・上記以外で、国土交通省令で定められたその他の書類

※ただし、許可を更新したい場合は、上記の1から3の書類(工事経歴書、工事施工金額、使用人数)は添付しなくても構いません。

 

 

◆第七条(許可の基準)

国土交通大臣や都道府県知事は、建設業の許可を申請した人が、以下のすべての基準を満たしていると認められない限り、許可を与えてはなりません。

 

(1)事業を適切に経営・管理できる能力があること

会社の経営や業務全体をきちんと管理できる体制が整っている必要があります。例えば、建設業を営む法人の取締役に5年以上在籍していた、などです。

(2)営業所に「営業所技術者」を配置していること

国家資格や一定の実務経験がある人。例えば一級土木施工管理技士などです。

(3)契約に関して、不正や不誠実な行為をするおそれが明らかでないこと

申請者本人や役員などが、過去に契約違反や不正をしたことがあり、今後もそのおそれがあると認められる場合には許可されません。

(4)請負契約をきちんと実行できるだけの財産や信用があること

財産的な基盤や信用が明らかに不足している場合は、許可されません。

 

 

◆第八条(欠格要件)

国土交通大臣や都道府県知事は、申請者が以下のいずれかの条件に当てはまる場合、許可をしてはなりません。また、申請書や添付書類に重要な嘘の記載があったり、重要な事実の記載が抜けていたりする場合も、許可は認められません。

(1)破産手続きが始まり、まだ権利を回復していない人

(2)過去に建設業の許可を取り消されてから、5年が経っていない人

(3)許可取り消し通知を受けた後、その処分が決まるまでの間に廃業などを届け出て、その届出から5年が経っていない人

(4)前号の期間内に廃業届などが出された際、その通知の60日以内に当該法人の役員などであった人、または個人の政令で定める使用人であった人で、その届出から5年が経っていない人

(5)営業停止命令の期間がまだ終わっていない人

(6)許可を受けようとする建設業について、営業を禁止されている期間がまだ終わっていない人

(7)禁錮以上の刑を受け、刑期を終えるか、刑の執行を受けなくなってから5年が経っていない人

(8)建設業関連の法律や刑法、暴力団排除法などに違反して罰金刑を受け、刑期を終えるか、刑の執行を受けなくなってから5年が経っていない人

(9)暴力団員、または暴力団員でなくなってから5年が経っていない人

(10)心身の病気などで、適切に建設業を営むことができないと国土交通省令で定められた人

(11)未成年者で、事業について成人と同じ能力を持たない場合、その法定代理人(保護者など)が上記のいずれかの条件に該当する人

(12)法人の役員などや、政令で定める使用人のうち、上記のいずれかの条件に該当する人がいる法人

(ただし、その人が許可取り消しや営業禁止などを受ける前から、当該法人の役員などで、その責任が限定的な場合は除きます)

(13)個人の政令で定める使用人のうち、上記のいずれかの条件に該当する人がいる個人事業主

(ただし、その人が許可取り消しや営業禁止などを受ける前から、当該個人の政令で定める使用人であった場合で、その責任が限定的な場合は除きます)

(14)暴力団関係者がその事業活動を実質的に支配している場合

 

 

◆第九条(許可換えの場合における従前の許可の効力)

建設業の許可を受けている人が、事業所の移転などによって、別の種類の許可が必要になった場合(ただし、事業承継による場合は除く)に、新たに国土交通大臣または都道府県知事の許可を取り直すと、以前の許可は効力を失います。具体的には、次のようなケースが該当します。

 

<ケース1>

大臣許可→知事許可

例えば、これまで東京都と神奈川県に営業所があり大臣の許可を受けていたけれど、ある事情で営業所が東京都のみになった場合など。

 

<ケース2>

知事許可→他県の知事許可

例えば、東京都だけにあった営業所を神奈川県に移した場合など。

 

<ケース3>

知事許可→大臣許可

例えば、東京都だけにあった営業所に加えて神奈川県に営業所を開設した場合など。

 

 

◆第十条(登録免許税及び許可手数料)

国土交通大臣の許可を受けたい人は、申請の種類によって、登録免許税または許可手数料を支払う必要があります。

新規に許可を受けたい人は、登録免許税を納めます。

一方、すでに持っている許可を更新したい人、またはすでに別の建設業で国土交通大臣の許可を持っていて、さらに別の種類の許可を受けたい人は、許可手数料を納めます。

さらに、知事の許可を受けようとする場合には、申請手数料を納めることになります。(都道府県ごとに金額はことなります。)

 

 

◆第十一条(変更等の届出)

建設業の許可を持っている人は、申請時に提出した情報(会社名、営業所、役員、技術者など)に変更があった場合、国土交通省令で定められた方法に従い、30日以内に、その変更内容を記載した書類を国土交通大臣または都道府県知事に提出する必要があります。

 

◆第二項

建設業の許可を持っている人は、各事業年度が終わった時点での工事経歴書や工事の請負金額など、国土交通省令で定められた書類を、事業年度終了後4ヶ月以内に、国土交通大臣または都道府県知事に提出しなければなりません。

 

