工事請負契約書と取引信用保険の存在、建設業の倒産増加

 

最近、建設工事請負契約書のチェックしてほしい、というご相談を受けました。

建設工事を受発注する時には、工事請負契約書を書面で交わさなければならない、というルールが建設業法第19条で定められています。

 

ちなみに契約の書面は、請負契約書のほか、注文書と請書のセット、約款を組み合わせた形式も認められています。

 

工事請負契約の内容については、こちらの記事もご参照ください。

工事請負契約書にはいくらの印紙を貼るのか、契約書の記載内容

 

受発注を契約書にすることは法律で定められてますが、実際のところは、少額であればあるほど、見積書を提出後、電話やメッセージ、ファックスで受発注されてしまうことが多いと思います。私も業務のなかでお客様から書面を預かりますが、下請け業者さんの場合には、発注書(注文書)があれば御の字というイメージです。

 

こうした現状も法令に違反をしてはいるものの、取引関係が正常である時には当事者にとって大きな問題になることは多くはありません。

しかし最近の報道では、建設業の倒産が増加しているという調査結果が公表されています。

 

東京商工リサーチ記事参照(2023.10.16 一部抜粋)

「2023年1‐9月「建設業」倒産1,221件 資材高騰と人手不足で前年同期の1.4倍増」

「労働集約型産業の代表格である建設業は今、建設資材の高騰や技能者の高齢化と人員不足、人件費上昇など、厳しい経営環境に巻き込まれている。2023年1-9月期の「物価高」倒産は95件(前年同期30件)、「人手不足」関連倒産は98件(同77件)と大幅に増えている。物価高や人手不足で、着工遅れや建築計画自体の見直しなども散見され、先行きに不透明感が漂っている。」

 

こうした現状のなか、取引先が倒産等をした場合に売掛金(完成工事未収入金)が一定額保証されるという「取引信用保険」という保険の商品が注目されているそうです。

 

取引信用保険は、設定する上限の損害金額の1~3%程度を、年間の保険料として支払う仕組みです。保証が1000万円なら保険料が30万円といった具合です。

確かに、余分に経費は掛かりますが、保険をかけた分だけは定額でリスクを確定することができるようになりますので、長い目でみれば検討の価値はあると思います(詳しくは保険各社の情報をご確認ください)。

 

このブログの冒頭で、工事請負契約書のチェックをご相談いただいた方からの情報では、この取引信用保険の利用をする条件として、取引の相手先と結んだ(継続的取引の)請負契約書が求められているようです。保険会社の審査の内容についてここではご紹介をしませんが、この場面でも工事請負契約書の存在がモノを言いそうです。

 

これまで受注者という立場では面倒さや遠慮があったりして契約書面を整えることにハードルがあったと思いますが、資材高や人材不足で売掛金の未回収のリスクが高くなる中、お互いに自社を守るために書面に残すことがますます需要になってきているのではないでしょうか。

 

契約書の作成ほか、当サイトの「建設業コンプライアンス」もご参照ください。