◆第三項

建設業の許可を持っている人は、従業員数など、その他の国土交通省令で定められた書類の内容に変更があった場合は、毎事業年度終了後4ヶ月以内に、その変更内容を書面で国土交通大臣または都道府県知事に届け出る必要があります。

 

◆第四項

建設業の許可を持っている人は、営業所に配置している技術者がいなくなった場合や、特定の認定基準を満たさなくなった場合で、代わりに新しい技術者を配置するときは、国土交通省令で定められた方法に従い、2週間以内に、その新しい技術者に関する証明書類を国土交通大臣または都道府県知事に提出しなければなりません。

 

◆第五項

建設業の許可を持っている人は、許可の際に求められる経営能力や技術者配置などの基準を満たさなくなった場合、または許可が認められないとされる特定の欠格要件(破産、刑罰など)に該当してしまった場合は、国土交通省令で定められた方法に従い、2週間以内に、その事実を書面で国土交通大臣または都道府県知事に届け出る必要があります。

 

 

◆第十二条(廃業等の届出)

建設業の許可を持つ業者が、以下のいずれかの状況になった場合、それぞれの状況に応じた関係者が、30日以内に、国土交通大臣または都道府県知事にその事実を届け出る義務があります。

(1)許可を受けている個人事業主が死亡し、その事業を引き継ぐための申請がなかった場合は、相続人が届け出ます。

(2)法人が合併によって消滅し、その合併後に存続または新設される法人への事業承継が認められなかった場合は、その元役員だった人が届け出ます。

(3)法人が破産手続きの開始決定によって解散した場合は、破産管財人が届け出ます。

(4)法人が合併や破産以外の理由で解散した場合は、清算人が届け出ます。

(5)許可を受けている建設業の事業自体をやめた場合(事業承継が認められた場合を除く)は、その元個人事業主本人、または元法人の役員が届け出ます。

 

 

◆第十三条(提出書類の閲覧)

国土交通大臣や都道府県知事は、政令で定められた方法に従い、以下の書類(またはそのコピー)を一般の人が自由に見られる「閲覧所」を設置しなければなりません。

(1)許可申請書(建設業の許可を申請するときに提出する書類です。)

(2)会社の体制に関する書類 (経営業務の責任者や技術者など、許可を受けるために必要な人や組織が整っているかを示す書類です。)

(3)会社情報などの変更を届け出る書類(会社の名前や代表者が変わったときなどに提出する書類です。)

(4)決算終了時に提出する書類(事業年度が終わった後に提出する売上や利益などの情報が書かれた書類です。)

(5)誓約書などの内容に変更があったときの届出書

(6)上記以外で、国土交通省令で定められたその他の書類

 

 

◆第十四条(国土交通省令への委任)

許可の申請に必要な詳しい内容は、国土交通省令によって定められます

 

 

◆第十五条(許可の基準)

国土交通大臣や都道府県知事は、特定建設業の許可を申請する人が、以下のすべての基準を満たしていると認められない限り、許可をしてはなりません。

(1)法令遵守や誠実性などに問題がないこと

 第七条に当てはまる、つまり「法令を守り、誠実に事業を行う」ことができる人であることが必要です。

(2)各営業所に「特定営業所技術者」を専任で配置していること。

指定建設業を行う場合には、以下のいずれかに当てはまる人でなければなりません

 ・技術検定(国家資格など)に合格している人や、それに準じた他の法律上の免許を持っている人。

 ・重要な工事で2年以上現場で監督的な立場の実務経験がある人

 ・国土交通大臣が「同等以上の能力がある」と認めた人

(3)発注者から直接請け負う特定の高額な契約を履行できるだけの、十分な財産的な基盤があること。

 

◆特定建設業の財産的基礎 具体的な基準について

特定建設業の許可を取るためには、次の4つの条件すべてを満たしている必要があります。

(1)会社の損失が大きすぎないこと

損失の金額が、資本金の20%を超えていないこと。

(2)支払い能力が十分にあること

流動比率が75%以上あること。手元にあるすぐ使えるお金などが、支払う予定の短期の借金に対して十分であること。

(3)資本金が2,000万円以上あること

(4)会社の純資産(自己資本)が4,000万円以上あること

※純資産とは、資産から負債を引いた金額のことです。

 

 

◆第十六条(下請契約の締結の制限)

建設業者は、工事を発注者から直接請け負った場合、その工事の一部を下請けに出すことがあります。ただし、次のような大きな金額の下請契約を結ぶときには、特定建設業の許可を持っていなければいけません。

 

発注者から直接(元請負人として)請け負った工事について、5,000万円(建築一式工事の場合は8,000万円)以上となる下請契約を締結する場合。

また、一次下請業者が複数いる場合には、それぞれの下請契約の金額を合計した金額で判断されます。その合計が基準の金額を超える場合は、やはり特定建設業の許可が必要になります。

 

 

◆第十七条(準用規定)

この条文では、一般建設業の許可に関するルールの多くが、特定建設業にも同じように適用されることが定められています。これを「準用」といいます。たとえば、次のようなルールは特定建設業にもそのまま適用されます。

 

 ・許可申請に必要な書類や提出方法

 ・欠格要件

 ・営業所や技術者に関するルール

 ・変更届・決算報告・廃業届の提出

 ・書類の閲覧制度

 

ただし、特定建設業には一般建設業とは違うルールや条件もあるため、条文の中に出てくる言葉の一部は特定建設業に合わせて言いかえられます。

たとえば営業所技術者は、特定建設業の場合は「特定営業所技術者」という意味になります。このように内容はそのまま使いつつ、特定建設業に合うように読み替えることになっています。

 

 

◆第十七条の二(譲渡及び譲受け並びに合併及び分割)

建設業を営んでいる者(法人や個人)が、許可を受けている建設業のすべての事業を他人に譲渡する場合には、条件によってその許可を引き継ぐこと(承継)ができます。

 

<承継ができないケース>

・譲渡する側が一般建設業の許可を持っていて、譲り受ける側が同じ種類の特定建設業の許可を持っている場合。

・譲渡人が特定建設業の許可を持っていて、譲受人が同じ種類の一般建設業の許可を持っている場合

 

こうした例外を除けば、譲渡人と譲受人の両方が、事前に必要な認可を受ければ、譲受人は譲渡の日に譲渡人の建設業の地位(許可)をそのまま引き継ぐことができます。

 

<認可について>

譲渡人が大臣の許可を受けている場合 

 →大臣の認可が必要。

 

譲渡人が知事の許可を受けている場合 

 →基本的に知事の認可が必要。

 ※以下の場合は大臣の認可が必要です。

 ・譲受人が大臣の許可を持っている場合

 ・譲受人が別の都道府県知事の許可を持っている場合

 

 

◆第十七条の三(相続)

個人の建設業者が亡くなった場合、その家族など相続人が事業を引き継いで建設業を続けるには、承継の認可を受ける必要があります。

申請は、亡くなった日から30日以内に行う決まりです。

申請先は、亡くなった方や相続人がどの許可を持っていたかによって、国土交通大臣または都道府県知事に分かれます。

申請をすれば、認可が出るまでの間は、亡くなった方の建設業許可が相続人に引き継がれたものとみなされるため、すぐに事業が止まることはありません。そして認可を受けた相続人は、正式に建設業者としての地位を引き継ぎ、これまでと同じように事業を行うことができます。

 

 

◆第十八条(建設工事の請負契約の原則)

建設工事の請負契約を結ぶときは、発注者と受注者がおたがいに対等な立場で話し合い、内容に納得したうえで、公正な契約を結ぶことが原則です。契約を結んだあとは、おたがいが信頼の気持ちをもって約束を守り誠実に対応していくことが求められます。

 

 

◆第十九条(建設工事の請負契約の内容)

建設工事の契約を結ぶ際には、重要な内容を契約書に書き込み、署名や押印をして、おたがいに書面を渡し合うことが必要です。記載する内容は次のとおりです。

 

(1)工事の内容

(2)請負代金の金額

(3)工事の開始時期と完成時期

(4)工事を行わない日や時間がある場合は、その内容

(5)前払い金や出来高払いがあるときは、その時期や方法

(6)設計変更や工事延期・中止があったときの対応

(7)天災などによる工期変更や損害の扱い方

(8)物価の変動による工事内容や金額の変更とその計算方法

(9)工事によって第三者に損害が出た場合の補償について

(10)資材や建設機械を発注者が提供する場合の内容や方法

(11)完成確認のための検査の時期や方法、引渡しの時期

(12)完成後の代金支払いの時期や方法

(13)品質が契約と合わなかった場合の責任や保証内容

(14)遅延・違約などがあったときの利息や損害金など

(15)契約に関するトラブルが起きた場合の解決方法

(16)その他、国が定めた必要な事項

 

契約内容に変更が生じた場合は、その変更についても書面に記載し、署名や押印をしておたがいに渡し合うことが必要です。

書面の代わりに、電子契約などのITを使った方法をとることも可能です。国が定めた方法で、相手方の承諾を得たうえで行えば書面のやりとりと同じ効力があります。

 

 

◆第十九条の二(現場代理人の選任等に関する通知)

建設工事の現場では、請負者が「現場代理人」を、発注者が「監督員」を配置することがあります。

現場代理人や監督員を置く場合に、それぞれの権限や、相手方が意見を申し出る際の方法などを、書面で相手に通知することが義務づけられています。

また、相手の承諾があれば、書面の代わりに電子メールや専用システムなどの電子的な手段で通知することも認められています。

このように、現場における役割や連絡方法をあらかじめ明確にしておくことで、工事の円滑な進行や、不要なトラブルの防止につなげることが目的とされています。

 

 

◆第十九条の三(不当に低い請負代金の禁止

発注者は、自分の立場を不当に利用して、建設工事に通常かかる費用よりも明らかに安い金額で工事を請け負わせてはいけません。

この規定の目的は、建設業者の適正な利益を守り、不当に安い価格での契約(いわゆる「買いたたき」)を防ぐことにあります。たとえば、発注者が「他でもっと安くできる」と圧力をかけて、実際の原価を下回る金額で契約させるようなケースがこれに該当します。

 

 

◆第十九条の四(不当な使用資材等の購入強制の禁止)

発注者が請負契約を結んだあとに、自分の立場を利用して工事に使う資材や機械、またはその購入先を指定し、請負業者に無理に購入させることで、その利益を損なってはいけません。

たとえば、「この資材は必ずこの会社から買ってほしい」「この機械を使うように」といった指示によって、業者に通常より高い費用負担を強いるようなケースがこれにあたります。この規定は、請負業者が不当に不利益を受けないようにし、自由で公正な取引関係を保つために設けられたものです。発注者による一方的な押しつけや、特定の業者との癒着を防ぐ役割も果たしています。

 

 

◆第十九条の五(著しく短い工期の禁止)

発注者が建設工事を発注する際、工事の内容に対して通常必要とされる期間に比べて、著しく短い工期で契約を結ぶことは禁止されています。

たとえば、本来2か月かかる工事について「1か月で終わらせてほしい」と無理に短縮させようとすることが、これにあたります。この規定は、建設現場の安全や品質を守り、業者が適切な準備・作業を行える環境を確保するために設けられています。

 

 

◆第十九条の六(発注者に対する勧告等)

発注者が不当に低い請負代金を設定したり、資材や機械の購入先を指定して業者に不利益を与えた場合、建設業者を許可した国土交通大臣や都道府県知事は、その発注者に対して勧告を行うことができます。

勧告を受けた発注者がその指示に従わない場合、国土交通大臣や都道府県知事は、その旨を公表することが可能です。この規定は、発注者が公正な契約を行うよう促すもので、建設業者の利益を守るために重要な役割を果たします。

 

 

◆第二十条(建設工事の見積り等)

建設業者が請負契約を結ぶ際は、工事の内容に応じた詳細な見積りを作成するよう義務付けられています。

具体的には、工事にかかる材料費や労務費、その他経費の内訳、さらに作業の工程ごとの準備に必要な日数を明示することが求められます。また、注文者からの依頼があれば、契約が成立する前に見積書を交付しなければなりません。

見積書は電子的に提供する方法も認められており、これを使用した場合も見積書を交付したとみなされます。注文者が契約を締結する際には、できるだけ具体的な内容を提示し、建設業者が適切な見積りを作成できるように、一定の準備期間を設けることが求められます。

 

 

◆第二十条の二 (工期等に影響を及ぼす事象に関する情報の通知等)

建設工事では、地盤沈下や資材の高騰など、工期や請負代金に大きな影響を及ぼすおそれのある事象が発生することがあります。

この条文では、そうした事象について、発注者と建設業者の双方が、契約前に必要な情報を伝え合うことを定めています。

たとえば、発注者は「この土地は地盤が弱い可能性がある」などの情報を、契約前に建設業者に伝える義務があります。

同様に、建設業者も「鉄筋の価格が急に上がってきている」など、費用や工期に影響が出そうなことがあれば、契約前に発注者に知らせなければなりません。

また、契約後に実際にそのような事象が起きた場合、建設業者は工期や金額などについて変更の協議を申し出ることができるとされています。発注者は、その申し出が正当なものであれば、誠実に協議に応じる努力をしなければなりません。

 

 

◆第二十一条(契約の保証)

建設工事の請負契約で、発注者が工事代金の一部または全部を前もって支払うことにした場合、発注者は建設業者に対して保証人を立てるよう求めることができます。

ただし、公共工事における前払金保証制度の対象工事や、政令で定められた小規模な工事については、この保証人の制度は適用されません。

発注者から保証人を立てるよう求められた場合、建設業者は次のいずれかの保証をつけなければなりません。

 

①工事が途中で止まったときなどに、損害金を支払うことを保証する「金銭的保証人」

②建設業者に代わって、工事を最後まで完成させることを保証する「別の建設業者」

 

もし建設業者が保証人を立てなかった場合、発注者は前金払いをしなくてもよいとされています。

 

 

◆第二十二条(一括下請負の禁止)

建設業者は、自分が請け負った建設工事を丸ごとまとめて他人に下請けさせること(一括下請負)は、禁止されています。

同じように、建設業者から一括で工事を引き受ける側(下請側)になることも禁止されています。

ただし、多数の人が利用する施設や工作物に関する重要な建設工事で政令で定めるもの(共同住宅を新築する建設工事)以外の建設工事である場合、元請負人があらかじめ発注者より書面による承諾を得ているときは一括下請負が認められます。

さらに、書面による承諾の代わりに、発注者が電子的な方法(国土交通省令で定められた方式)で承諾の通知をすることもできます。この場合も、書面での承諾があったものとみなされます。

 

 

◆第二十三条(下請負人の変更請求)

発注者は、元請業者が選んだ下請業者のうち、工事の実施に著しく不適当だと判断される者がいる場合には、その下請業者の変更を請求することができます。

ただし、あらかじめ注文者が書面で承諾したうえで選ばれた下請業者については、この請求はできません。書面による承諾の代わりに、電子的な方法(国土交通省令で定める方法)を使って通知することも可能です。この電子的な通知が行われた場合も、書面による承諾があったものとみなされます。

 

 

◆第二十三の二条(工事監理に関する報告)

建築士から「設計図書どおりに工事をするように」と指摘を受けたにもかかわらず、それに従えない理由がある場合、請負業者はすぐに発注者へ、その理由を報告しなければなりません。

この報告は、契約時などにあらかじめ定められた方法(書面や電子メールなど)に従って行う必要があります。

 

 

◆第二十四条(請負契約とみなす場合)

たとえ契約の名前が委託など別の名称だったとしても、報酬を得て建設工事を完成させることが目的である契約であれば、建設工事の請負契約として扱われ、建設業法のルールが適用されます。

つまり、契約書にどのような表現がされていても、実質的な内容が建設工事の請負にあたる場合は、法律上は請負契約として見なされる、ということです。

 

 

◆第二十四条の二(下請負人の意見の聴取)

元請負人は、自らが定める工程の細かい内容や作業方法などについて決める前に、下請負人の意見をあらかじめ聞かなければなりません。

これは、下請負人の立場や実務の状況を考慮し、現場の円滑な進行や適正な施工につなげるためのルールです。

 

 

◆第二十四条の三 (下請代金の支払)

元請負人は、出来高部分や工事完成後の代金を受け取った場合、その金額に応じた分を、実際に工事を行った下請負人に対して1か月以内、できる限り早く支払わなければなりません。

特に、下請代金のうち労務費にあたる部分については、現金で支払うように配慮する必要があります。

また、前払金を受け取ったときには、下請負人が資材の調達や人員確保など工事開始に必要な準備ができるよう、前払金の一部を適切に支払うよう配慮しなければなりません。

 

 

◆第二十四条の四 (検査及び引渡し)

元請負人は、下請負人から「工事が完成しました」と連絡を受けたら、できるだけ早く、遅くとも20日以内に工事の検査を行い、完成しているかどうかを確認しなければなりません。

そして、工事が完成していることが確認されたあとで、下請負人から引渡しの申し出があった場合には、特別な約束がない限り、すぐに引き渡しを受ける必要があります。

ただし、下請契約の中で「工事完成予定日から20日経過する前の特定の日に引渡す」といった特約が結ばれている場合は、その取り決めが優先されます。

 

 

◆第二十四条の五 (不利益取扱いの禁止)

元請負人は、下請負人が不正行為や法律違反を通報した場合、その通報を理由に下請負人に不利益な取扱いをしてはならないという規定があります。

具体的には、例えば下請負人が元請負人の違法行為を国土交通大臣や公正取引委員会、中小企業庁長官に報告した場合、その下請負人を不当に扱うことは許されません。

これは、下請負人が法的権利を行使したことに対する報復を防ぐための重要なルールです。

 

 

◆第二十四条の六 (特定建設業者の下請代金の支払期日等)

特定建設業者が注文する下請契約では、代金の支払期日は、工事の完成を確認した日から50日以内で、できるだけ早く定める必要があります。

もし支払期日が設定されていない場合は、確認した日から50日を経過した日が自動的に支払期日として扱われます。

支払方法についても制限があります。特定建設業者は、下請業者が一般の金融機関で支払期日までに現金化(割引)することが困難な手形を使って、代金を支払うことを禁止されています。

特定建設業者は、元請としての義務と特定建設業者としての義務の両方を負っています。そのため、出来形払いや完成払いを受けた日から1か月以内、または引渡しの申出日から50日以内の、どちらか早い日までに下請代金を支払う必要があります。

支払期日が決まっていない場合は、申出日から50日以内が支払期限とされます。

支払期日を過ぎた場合、遅延利息を支払う義務が生じます。遅延した期間に応じた利息額は、国土交通省令で定められた利率を基に計算されます。

 

 

◆第二十四条の七(下請負人に対する特定建設業者の指等)

特定建設業者は、自分が直接請け負った建設工事について、下請業者が建設業法や労働関係の法律に違反しないよう、しっかりと指導に努める必要があります。

もし、下請業者が法律に違反していると判断した場合は、その事実を伝え、きちんと是正するよう求めなければなりません。

それでも違反が改善されないときは、元請業者は速やかに、許可を出した国土交通大臣や都道府県知事、または工事現場を管轄する都道府県知事に通報する義務があります。

 

 

◆第二十四条の八 (施工体制台帳及び施工体系図の作成等)

特定建設業者(発注者から直接工事を請け負う業者)は、その工事を行うために下請業者と契約を結び、その契約金額の合計が、政令で決められた一定の金額をこえる場合には、施工体制台帳を作成し、その工事現場に備えておかなければなりません。

 

<台帳記載内容>

・下請業者の会社名

・工事の内容と工期

・その他、決められた事項など

 

下請業者が、さらに別の建設業者に工事を請け負わせた場合には、その会社名や工事の内容・工期などを、国土交通省令で定められた方法により、元請業者(特定建設業者)に知らせなければなりません。

特定建設業者は、発注者から求められたときには、備えている施工体制台帳を発注者が閲覧できるようにしなければなりません。

また、特定建設業者は、国土交通省令で定められた方法により、現場ごとに下請業者の工事の分担関係を示した施工体系図を作成し、工事現場の見やすい場所に掲げなければなりません。

 

 

◆第二十五条(建設工事紛争審査会の設置)

建設工事の請負契約に関して、トラブル(紛争)が起きたときに公正に解決するための場として建設工事紛争審査会が設けられています。

審査会は、建設工事の請負契約に関する紛争について、「あっせん」「調停」「仲裁」といった方法で解決を図る権限を持っています。

審査会には、国土交通省に設けられる中央建設工事紛争審査会と、各都道府県に設けられる都道府県建設工事紛争審査会の2つがあります。

 

 

◆第二十五条の二十七(施工技術の確保に関する建設業者等の責務)

建設業者には、建設工事を支える人材や技術を次の世代へつなげていく責任があります。そのため、人材の育成・確保や施工技術の維持・向上に取り組むことが求められています。

また、働く人の持つ知識や技能などを正しく評価し、それに見合った賃金を支払うことなどにより、労働者が安心して働けるようにするための取り組みが必要です。

建設現場で働く人自身も、よりよい工事を行うために、知識や技能を高めていく努力が求められています。

国もこのような取り組みを後押しするため、講習の実施や資料の提供など、必要に応じた支援を行います。

 

 

◆第二十五条の二十八(建設工事の適正な施工の確保のために必要な措置)

特定建設業者は、工事を適切に進めるため、ICT(情報通信技術)をうまく活用していく必要があります。

たとえば、工事の進捗を管理するシステムを整えたり、必要な情報をリアルタイムで共有できるようにするなどの取り組みが求められます。

元請業者は、自社だけでなく下請業者にもICTを活用した取り組みができるように、必要な指導やサポートを行うよう努めなければなりません。

国土交通大臣は、こうしたICTの活用がしっかり実施されるようにするため、必要な指針(ガイドライン)を定めて、公表することになっています。

 

 

◆第二十六条(主任技術者及び監理技術者の設置等)

建設業者は、工事現場ごとに施工管理を行う主任技術者を配置する必要があり、発注者から直接請け負った大きな工事では、より高い資格を持つ監理技術者の配置が求められます。

公共性の高い重要な工事では、原則として主任技術者や監理技術者は専任でなければなりませんが、金額や工事現場の状況、ICTの活用など一定の条件を満たす場合は兼任も認められます。

専任の監理技術者になるには、資格者証の交付を受け、必要な講習を修了していることが必要で、発注者から求められた場合は資格者証を提示しなければなりません。

 

 

◆第二十六条の二(主任技術者及び監理技術者の設置等)

土木工事業や建築工事業の業者が、一式工事と一緒に他の工事も行う場合には、その工事について必要な資格を持つ技術者を置いて自社で施工するか、その工事についての許可を持つ業者に依頼する必要があります。

建設業者が、自分の許可業種に関連する他の工事もあわせて行う場合には、その工事の管理をできる技術者を置いて施工するか、その工事の許可を持つ業者に任せなければなりません。

 

 

◆第二十六条の三(主任技術者及び監理技術者の設置等)

元請業者と下請業者はそれぞれ自らの主任技術者を工事現場に配置する必要がありますが、特定専門工事では、一定の条件を満たした場合に、元請業者が配置する主任技術者が下請業者の分も兼任することができます。

この特例を利用するためには、元請・下請間で合意書を取り交わすことが必要であり、その内容には、主任技術者の氏名や工事内容など、所定の事項を明記しなければなりません。

書面による合意のほか、国土交通省令で定める電子的な方法での合意も可能です。また、元請がこの合意を行うには、あらかじめ発注者の承諾(書面または電子的方法)を得る必要があります。

兼任される主任技術者は、特定専門工事と同一の種類の建設工事について1年以上の指導監督経験を有し、現場に専任で配置されている者でなければなりません。なお、この主任技術者には、通常の専任に関する規定(第26条第3項)は適用されません。

さらに、この特例の対象となる「特定専門工事」とは、土木一式・建築一式以外の工事で、技術が画一的であり、施工管理の効率化が求められるものに限られます。

対象となるのは、下請契約の金額が政令で定める一定額未満である工事に限られ、発注者から直接請け負った大規模な工事などは除外されます。

最後に、主任技術者を置く必要がなくなった下請業者は、その工事を他の業者に再委託することはできません(再下請禁止)。

 

 

◆第二十六条の四(主任技術者及び監理技術者の職務等)

主任技術者・監理技術者は、施工計画の作成、進行管理、品質確保などの技術的管理を誠実に遂行するとともに、現場で働く人たちに対して適切に指導・監督を行わなければなりません。

また、現場の従事者はその指導に従い、安全で品質の高い工事の実現に協力することが求められています。

 

 

◆第二十六条の五(営業所技術者等に関する主任技術者又は監理技術者の職務の特例)

一定の要件を満たす小規模な工事については、現場に主任技術者や監理技術者を常駐させる代わりに、営業所にいる技術者がその職務を兼務できる特例です。

要件としては、①その営業所が契約した工事であること ②工事金額が政令で定めた上限未満であること ③営業所と現場の連携体制が整っていること ④ICTを活用して現場の状況把握や管理が行えること、が挙げられています。

この特例が認められるのは、技術者が担当する工事現場の数が政令で定めた上限以内である場合に限られます。複数の現場を兼任しても、業務がきちんと遂行できると判断される範囲内に限られるということです。

営業所の技術者が監理技術者の職務を兼任する場合には、正式な資格(監理技術者資格者証)と所定の講習の受講が必要です。専門的な知識と責任が求められる職務であるため、一定の要件を満たした者でなければなりません。

発注者が求めた場合には、兼任する特定営業所技術者は、自身が監理技術者としての資格を持っていることを証明するために、資格者証を提示する義務があります。

 

 

◆第二十七条の二十三(経営事項審査)

国や自治体などが発注する公共性のある建設工事を直接請け負いたい建設業者は、あらかじめ「経営事項審査」(経審)を受けなければなりません。この審査は、工事の受注に値する経営基盤があるかを判断するための制度です。

対象となる工事の範囲は政令で定められています。経審は、単なる書類確認ではなく具体的な数値によって評価される仕組みです。

評価対象は大きく分けて、①会社の財務内容などの「経営状況」、②売上高や技術者の有無といった「経営規模・技術力など」です。

評価に用いる具体的な項目や採点の基準は、国土交通大臣が中央建設業審議会の意見を踏まえて定めるとされています。

 

 

◆第二十七条の二十四(経営状況分析)

経営事項審査の中でも「経営状況」の評価(たとえば財務内容など)は、登録経営状況分析機関と呼ばれる、国土交通大臣に登録された専門機関が担当します。

建設業者が経営状況分析を受けるには、必要事項を記載した申請書を作成し、登録経営状況分析機関に提出する必要があります。

申請書には、会社の経営状況を裏付ける資料(たとえば財務諸表など)を添付する必要があります。

登録経営状況分析機関は、分析に必要と判断した場合には、追加の資料提出や報告を求めることができます。

評価に用いる具体的な項目や採点の基準は、国土交通大臣が中央建設業審議会の意見を踏まえて定めるとされています。

 

 

◆第二十七条の二十五(経営状況分析の結果の通知)

経営状況分析を行った登録機関は、速やかにその結果を建設業者に通知しなければなりません。

(通知の方法などについては、国土交通省令で細かく定められています。)

通知されるのは、分析に基づいた数値的な結果であり、建設業者はこの数値をもとに経営事項審査の評価や準備を進めることになります。

 

<登録経営状況分析機関一覧>

 ・(一財)建設業情報管理センター

 ・(株)マネージメント・データ・リサーチ

 ・ワイズ公共データシステム(株)

 ・(株)九州経営情報分析センター

 ・(株)北海道経営情報センター

 ・(株)ネットコア

 ・(株)経営状況分析センター

 ・経営状況分析センター西日本(株)

 ・(株)NKB

 ・(株)建設業経営情報分析センター

 

 

◆第二十七条の二十六(経営規模等評価)

経営規模等評価を実施するのは、建設業の許可を行った国土交通大臣または都道府県知事です。

経営規模等評価を受けたい建設業者は、あらかじめ定められた内容(省令で指定)を記載した申請書を作成し、建設業の許可を出した大臣または知事に提出します。

申請書だけではなく、売上高や施工実績などを証明する添付書類も必要です。(どのような書類が必要かは国土交通省令で定められています。)

提出された書類だけでは情報が不十分な場合など、評価に必要と認められるときには、審査を行う大臣または知事が、建設業者に対して追加の報告や資料の提出を求めることができます。

 

 

◆第二十七条の二十七(経営規模等評価の結果の通知)

評価を行った国土交通大臣または都道府県知事は、評価が完了したら、遅滞なくその結果(数値)を申請した建設業者に通知します。

 

 

◆第二十七条の二十八(再審査の申立)

建設業者が通知された評価結果に異議があるときは、その評価を行った大臣または知事に対して再審査の申立てを行うことができます。

 

 

◆第二十七条の二十九(総合評定値の通知)

建設業者が希望する場合、国や都道府県は総合評定値を通知しなければなりません。この総合評定値は、経営状況分析の結果、経営規模等評価の結果をもとに計算される、企業全体の客観的な評価値です。

建設業者が総合評定値の通知を請求するためには、経営状況分析の結果(登録分析機関から通知された数値)を提出しなければなりません。

また、建設工事の発注者(国・地方公共団体など)は、特定の建設業者の総合評定値を請求することができます。

この場合、知事や大臣は、請求内容に応じて総合評定値を通知しなければなりません。(ただし、その建設業者がまだ自ら請求をしていない場合は、「経営規模等評価の数値」のみでも可)

 

 

◆第二十七条の三十(手数料)

この条文では、経営事項審査のうち国土交通大臣に申請や請求を行う際の手数料の支払い義務が定められています。

具体的には、経営規模等評価の申請や、総合評定値の請求を国に対して行う場合に、その手続きに必要な実費を反映した政令で決められた手数料を支払う必要があるということです。

 

 

◆第二十八条(指示及び営業の停止)

 

【第一項】

建設業者が違反行為や社会的に問題のある行為をした場合、行政(国または県)は業者に対して注意や営業の一時停止などの措置をとることができます。

対象は主に次のようなケースです。

 ・工事が雑で危険な場合

 ・不誠実な取引をした場合

 ・法律違反(他の法律も含む)をした場合

 ・帳簿や書類の管理ができていない場合

 ・技術者の責任が重い不適切な対応があった場合

 ・無許可業者との取引や営業停止中の業者との契約

 ・住宅に関する瑕疵担保責任を果たさなかった場合

 

【第二項】

知事は、許可なく建設業を営んでいる者が「建設工事を適切に施工せず、公衆に危害を及ぼした場合、またはそのおそれが高い場合」、「請負契約に関して、著しく不誠実な行為をした場合」は建設業者に対し、必要な指示を行うことができます。

 

【第三項】

大臣や知事は、「許可を得て建設業を営む人が、特定のルール違反をした場合、またはその指示に従わない場合」、「許可なく建設業を営む人が、前の条文で定められた違反をした場合、またはその指示に従わない場合」は、最長1年間の期間を定めて、事業の全部または一部の停止を命じることができます。

 

【第四項】

他の知事や大臣から許可を受けている建設業者でも、自分の都道府県内で問題のある営業をしている場合には、その都道府県知事が指示を出すことができます。

 

【第五項】

都道府県知事は、ルール違反をした場合や、指示を出しても従わない業者に対しては、最長1年間の期間を定めて、その都道府県内での事業の全部または一部の停止を命じることができます。

 

【第六項】

営業停止などの処分をした場合は、処分を行った知事は速やかに、もともとの許可権限を持つ大臣や他の都道府県知事にその事実を報告・通知する必要があります。

 

【第七項】

国土交通大臣や都道府県知事は、必要があると認めたときには、その工事を発注した発注者に対しても、適切な対応を取るよう勧告することができます。

 

 

◆第二十九条(許可の取消し)

国土交通大臣または都道府県知事は、許可を与えた建設業者がこれから述べるいずれかの状況になった場合、その許可を取り消さなければいけません。

 

①許可を得るために必要な基準を満たさなくなった場合

たとえば、経営業務の管理責任者がいなくなったり、財産的な基盤(自己資本の額など)が不足した場合などがこれにあたります。

②本来、許可が与えられないような状況に、後から該当した場合

具体的には、会社の役員が特定の犯罪で刑罰を受けたり、不正行為で営業停止処分を受けた過去があるなど、建設業の健全な運営に支障があると考えられる状態になった場合が該当します。

③他の建設業者の事業を正式に引き継いだ場合を除き、二重に許可を受けていたり、特定の場合において必要な別の種類の許可を持っていないとき

④許可を取得したものの、1年以内に事業を始めなかった場合、または事業を始めたものの、続けて1年以上休止してしまった場合

⑤許可を取り消すべきとされている別の特定の事由に該当してしまった場合

⑥個人事業主である建設業者が亡くなった際に、事業を引き継ぐこと(承継)が行政に認められなかった場合

⑦嘘の情報を提出するなど、不正な方法で建設業の許可(またはその更新)を得ていた場合、あるいは事業の引き継ぎなどの承認を不正な手段で得ていた場合

⑧特に悪質な違反行為があった場合、または営業停止の命令を受けていたにもかかわらず、それに違反して営業を続けた場合

また、大臣や知事は、許可を与えた建設業者が、許可に際してつけられた条件に違反した場合には、その許可を取り消すことができます。

 

 

◆第二十九条の二(許可の取消し)

大臣や知事は、建設業者の営業所の所在地が不明になったり、建設業者本人(法人の場合は役員、個人の場合は支配人を含む)の所在が確認できなくなった場合、その事実を官報や都道府県の公報で知らせます。

このお知らせから30日が過ぎても、その建設業者から何の申し出も連絡もないときは、許可を取り消すことができます。

 

 

◆第二十九条の三(許可の取消し等の場合における建設工事の措置)

 

【第一項】

建設業の許可が失効した、営業停止命令を受けた、または許可が取り消された場合でも、その効力が失われる前や処分を受ける前に契約を結んだ工事だけは、引き続き施工できます。

ただし、許可が失効したり処分を受けた後、2週間以内に、その事実を工事を依頼した注文者に必ず知らせなければなりません。

 

【第二項】

以前特定建設業者だった人やその事業を引き継いだ人が工事を続ける場合、特定建設業者に求められる下請契約の締結の制限(第十六条)は適用されません。

 

【第三項】

工事を続けられるとされているものの、大臣や知事は公共の利益のために特に必要だと判断した場合は、その工事を止めるよう命令することができます。

 

【第四項】

工事を続ける元建設業者やその事業を引き継いだ人は、その工事を完成させる目的の範囲内では、法律上「建設業者」として扱われます。

 

【第五項】

注文者は、上記の通知を受け取った日、または許可が失効したり処分があったことを知った日から30日以内であれば、その工事の請負契約を解除することができます。